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中国スマホ・IoT家電大手の「 シャオミ(小米、Xiaomi)」は今年の第1四半期(1~3月)、チリで最も成長したスマホブランドとなった。
米市場調査会社「Strategy Analytics」によると、今年第1四半期のチリのスマートフォン出荷台数は前年同期比で71%増加し、過去最多の290万台を記録した。その中でもひときわ目を引いたのは50万台を出荷して市場第3位となったシャオミだ。出荷台数を前年同期比1025%増と飛躍的に伸ばし、チリでの市場シェアを昨年の2.4%から15.5%へと拡大させた。
2014年、設立4年目のシャオミは海外進出をスタートした。シャオミにとって購買意欲の旺盛な中南米は魅力的だった。中でもチリはブラジルとメキシコに次ぐ中南米3位のスマホ市場であり、見逃すわけにはいかなかった。
チリが有望な市場である理由
チリは収入が高く、インターネットとスマホの普及率も高い国だ。リファレンスサイト「Worldometer」と世界の経済指標をまとめたサイト「Trading Economics」が発表した2020年のデータによると、チリは人口1900万人で、1人当たりGDPは1万5000ドル(約165万円)を超えている。
今年1月のデータによると、チリのインターネット普及率は82.3%、インターネット利用者は1500万人に上る。市場調査会社「Counterpoint Research」のアナリストTina Lu氏は「チリは中南米で最も成熟した市場であり、スマホの普及率と買い替え率は中南米でも最も高い」と述べている。
チリはシャオミの中南米戦略にとって極めて重要な役割を持つ。シャオミがチリに進出したのは2018年12月。当時は正規販売店を設置せず、大型ショッピングモールや携帯電話専門店で販売していたが、売れ行きは思わしくなかった。その状況を打開するため、19年4月にチリで初となる正規販売店を首都サンティアゴ東部の商業エリアにオープンした。
「シャオミ傘下のブランド『Redmi(紅米)』のスマホはコストパフォーマンスが極めて高く、新型コロナウイルス流行で節約を余儀なくされているチリの消費者に非常に受けた。ファーウェイがGMS(グーグル・モバイル・サービス)非搭載となったこともシャオミにとって大きな追い風となった」。Strategy AnalyticsのシニアアナリストRajeev Nair氏は、シャオミが今回チリで急成長を遂げた理由をこう分析する。
チリではサムスンをはじめ、レノボ傘下のモトローラやアップルなど競合他社に立ち向かわなければならない。現地市場ではサムスンがなお圧倒的首位を占めている。しかし、Rajeev Nair氏は「シャオミが現在の勢いで成長を続ければ、年内にはモトローラを抜き、チリで第2位のスマホブランドとなるだろう」と予測する。
購買意欲の旺盛な中南米
中南米とは通常、米国以南に位置するメキシコ、中米、西インド諸島と南米を指す。今年、同地域の人口は6億5000万人を超えた。1人当たりGDPは平均9000ドル(約100万円)前後と低くはないものの、国ごとに格差がある。ブラジル、メキシコ、コロンビア、アルゼンチン、チリ、ペルーの6カ国は発展水準が高く、各分野の企業が重点を置く市場となっている。
通信事業者の業界団体「GSMA」のデータから携帯電話の普及率を見てみると、中南米では昨年末時点で住民の70%近くが個人の携帯電話を所有していたことがわかる。
Webトラフィック分析サイト「StateCounter」の今年のデータでは、サムスンの中南米での市場シェアは45%で依然として首位を走っている。モトローラは16%で2位、アップルは10%で3位につけている。シャオミとファーウェイのシェアは僅差で、いずれも5位以内にランクインしている。しかし、早くから中南米市場に参入していたシャオミにとって、この結果は理想的とはいえない。
シャオミは2015年には中南米市場への参入を試みていた。同市場で経済規模が最大のブラジルから切り込んだが、当時同国の景気が悪化していたことに加え、政府による自国保護政策などの影響もあり、翌16年には撤退を余儀なくされた。その3年後、国際的な知名度を獲得したシャオミはブラジル市場へのリベンジを試みる。19年6月、シャオミはサンパウロに初の実店舗をオープン。その後中南米市場での展開を加速し、オンラインショップと実店舗を通してブラジルやメキシコ、コロンビア、チリ、ウルグアイなどでスマホを販売している。
シャオミは現在、ブラジルやコロンビアなど中南米の主要市場におけるシェアではほぼ5位以内に入っている。しかし、中南米市場は依然としてサムスンの独壇場となっており、多くのファンを持つモトローラや知名度と実力を兼ね備えたアップルの他、ファーウェイ、vivo、OPPO、realmeなど中国ブランドもじわじわとシェアを広げている。
シャオミが中南米市場を制するにはまだ長い道のりが必要だろう。
(翻訳・山口幸子)
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