繁殖、流通、飼育プロセスをデジタル管理。ペット業界でDXの取り組み

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猫の生体販売を中心に幅広くペットビジネスを展開する新興ブランド「小猫来了」が今年3月、エンジェルラウンドで個人投資家から数百万元(数千万円)を調達したことが明らかになった。同社はオンラインとオフラインを組み合わせた「ニューリテール(新小売)」をペットビジネスに応用し、業界に新たな風を吹き込もうとしている。創業者の曽立焊氏によると、今回調達した資金は実店舗のチェーン展開やスマート店舗のシステム作り、ペットの繁殖・供給のデジタル化などに充てる方針だという。

中国ではここ数年、ペットを飼う人の増加とともに「ペット経済」が成長し続けている。市場調査会社「艾瑞諮詢(iResearch)」がペット関連産業の動向をまとめたレポート「2021年中国寵物消費趨勢白皮書」によると、中国のペット(犬・猫)関連産業の市場規模は昨年時点で約3000億元(約5兆円)に達しており、今後3年間は安定的な成長を続ける見通しで、年平均成長率は14.2%になるとみられる。ちなみに、猫の生体販売市場の規模はすでに100億元(約1700億円)を超えている。

曽氏は、情報社会の発展により人間同士の心のつながりが希薄になっていることが、ペットビジネス参入の最大の理由だったとした上で「都市生活者が精神的な安らぎを求めてペットを飼うようになるのは自然な流れだ。14億の人口を抱える中国は、世界で最もペットの多い国に違いない。中国第1位のペット企業になれれば、世界第1位のペット関連企業を目指せる」と今後の展望を語った。

小猫来了は2020年5月に設立され、猫の繁殖から生体販売まで全プロセスのデジタル化に取り組んでいる。オフラインでは、チェーン店を全国展開する一方で、デジタル化された繁殖センターを設立。オンラインでは、自社開発したミニプログラムとERP(統合基幹業務システム)によって流通ルート全体をつなぐと同時に、顧客体験の向上を図っている。また、それぞれの顧客のニーズに応える会員システムも構築しており、ペット市場の川上にあたる生体販売を手始めに、川下にあたるペットフードやペット医療など関連市場へも段階的に進出する方針だという。

「小猫来了」の店内

現在のペット市場は、生体販売、ペットフード、ペット用品、ペット向け医療およびペット関連サービスの5つの分野に分かれている。生体販売については、業界全体に昔ながらのスタイルを守る傾向が強く、大規模にチェーン展開する企業もないため、新たに参入した企業が成長する余地も大きい。

市場の川上にあたる生体販売はキャッシュフローを生み出し、川下にあたる分野を大きく発展させるチャンスをもたらす。曽氏は「市場の川上から切り込めば川下の分野に参入するのが容易になる。その上、ペットフードなどはリピート購入が期待できるため、集客コストを限りなくゼロに近づけられる」と指摘した。

曽氏によると、小猫来了は取り扱う全ての子猫について、生まれてすぐにデジタル記録の作成を始め、繁殖センターでの飼育段階から飼い主の手に渡った後の全データを把握。飼い主が子猫を購入した後も、品種・年齢・性別に加えて成長データや飼育データなどを多角的に分析し、猫を育てる中で発生しうる問題を予測し、解決策を提供する。これを各ユーザーの消費額向上に結びつけていくという。

中国のペットショップは現在のところ、個人商店や地域限定の小規模チェーン店が主流となっているが、小猫来了は地域を跨ぐ複数の都市で直営チェーンを展開する道を選んだ。すでに深圳、広州、上海、杭州、武漢などの大都市に7店舗を出店している。

小猫来了は通行量の多いエリアを出店場所に選ばない。曽氏は、商業施設の中心的エリアへの出店は費用対効果が薄いと指摘。「家賃と人件費が跳ね上がり割に合わない上、商業施設内を行き交う人の大多数は潜在顧客になりえない。通行量が多ければ子猫が病気にかかるリスクも上がってしまう」と具体的な理由を示した。

小猫来了は、生体の品質管理について21項目の基準を設定しているほか、病気予防や販売サービスに関してなどチェーン店の運営についても45項目の基準を設けている。

小猫来了は、出店都市を増やしてから同一都市内での出店密度を上げる形でチェーン拡大を図っている。年内には直営店を20店舗以上に増やし、本部が運営・管理を統一的に実施するフランチャイズ加盟店の募集を開始する計画。来年はフランチャイズ展開を本格化し、100店舗以上のオープンを目指すという。

曽氏は、店舗の周囲20〜30キロメートルを商圏とし、ブランド力とサービスを基に集客する方針で、各店舗の月間売上高を最大で約60万元(約1000万円)とすることも可能だと説明した。サービスモデルについては「ブランドを確立する上で、品質と運営の管理がフランチャイズ展開の前提となり、サービスはその核心となる。当社は最高のアフターサービスを提供する。販売した子猫には、生涯にわたるワクチン接種サービスと業界最長180日間の重大疾病保障をつけるほか、ウイルス検査と遺伝子検査の結果報告と生涯無料の医療アドバイスも提供する。出店する全ての都市に複数の提携動物病院を用意し、顧客専門の割引サービスを提供する」と説明している。

曽氏は、サービスモデルはコピーされる可能性もあるが、小猫来了の強みはコスト構造をコントロールできる点にあると強調する。トリミングや一時預かりサービスを廃止することで店舗面積や出店先場所の選定を最適化し、トリミングスタッフを削減することでコスト低減と坪効率向上を実現。繁殖も手がけることで生体流通コストを減らし、流通プロセスを標準化することでリスク対策コストを削減するという。曽氏は「コスト構造を最適化できれば事業の幅も広がる。良質なサービスを提供しながら価格的な強みで市場を独占できる」と今後の展望を示した。

小猫来了の創業メンバーはいずれもIT業界出身。曽氏は「ネットで人やモノをつなげて新たな価値を生む『インターネット思考』で旧態依然のペット業界を変革していきたい」と抱負を述べた。

同社はすでにプレシリーズAでの資金調達について投資機関との交渉を進めており、7月中には資金調達を完了する見通しだ。

(翻訳・田村広子)

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