アップルの自動車製造、難航を極める生産パートナー探し

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台湾のテックメディア「DigiTimes」の報道によると、現在アップルは「Apple Car」にバッテリーを供給するサプライヤーを選定中であり、中国大手の「寧徳時代(CATL)」と「比亜迪(BYD)」も交渉リストに入っているという。しかしアップルは米国生産のバッテリー使用にこだわっているため、CATLやBYDが米国工場の建設を望まない場合は提携先に選ばれない可能性がある。アップルはすでに提携先として、米国に工場建設を予定している台湾のEMS大手「フォックスコン(富士康)」や電池材料大手「立凱電能(Aleees)」に目を向け始めている。

iPhoneが1年に1回アップデートされるのに比べると、自動車製造の歩みは緩やかだ。アップル事情に精通している「天風国際証券(TF International Securities)」のアナリスト郭明錤(ミンチー・クオ)氏はレポートの中で、Apple Carは早ければ2025年に世に送り出されるだろうと述べている。

2020年末、アップルは米国での工場建設のスケジュールを繰り上げ、上下流サプライチェーンについて調査を開始した。また先月にはCATLおよびBYDとの交渉を開始したと、ロイター通信が報じている。日経新聞の報道では、あるサプライヤーの幹部が「少なくとも6社くらいで(完成車製造のための)交渉が進んでいる」と明かしている。

電子機器のサプライチェーンにおいて、アップルは何としてでも獲得したい大型顧客だが、新たに身を投じた自動車製造分野では警戒すべき乱入者だ。これまでサプライチェーンにおいて絶対的主導権を握ってきたアップルだが、自動車製造をめぐるこの7年間の浮き沈みから、自分たちが八方塞がりの状況に置かれていることに気付いただろう。バッテリーサプライヤーとの協議で異変が発生することも、これが最初でもなければ最後でもないだろう。

アップル VS サプライチェーン

アップルはこれまで、合意に達しうる自動車製造パートナーを見つけられていない。

その背後には厄介な現実がある。 スマートフォン、完全ワイヤレスBluetoothイヤホン、タブレット端末を定義してきたアップルは、自ずとルールの設定者として、コントロールすることにも、強硬な手段を執ることにも慣れている。

多くの場合、サプライチェーンの栄枯盛衰はアップルの采配一つで左右されてきた。フォックスコンの場合、受注の7割がアップルによるもので、アップルの要請に応じ、一部の生産ラインのベトナム移転さえも行っている。

アップルに少しでも何か起こると、アップルのサプライチェーン企業に変動を引き起こす。

アップル産業チェーンの一角を担う「歌爾股份(GoerTek)」、「藍思科技(Lens Technology)」、「立訊精密工業(Luxshare Precision Industry)」は今年、iPhone 12 miniの不振などにより、3カ月で株価が4割以上下落した。

アップルの支援がなければ、これらのアップル産業チェーンの企業は取るに足らないものとなり、資本市場からすっかり忘れ去られてしまうだろう。今年アップルのサプライヤーリストから外された中国光学部品「OFILM(欧菲光)」の株価が2年前のレベルまで下落したのがわかりやすい例だ。

だが、EVの分野ではアップルは新参者だ。当然業界を掌握する大手企業はアップルのようにカリスマ性を備えた顧客を無視できないが、アップルに依存するほどではない。アップルと完成車メーカーとの提携関係は、絶え間ない変化を経験している。

2015年、ドイツの経済誌「Manager Magazin」は、アップルのティム・クックCEOはライプツィヒにある「BMW i3」の生産工場を訪問し、BMW i3をベースに自社のEVを開発したいと考えていると報じた。ロイター通信は、当時BMWの関係者は提携の意向をほのめかしていたが、BMWが自社技術を提供してOEMとなることを望まなかったため、間もなくこの交渉は打ち切られたと報じている。

その後、アップルはベンツの親会社であるダイムラーにアプローチしたが、BMWと同様の結末を迎えている。当時ダイムラーのCEOを務めていたディーター・ツェッチェ(Dieter Zetsche)氏は「我々はフォックスコンになるつもりはない」と表明していた。

アップルは日韓の自動車メーカーを次のターゲットにし、BMWやダイムラーと同様の展開が日産自動車とも繰り返された。しかし韓国企業との提携はほどなく現実になろうとしていた。米ニュース専門局CNBCは今年2月3日、アップルが韓国の「起亜(KIA)自動車」と協業し、正真正銘の「Apple Car」となる車を製作しており、起亜が多くのサポートを提供し、ソフト・ハードウェアについてはアップル自身が掌握していると報じた。

Monday Note掲載のコンセプトイメージ

しかしこの報道から1週間後に起亜は、自動運転車両の研究開発に関する協業についてアップルと協議は行っていないと発表した。

匿名の経営幹部は、起亜がBMWやダイムラーと同様の懸念を抱いているからだと説明したが、それは理由の1つに過ぎないかもしれない。韓国SK証券のあるアナリストは、「提携計画のリークが秘密保持契約に違反した可能性があり、これが相手を不愉快にさせたのだろう」と指摘する。

アップルはこれまでサプライチェーンに対し、とりわけ秘密保持を重視した厳しい管理・コントロールを行ってきたが、今回のCNBCの報道は同社の逆鱗に触れるものだった。協業に対し各社にはそれぞれ思惑があり、物別れに終わっても驚くことではない。起亜との提携破綻後、アップルは同じ韓国のLGにアプローチしたが、その結果はまだ宙ぶらりんのままだ。

完成車メーカーでも一次サプライヤーでも、アップルのような時価総額2兆ドル(約220兆円)のとてつもないモンスターを前にして懸念を抱かずにはいられない。アップルにとっては、過去の輝かしい成功がある種の呪いのように足枷となっているのかもしれない。

(翻訳:浅田雅美)

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