新興EV「NIO」、来年前半にも低価格ブランド発表。1台50万円も視野

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高級車市場で安定した地位を築いた中国の新興EV(電気自動車)メーカー「NIO(蔚来汽車)」が、中価格帯以下の大衆車市場に参入する。

複数の関係者によると、NIOの新規事業戦略部門の副総裁には、コワーキングスペース「WeWork」の大中華圏事業で総経理を務めた艾鉄成氏が就任するという。艾氏が担う新規事業がサブブランドとみられる。NIOが描くサブブランドの定義は、メインブランドのNIOからは独立した中価格〜低価格帯で、販売価格は15万〜25万元(約250万〜420万円)を想定している。李斌CEOは3万元(約50万円)前後の価格帯まで考慮しているとの情報もある。

新任の艾氏はNIOの秦力洪総裁と旧知の仲で、NIOのSUV「ES8(ファーストエディション)」のオーナーでもある。WeWork以前は上海ディズニーリゾートのマーケティング部門で副総裁を務めた人物だ。

サブブランドはNIOのバッテリー交換技術を流用しながら、チャネル、ユーザーコミュニティ、アプリなどは別システムで運営される。車両開発はすでに本拠地の安徽省合肥市で始まっており、製品企画ディレクターの俞斌氏もサブブランド事業に携わっている。関係者によると、順調にいけば来年上半期にも発表する。

36Krの取材では、NIOは昨年末からサブブランドの立ち上げを検討していた。当初のプロジェクト名はトヨタの頭文字TとフォルクスワーゲンのVをとった「TV」と名付けられていたという。トヨタは利益、フォルクスワーゲンは販売台数で世界トップのメーカーだからだ。しかし、プロジェクト名は後に欧州最高峰の山脈になぞらえ「ALPS」と改名された。

これまでNIOは高級ブランドとして展開してきた。李CEOによると、今年4月時点で納車台数は累計10万2803台、平均販売価格は43万4700元(約730万円)で、「BMWやアウディより高価格で、テスラの中国での平均販売価格より十数万元(約170万〜340万円)高い」という。

NIOはバッテリー交換ステーションの建設にも力を入れ、販売刺激策としている。7月上旬には、今年の建設目標数を700カ所以上とし、当初の500カ所から引き上げた。

値下げ策が長期的にみて自社勢力の拡大につながるのは全業界の共通認識だ。NIOのライバル「理想汽車(Li Auto)」は今年はじめ、社員にあてたメールで2025年までの5年間で160万台を販売する目標を明示し、戦略の一つとして販売価格を15万元(約250万円)にまで引き下げるとした。

スマートフォン・IoT機器大手シャオミ(Xiaomi)のような大型プレーヤーもEV市場に参入してきている。シャオミの雷軍CEOに近い関係者によると、「3年で自動車を発売し、1年目に10万台を売る」との計画を立てているという。ターゲットとするのは大衆車市場だ。

中価格〜低価格帯市場ではインダストリアルチェーンが成熟してきている。より低コストなLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーが性能を向上させ、弱点だった航続距離を徐々に克服しはじめた。さらに、車載バッテリー大手「寧徳時代(CATL)」が最近になって発表したエネルギー密度160Wh/kgのナトリウムイオンバッテリーは、コスト面でも冬季の性能でもLFPバッテリーに勝る。こうしたバッテリーの進化は、中価格〜低価格帯市場で事業モデルを迅速に打ち立てる追い風となることは明白だ。

自動車ブランドが高級路線から低価格路線に移行していく過程はすでにテスラに因って実践されている。ただし、テスラはテクノロジー駆動型の企業だ。ブランドの底流にあるコンセプトは統一されており、価格帯によってブレることはない。一方、NIOの強みは優れたサービスによって高級ブランドとしての立ち位置を確立し、ユーザーコミュニティの定着度を高めている点であり、この点が別個にサブブランドを立ち上げる判断につながった理由の一つと推測される。

「40万元(約680万円)で車を買う人と、20万元(約340万円)で車を買う人は大概は混じり合うことはない」。自動車業界関係者はこう評した。NIOの社員も、同社の企業理念や知見が高級市場に的を絞っているため、低価格帯市場の開拓は従来のメンバーに任せるよりも、新たに立ち上げた組織でする判断は理にかなっているとの考えを示している。
(翻訳・愛玉)

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