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36Kr傘下のメディア「Tech星球」の報道によると、生活関連サービス大手「美団(Meituan)」が2021年5月に「ショート動画」機能の内部テストを行っていたという。同機能はバイトダンス(字節跳動)のショート動画アプリ「抖音(Douyin、海外版はTikTok)」と同類のもので、「看視頻賺銭(動画を見て稼ぐ)」「視頻賺(動画で稼ぐ)」と呼ばれているという。
美団は最近、アプリ内でのショート動画コンテンツ提供だけでなく、その制作シーンにまで手を広げ、写真やテキスト、ショートビデオを編集できる編集ツール「美団皮皮蝦」の内部テストも行っている。
2021年に入ってから、美団の事業はあまりスムーズには進んでいない。中国当局が美団のフードデリバリー事業における独占的行為を規制したほか、株価は2月末に最高値を付けた後は下落の一途をたどり、時価総額はピーク時と比べると1兆香港ドル(約14兆円)以上蒸発している。
美団には新たなアクションが求められている。
「ボーダレス」から「大規模かつフルセット」へ
美団の情報から判断すると、「視頻賺」のインターフェースは市場で主流となっているショート動画のアプリと特に大きな違いはないようだ。抖音のように上下にスライドさせて閲覧し、「いいね」をすることもできる。動画コンテンツの下部には抖音と同じように「業者のインターフェースへジャンプ」も付け加えられている。
ショート動画の上部には獲得したコインや現金が表示され、残高が必要な量に達し、タスクを複数日連続で完了させると、コインを現金へ交換し引き出せるようになる。
編集ツールの「美団皮皮蝦」は、美団アプリ内での画像やテキスト、動画の編集効率を向上させ、コンテンツ制作の際のハードルを下げるもので、現段階では主に加盟業者向けに提供されている。「視頻賺」と「美団皮皮蝦」の機能はまだテスト段階であり、一部のユーザーにしか表示されない。
美団はこれまでも、ショート動画分野への参入を試みてきた。2017年に傘下の口コミサイト「大衆点評(Dianping)」が動画機能をローンチして「ツール」から「コンテンツ」への転換をはかった。2019年に美団アプリはトップページに一部の加盟業者のために動画広告のスペースを挿入し、その後、大衆点評の商品紹介の文章が美団アプリ内に追加され、ショート動画や画像・テキストの形式で表示されるようになった。
十数年にもわたる奮闘を経て、美団は口コミやフードデリバリーから生鮮食料品販売や電子商取引(EC)にまで守備範囲を広げている。ライドシェア大手「滴滴出行(DiDi Chuxing)」が当局の規制を受けた隙を突き、美団は配車事業に再度参入した。「大規模かつフルセット」という考え方を持つ美団にすれば、ショート動画あるいは編集ツールのローンチ、そしてこれらの分野での事業展開は当然の成り行きだったといえる。
ショート動画は画像やテキストよりも、加盟業者が製品や商品をユーザーへ送り出すための効果的なアシストが可能だ。消費者はショート動画を通じ、業者の商品について理解を深め、購買体験を向上させることができる。美団にとって、ショート動画機能のローンチは顧客の多様化した購買ニーズに対応し、ユーザーの美団アプリ使用時間を増やし、地元密着型の生活関連サービスのコンテンツ配信を充実させることにつながる。
モバイル・インターネット調査会社の「QuestMobile」によると、現在美団アプリのMAU(月間アクティブユーザー数)は3億2000万人だが、ユーザーの多くがフードデリバリーあるいは一部商品の購入する際にしか美団アプリを使用せず、それ以外の目的での使用は少ないことが調査で判明した。ショート動画を活用すれば、美団は将来抖音や「快手(Kuaishou、海外版はKwai)」のようにユーザーを定着させ、トラフィックのコンバージョン率を上げられるかもしれない。
また、ショート動画でフードデリバリーやEC事業などをつなぎ、エコシステム内での連携を実現し、収益化を促進することができる。最近、バイトダンスが提供を開始したフードデリバリーサービス「心動外売」は、まさに抖音が持っていたトラフィックを活かし、ショート動画を利用した新たなフードデリバリーを提案したのだ。
ショート動画分野の競争は、快手とバイトダンスの2強の様相を呈している。美団が両社から「パイを奪う」のは、まだ容易なことではない。
作者:港股研究社
(翻訳:浅田雅美)
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