Amazon、強気のアカウント大量閉鎖で中国越境ECに激震 リストラ・休業も

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Amazon、強気のアカウント大量閉鎖で中国越境ECに激震 リストラ・休業も

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世界最大のECプラットフォームAmazonが、中国業者の大規模な締め出しを行っている。アカウントを閉鎖された事業者は5万店舗に上り、損失額は1000億元(約1兆7000億円)を超えるとも言われる。

これに対し、Amazon側は「業者による不正レビューのため」としている。EC業界において架空注文や不正レビューは後を絶たない。やらせの高評価レビューを多数投稿して顧客の獲得を狙うこの方法は、ずっとグレーゾーン扱いだった。

今回のAmazonの取り組みは広範囲かつ容赦ないものだ。いったんアカウントが閉鎖されると、売上金は凍結され、倉庫内の商品も出荷できなくなる。苦労して築き上げてきたものが突如として崩れ去り、リストラや休業を余儀なくされた事業者もいるという。

ここ数年で急成長を遂げた越境ECだが、売り上げのためには手段を選ばないという時代がついに終わりを告げたことになる。

電子機器の人気ブランドも続々閉鎖

Amazonによる中国業者のアカウント閉鎖は今回が初めてではない。これまでは特定カテゴリの商品に関わる品質やデザイン特許の問題に焦点を当ててメスを入れてきた。しかし今回のアカウント閉鎖は広範囲に及ぶもので、名の知れた電子機器ブランドPatozon、Aukey、Apeman、Sunvalleyなども温情を示されることなく閉鎖されている。

PatozonのメインブランドMpowは北米Amazonが取り扱うオーディオ製品の中でトップクラスの人気を誇り、昨年の売上高は49億4700万元(約840億円)に達するほどだった。しかしアカウント閉鎖後、研究開発分野の技術スタッフは6カ月の休業を言い渡され、手当として支給されるのは最低賃金の8割にとどまるという。

Sunvalleyの親会社は、傘下ブランドRAVPower、Taotronics、VAVAを取り扱う一部のショップがAmazonで販売停止になっていることを公表した。Sunvalleyの昨年の売上高は50億元(約850億円)近くあり、6月15日時点では影響を受けたショップの売上高はAmazonでの同社売上高の31%を占めていたという。

電子機器だけでなく、ホーム・インテリア用品も標的になっている。例えば中国最大級のオフィスチェアメーカーが展開するエルゴノミクスチェアのブランドSmugdeskもアカウントを凍結された。

越境ECの都市、深圳市が介入

新型コロナウイルス感染症の流行を機に、昨年からオンライン消費が急増し、中国の越境EC業界も飛躍的な成長を遂げた。昨年以降、「跨境通(KJT.com)」「聯絡互動(Lianluo Interactive)」「蘭亭集勢(Light In The Box)」「新維国際(シノ・ビジョン・ワールドワイド)」といった越境EC企業が続々と上場を果たした。今年に入ってからも複数の越境EC企業がIPO計画を公表している。

中国の深圳市は「越境ECの都市」として名高い。あるデータによると、Amazonの出店業者の7割が中国業者で、中国越境EC事業者のうち7割が広東省を拠点としており、実にそのうちの半数が深圳市に集中しているという。今年上半期、中国の越境EC企業ランキングで、上位10社の半数を深圳の企業が占めた。

破竹の勢いで成長する深圳の越境EC企業だが、Amazonのアカウント閉鎖はこれに急ブレーキをかけることになった。この急展開を目にして、深圳政府が介入に動く。深圳市商務局は8月13日、Amazonのアカウント閉鎖の件について事業者らと座談会を行い、「影響を被った企業が苦境から脱出できるよう力を尽くす」ことを表明した。

深圳市越境電子商務協会の王馨会長はこう述べる。「Amazonの規約がある以上、事業者にはどうすることもできない。政府が率先してAmazon側との対話を進め、最善の解決方法を探ってもらいたい」

深圳市商務局は8月5日に越境EC事業の支援政策を打ち出している。例えば越境EC企業が自社サイトを構築し、順調に成長している場合に200万元(約3400万円)の補助金を給付することなどだ。さらにデジタルトランスフォーメーションや公共海外倉庫の建設に対しても補助を行うことが発表されている。

中国は世界の工場と言われている。特に電子製品やアパレル、ベビー用品など多くのカテゴリで圧倒的な地位を築いてきた。しかしAmazon頼みでなりふり構わず業績を伸ばしてきた中国企業も、これからは製品やマーケティングで勝負する段階に歩みを進める必要があるだろう。

作者:天下網商(WeChat ID:txws_txws)、章航英
(翻訳・畠中裕子)

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