中国バッテリー業界、テスラの新型電池を巡り波乱の予感

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

大企業注目記事

中国バッテリー業界、テスラの新型電池を巡り波乱の予感

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

米EV大手テスラが中国国内で、新型の車載用円筒形電池「4680」の提携メーカーを探し始めている。すでにテスラに車載電池を供給しているCATL(寧徳時代)やLG化学のほかに、EVEエナジー(億緯鋰能)などとも交渉が進んでいるという。

EVEエナジーと提携している関係者によると、協議されている提携方式の一つは「テスラが設計した4680電池の生産をバッテリーメーカーに委託する」というもの。ただ4680は新技術を採用した電池であり、業界全体としては2023年に量産開始との認識だと、別の関係者は指摘する。まだサンプルすら出せていない企業も多く、OEM生産の話はあってもごく初期段階だということだ。

この件について36Krがテスラ中国法人に問い合わせたところ、「ノーコメント」という回答だった。

事情に通じた人物によると、CATLやLG化学がテスラと4680生産の交渉を行っているほか、円筒形電池一筋に打ち込んで来たBAKバッテリー(比克電池)も自らをテスラに売り込んでいるという。「CATLは『如意棒』というプロジェクト名で、円筒形電池の生産体制を急ピッチで整えている」とある関係者は明かす。これについてCATL側のコメントは得られていない。

テスラは昨年9月に開催した電池事業の説明会「バッテリーデー」で、電極タブを廃止したタブレス円筒形電池4680を発表した。これまでテスラが採用していた2170電池に比べてエネルギー密度が5倍、出力は6倍になり、航続距離は16%向上した。しかもキロワット時当たりのコストは14%削減できる。

テスラが4680へのシフトを表明したことは、バッテリーメーカーにとって大きなチャンスと言える。これを機にテスラのサプライチェーンに食い込み、業界の勢力図を書き換えられるかもしれないからだ。

テスラは4680を発表すると共に、実用化に向けてペースアップしている。第2四半期決算のカンファレンスコールでイーロン・マスクCEOは、4680の性能や寿命はすでに検証が終わっているほか、製造に関する検証も完了間近で、今は生産工程の改良に取り組んでいるところだと明かした。今後、米テキサス州とドイツ・ベルリンの工場で生産されるセミトラックとモデルYに4680が搭載される。

ベルリン工場の主な施設はすでに完成しており、現在はドイツ当局の審査を待っているところだ。今年第4四半期には最終的な承認が得られる見込みで、操業開始は来年になると見られる。これに伴い、4680の製造技術もほぼ同時期に中国に導入されるものと考えられる。

今やテスラは年間販売台数100万台を目指す巨大企業に成長した。2020年に全世界で販売したEVは49万5000台、今年の上半期はすでに38万6000台を売り上げており、うち中国市場での販売台数が16万台と、半数近くを占めている。

サプライチェーンの一部がテスラに対していくらか様子見の態度を示していた数年前とは状況が大きく変わった。特にバッテリーメーカーにとっては、テスラとの契約を取れるかどうかで業界内での順位が変わってくるのだ。

テスラは生産能力の拡大に伴い、サプライチェーンを分散させ始めている。これまでリン酸鉄リチウム(LFP)電池は主にCATLが、円形電池はLG化学が供給してきたが、今年に入ってから他のサプライヤーとも交渉しているとのうわさが飛び交ってきた。大手バッテリーメーカーも、新技術の実用化に伴う業界再編の波に十分警戒する必要があるだろう。
(翻訳・畠中裕子)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録