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顔認証技術で知られる中国AI「センスタイム(商湯科技)」が8月27日、香港証券取引所に目論見書を提出した。
累計赤字4000億円でも評価額1兆3000億円
2014年設立のセンスタイムはこれまでに少なくとも10回以上にわたり資金を調達し、公表されている調達額は累計26億ドル(約2900億円)以上になる。昨年末に行ったプレIPOラウンド後には、同社の評価額は約120億ドル(約1兆3200億円)になった。
IPO実施前の主な出資者の持株比率は、創業者の湯暁鴎氏が21.73%、ソフトバンクグループが14.88%、アリババ傘下の淘宝中国ホールディングスが7.59%だ。
米調査会社「フロスト&サリバン」によると、AIソフトウェアは今後10年で最も急成長が期待できる分野の一つだ。中でも、中国市場の成長スピードは世界で最も速い。
20年の売上高をみると、センスタイムはアジア地域の業界トップだ。中国の画像解析ソフトプロバイダーの市場シェアでも、同社は20年に11%で首位だった。
センスタイムの売上高は過去3年半で累計99億7800万元(約1700億円)と、同業他社をしのぐ。
同社の主要業務はネットを活用したスマートビジネス、スマートシティ、スマートライフと自動運転車だ。21年上半期の事業別売上高はそれぞれ6億4700万元(約110億円)、7億8600万元(約130億円)、1億4800万元(約25億円)、7060万元(約10億円)だった。
特筆すべきは、センスタイムが近年注目を集める仮想空間「メタバース」も手掛けていることだ。
目論見書によると、同社のSenseMARSプラットフォーム内にある3500以上のAIモデルは新しいメタバース体験に対応できるほか、200モデル以上のスマホ、ARやVR設備、大型スマートスクリーンや娯楽用ドローンに機能を追加すれば、顔認識ソフトSenseMEとSenseMARSを使って現実世界と仮想世界をつなぐことができる。
しかし、売上高の規模が拡大してもセンスタイムの赤字問題は解消していない。18~20年、21年上半期の赤字額はそれぞれ34億3300万元(約580億円)、49億6800万元(約840億円)、121億5800万元(約2000億円)、37億1300万元(約630億円)で、3年半で累計242億7200万元(約4100億円)に膨らんだ。
このほか、18年~21年上半期に粗利益率は年々上昇しているものの、費用や金融資産の減損を差し引くと純利益率はマイナスのままだ。
コンプライアンスや倫理の問題にも直面
現在、AIは実用化段階に入っているものの、AI業界内の分析では、各業界がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中で求めるAIモデルが異なっている。単独モデルでは使用が一部の業務に限定され、一方でモデルの作成は人手に頼っているため、AI企業にとってはコストがかかる。
それだけではなく、AI業界はコンプライアンスや倫理の問題にも直面している。
AI業界は収集した情報を基にモデルを構築するが、データの収集と使用が法規に抵触するリスクがある。今月1日に「データ安全法」、11月1日には「個人情報保護法」が施行される。「個人情報保護法」では、個人の興味に合わせた広告を強制的にユーザーに送付することを禁止し、必要以上にユーザーの個人情報を収集することを制限している。
データはAI企業の生命線であり、上記二つの法律の実施後AI業界の行き過ぎたデータ収集の傾向が是正されれば、業界再編に直面するとの分析もある。
利益獲得の見通しが不透明で、巨額の研究開発投資を続け、個人情報保護が次第に厳しくなっても、センスタイムは高い評価額を維持できるだろうか。
作者:李亦輝 WeChat公式アカウント「雷達財経(ID:leidacj)」
(翻訳・二胡)
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