実現困難な「空飛ぶタクシー」に挑む中国新興、設立4カ月で2回も資金調達

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実現困難な「空飛ぶタクシー」に挑む中国新興、設立4カ月で2回も資金調達

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eVTOLと呼ばれる電動航空機を開発する「時的科技(TCab Tech)」が直近の1カ月で2回にわたり合計1000万ドル(約11億円)を調達したと発表した。1回目のシードラウンドでは「藍馳創投(BlueRun Ventures)」が、2回目のシード+ラウンドでは「徳迅投資(Decent Investment)」が出資したという。

時的科技は電動航空機を手がける民間スタートアップで、2021年5月に上海で設立された。主に大型の有人eVTOL(Electric Takeoff and Landing:電動の垂直離着陸機。ヘリコプター・ドローン・小型飛行機の特徴を併せ持つ)の開発・製造・運営を行っており、UAM(アーバン・エア・モビリティ:空を経由して人や貨物を輸送する都市交通)を推進していく。先月初めには5人乗りの最新eVTOL「E20」の設計案を発表し、今回、その全貌を画像で公開した。

時的科技「E20」

同社の創業者・黄雍威氏によると、eVTOLはヘリコプターに比べ環境にやさしく騒音も少ないが、機動力は上だ。未来のUAMに適した製品形態といえる。モルガン・スタンレーの今年のレポートによると、eVTOLの市場は2040年ごろに全世界で1兆ドル(約110兆円)規模に達し、中国が約4分の1を占めると予測されている。市場調査会社QYResearch(恒州博智)が発表したデータでは、世界のeVTOL市場は2020年に1億4000万元(約24億円)規模、2026年に619億元(約1兆500億円)規模となり、その間の年平均成長率は152.2%となる。

公開されている案件に限っても、現在世界中で200を超える有人eVTOLの開発プロジェクトが進行中だ。欧州のエアバスや米ベル・ヘリコプターなどの老舗航空機メーカーから、独アウディ、韓国ヒュンダイ自動車、中国の吉利汽車(Geely Automobile)などの自動車メーカー、時的科技などの新興テック企業までが参入している。

時的科技は耐空性に関する現行法規にのっとり、有人ティルトローター機(両翼の先端に傾斜を変えられる回転翼をとりつけ、飛行機のような水平飛行のほか、空中静止や垂直離着陸ができる機体)を開発しているが、実際には無人操縦機の開発力も持ち合わせている。黄CEOによると、有人eVTOLは無人機に比べ試験飛行や耐空性などの面で優位性や利便性がある。関連当局の監督管理体制に適応させやすく、現行の有人機体管理・運営システムにも馴染みやすいからだ。

前出のE20もティルトローター機で、航続距離は最大200キロ、最高飛行速度は時速260キロ。空のモビリティ市場にターゲットを絞り実用化を目指している。設計上の特徴は主に、純電動システムを採用し、固定翼・垂直尾翼・水平尾翼を組み合わせ、主翼に6つの回転翼(うち4つは傾斜回転翼)を取り付け、パイロット1人に乗客4人を乗せられる点だ。

eVTOLの開発は世界的に一定程度進んでいるものの、大規模に実用化するとなると障壁が残る。大手会計事務所デロイトは過去に「eVTOLの商用化はいまだ困難だ」との見解を発表しており、フライトプラットフォームが日々複雑化させている空域を管理・規範化することは長期的な挑戦になるとみている。また、一般ユーザーもeVTOLの安全性に不安を抱き、心理的な抵抗を感じている。騒音問題やエネルギー管理技術、グランドハンドリング(地上作業)のインフラなども解決が必要だ。

ティルトローター機といえば、世界で最も有名な米軍の新型輸送機オスプレイ(V-22)が事故を頻発させ、その安全性に疑問符がついたことは記憶に新しい。これに対し黄CEOは、従来のエンジンシステムと比べ、電動機や電動化ユニットを採用して設計された有人eVTOLは、動力伝達システムを省くことで複雑な伝達構造を簡略化し、大きく安全性を高めたと説明する。

時的科技はE20のプロトタイプ開発を進めており、黄CEOによると、2024年には型式証明を取得できる見込みだ。今後の事業展開はまず中国市場、その後は欧州市場、東南アジア市場を目指し、製品が成熟した段階で価格を設定し、タクシーに類するサービスを展開する計画だ。
(翻訳・愛玉)

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