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中国の研究チームが開発した新たなタイプの衣服が9月2日、英科学誌「ネイチャー」で発表された。
一見すると特別な点はないように思えるが、この衣服はスマートフォンの充電ができるのだ。モバイルバッテリーが縫いこまれているのではない。衣服そのものがバッテリーになっていて、折り畳むことも洗濯することも可能なのだという。
この衣服は、復旦大学の彭慧勝(Huisheng Peng)教授率いる研究チームによる「布に織り込める繊維状リチウムイオン電池」に関する最新の研究成果を示すものだ。ネイチャーに投稿された論文のタイトルは「Scalable production of high-performing woven lithium-ion fibre batteries」。
同チームは今年3月には「衣服のように着用できる大面積ディスプレイ」に関する論文をネイチャーで発表している。下の画像のように、繊維製のタッチ式キーボードで文字を入力すれば、チャットができるほかナビゲーションツールの利用やヘルスデータの表示も可能となっている。
今回発表された論文について、査読者は「エネルギー貯蔵だけでなくウエアラブル技術の分野においても画期的な研究」、「フレキシブルエレクトロニクスの普及に向けた重要な成果」と高く評価している。
この衣服の最大のポイントは、繊維状のリチウムイオン電池だ。
これまでの研究では、繊維状リチウムイオン電池は長さ数センチとするのが限界で、スマートフォンやパソコンなど消費電力の大きい電子機器に給電するのは難しいとされてきた。
研究チームは今回、長さ数メートルの高性能な繊維状リチウムイオン電池を製作することに成功した。長さ1メートルの場合のエネルギー密度は85.69Wh/kgに上る。心拍数モニターや血中酸素測定器などのウェアラブルデバイスに2日間以上給電できる電力量だ。
一般的な繊維と一緒に織り込んで布状にし、スマートフォンやタブレットに充電できる。折り畳んでも水洗いしても性能に影響はない。
安全性も保証されている。外力により破壊された場合、一般的な電池は容易に燃焼したり爆発したりする。しかし、この繊維状リチウムイオン電池ならば、車にひかれても刃物で刺されても性能を維持できることが実験で明らかになった。
電池が放電する際に起こる衣服の温度変化の様子を40分間モニタリングした結果、明らかな温度変化はみられなかった。
500回の充放電を行った後でも90.5%の容量保持率を維持し、充放電効率は98.8%となった。また、曲率半径1センチの条件で10万回折り曲げても、電池容量は80%以上を維持した。
しかも、コストは1メートル当たり0.05ドル(約55円)を下回る手頃さだという。消費者向け製品への活用にうってつけだ。
研究チームは10年以上にわたり、フレキシブルエレクトロニクス材料の研究を重ねてきた。彭教授は「繊維状リチウムイオン電池の現在の性能と事業化レベルから判断すると、3〜5年以内に大規模な生産と活用が実現する見込みだ。リソースが集まり、それを効果的に利用できれば、実現までの期間が2〜3年以内に短縮される可能性もある」との展望を示している。
*論文URL※:https://www.nature.com/articles/s41586-021-03772-0
原文筆者:WeChat公式アカウント「量子位(ID:QBitAI)」
(翻訳・田村広子)
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