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ティム・クック氏が米アップルのCEOに就任して先月24日で10年を迎えた。アップルはこの10年間でiPhone 13までを世に送り出し、時価総額世界1位の企業となった。
クックCEOは就任以降、中国市場をことのほか重視している。彼はアップルCEOに就任してわずか1年後の2012年3月に初めて中国を訪問した。
同氏はこの後もたびたび中国を訪問し、中国ではアップルの旗艦店も増え続けている。旗艦店は現時点で43店にのぼり、中国のECプラットフォームにも出店している。
中国市場からアップルが得た収益も大きい。今年第3四半期の同社の売上高は814億ドル(約8兆9000億円)だが、そのうちグレーターチャイナ(中国本土、香港、マカオ、台湾)が147億6000万ドル(約1兆6000億円)と売上高の18%を占めている。
IT専門調査会社IDCのデータによると、昨年上半期、600ドル(約6万6000円)以上の中国ハイエンドスマートフォン市場におけるシェアは、ファーウェイが44.1%、アップルが44%と僅差だった。しかし米国の規制の影響でファーウェイの事業が制約を受けるにつれ、アップルはファーウェイの市場シェアを徐々に奪っていった。今年第1四半期にはiPhone12シリーズの販売が伸び、アップルはより高額な800ドル(約8万8000円)以上の市場で72%のシェアを獲得した一方、ファーウェイのシェアは24%とさらに減少した。
アップルはサプライチェーンに関しても中国をさらに必要としている。過度な中国依存と膨れ上がる人件費などの問題を避けるため、同社はすでに中国国内の一部のサプライチェーンを東南アジアなどの国に移し始めている。しかし、コロナ禍によりこの移転計画に狂いが生じ、やむなくサプライチェーンを中国に戻さざるを得なくなっている状況だ。
アップルはそれでもサプライチェーンの一部を中国から移転させたいと考えている。しかし現時点では中国の関連企業は減るどころかむしろ増えている。アップルが公開した昨年の主要サプライヤー200社のリストを見ると、中国のサプライヤーは53社と全体の4分の1を超えている。また昨年は34社のサプライヤーが新たに加わったが、そのうち12社は中国のサプライヤーだ。さらに今年、中国EMS大手「立訊精密工業(ラックスシェア)」がiPhoneの組み立て業務を受注し、アップルにとって4社目のiPhone組み立てメーカーとなった。台湾の経済日報によれば、ラックスシェアは2023年にはiPhone組み立て工場としてシェア2位となることが濃厚だ。
ディスプレイ業界調査を手掛けるWitDisplayのチーフアナリスト林芝氏はある取材に対し「アップルのサプライチェーンが中国のサプライヤーに依存しているのは、中国がコロナショックからの回復が最も早く、中国本土のサプライヤーをより多く引き込めば安定した生産が保証されるため」と述べている。
だがこれは、世界のコロナ感染状況が落ち着けば、アップルはおそらくサプライチェーンを再度東南アジアなどに移転し、中国の一部のサプライヤーは「見捨てられる」ことになることを意味するものでもある。
同社は毎年複数のサプライヤーを変更しており、アップルからはじき出された企業の業績は急落することになる。アップルのサプライヤーとなるのは諸刃の剣といえるだろう。
クックCEOが率いてきたこの10年、アップルは中国スマホ市場の急成長という千載一遇のチャンスに乗り、同国の市場を切り拓いてきた。市場の変化はめまぐるしいものの、中国市場は当面、アップルにとって不可欠の存在であり続けるだろう。
作者:WeChat公式アカウント「連線Insight(ID:lxinsight)」李信
(翻訳・神部明果)
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