「人人網」陳一舟CEOの選択

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中国のSNS黎明期に「中国版Facebook」として人気を博した「人人網(renren.com)」について、運営元の人人公司(Renren)は14日、2000万ドル(約23億円)で事業譲渡すると発表した。譲渡先はビッグデータ、人工知能関連のIT企業「北京多牛互動伝媒(Beijing Infinitas Interactive Media)」。

北京多牛互動伝媒の親会社Infinity Technology(登記地:ケイマン諸島)は、同社の評価額を7億ドルとし、人人公司に対して4000万ドルの株式を発行した。

人人網はSNSの他、ライブ配信プラットフォーム「人人直播」など人人網に関連する全事業について、北京多牛互動伝媒傘下の既存メディアと協業し、コンテンツとソーシャルを組み合わせたサービスを継続する。北京多牛互動伝媒は若年層を中心としたユーザー3億5000万人を抱え、人人網はユニークユーザー3100万人(今年3月末時点)を擁する。

14日午後9時30分(現地時間)までに、人人公司の株価は1.97%値上がりして1.55ドルをつけ、時価総額1億1000万ドルとなった。

「コンテンツ+ソーシャル」が人人網にもたらすチャンス

人人網の事業譲渡先となった北京多牛互動伝媒は、メディア、ビッグデータ、ビジネスインテリジェンス(BI)、クラウドコンピューティングなどに携わるインテリジェントメディア企業だ。もともと人人網とも関係が深い。

同社の王楽董事長は人人公司の出身で、2008年に同社傘下のIT・テックニュース媒体「DoNews.com」編集長に就任。同社は2016年3月、中国の店頭取引市場「新三板」に上場し、同市場初のビッグデータ関連銘柄となった。登記情報提供サービス「啓信宝」によると、人人公司の子会社「北京千橡網景科技」は、北京多牛互動伝媒の第3位株主だ(保有株式シェア11.59%)。

登記情報提供サービス「啓信宝」より

今年8月、人人公司の陳一舟董事長兼CEOは社内にあてたメールで、同社のSNS事業を第三者に継承させる意思を表明していた。今回の事業譲渡はその意向に沿ったものだが、中国のSNS黎明期に業界の牽引者だった人人網が、今後どのような活路を見出すかに業界の関心が集まっている。

一方、北京多牛互動伝媒を率いる王楽董事長は、「コンテンツとソーシャルの融合は、業界の発展の鍵を握る。我々は若年層ユーザーの需要を掴んでいる。人人網との協業を通じて、膨大なコンテンツと数億人規模のユーザーを結びつけ、3.5億人の若きユーザーにとって最も影響力あるメディアを構築していきたい」と述べた。

人人網が擁するコミュニティやユーザーに対しては、北京多牛互動伝媒が有するゲーム、テック、アニメなどのコンテンツを活用してサービスの一新を図る。とくにライブ配信プラットフォーム「人人直播」は、メディア再構築の重要な役割を担うことになるだろう。

テンセント(騰訊)や今日頭条(Toutiao)、バイドゥ(百度)など大手各社も、コンテンツとソーシャルのシナジーを模索中だ。微信(WeChat)、QQという強力な二大ソーシャルを有するテンセントは先日、プラットフォーム・コンテンツ事業部(PCG)を設立。同事業に本気で注力する姿勢を見せた。

人人網12年、輝きと低迷

人人公司董事長兼CEOの陳一舟氏は今回の事業譲渡をベストの選択と考えている――「人人網」に最善策を講じるとともに、会社を次のステージに向かわせるという意味で。

1999年、陳氏は楊寧氏、周雲帆氏とともに「校友録(ChinaRen)」を創設。世界で2番目の実名制SNS(1番目は1998年に創設された湖南電気通信傘下の「5460」)になった。なお、フェイスブックは2004年に創設された。

2005年、フェイスブックの急速な台頭に伴い、彼らは「5Q校園網」をローンチ。国内における大学SNSでシェアの半数を獲得することに成功し、同年に創設された「校内網」と双璧を成す存在になった。翌2006年、「校内網」は千橡互動集団(オーク・パシフィック・インタラクティブ)に200万ドル(約2億3000万円)で買収され、同年末には「5Q校園網」と「校内網」が合併。2009年に「人人網」と改称した。

その後も発展し続けた人人網だが、重要な2つの転換期を迎えることになる。2007年~2010年、人人網は「開心網」、「Qzone」、「同学網」、「朋友網」、「新浪微博(ウェイボ)」といったライバルたちの攻勢にさらされることになったのだ。それでも2011年には米国に上場。時価総額は80億ドルに上り、国内3位のIT企業となった。

しかし、真の危機は、好調のときにこそ訪れるものだ。テンセントが「微信(WeChat)」をローンチし、実名制SNSの牙城を崩し始めたのだ。2011年~2015年、「人人網」は必死に挽回を試みたが、微信の絶大な影響力の前には為す術がなかった。

2011年~2014年、そしてその後の数年間、人人公司はテンセントや新浪(Sina)などとの激しい市場争いに巻き込まれ、少なくとも3億ドルを投入したものの、水泡に帰したと言われている。陳一舟氏は社内向けのメッセージで、「いくら投資しても人人網の苦境を救うことはできない」「このような投資を続けていては早晩、資金は枯渇する」と綴ったという。

また、「人人網について、どうしても言わなければならないことがある。過去数年間、我々の事業はイノベーションとは無縁で、現状維持だけで精いっぱいだった。新機能の実装は当然な決定であるにも関わらず、多くのユーザーから不満が噴出する始末だ」と不満を述べたという。

会社存続のため、陳氏は4年前に難しい決断を下した。最盛期には2000人いた従業員を現在の80人にまで減らしたのだ。巻き返しを図るため、3年前にライブ配信サービスも始めた。さらに、中古車取引サービス、米国のトラック運転手向けアプリやSaaS運営など海外事業を試みるとともに、米国の金融サービス会社「SocialFinance」にも投資している。

「中国版Facebook」と称された人人網を手放すことは、陳氏にとって名残惜しいことに違いない。陳氏は人人網のためにより適切な後継者を見つけると述べていたが、これは彼なりの人人網への最後の配慮であろう。つまり、多くのユーザーの青春の思い出を無駄にしたくないという気持ちの現れだ。SNSの移り変わりは激しい。さらに大きなSNSが今後登場し、脅威にさらされる可能性もある。陳氏は敗れたのだ。

同氏は人人網を手放したことで「身軽」になった。今後はインターネットと人工知能に基づいたグローバルネットビジネスにリソースを集中する計画だ。

(翻訳・愛玉/飯塚竜二)

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