火鍋チェーン「海底撈」、実はテック企業?1億元を投入した”スマートレストラン”の実態は

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近年、飲食業界で目覚ましい成功を遂げたのが火鍋レストランチェーンの「海底撈火鍋(カイテイロウヒナベ)」。食事そのものやサービスはもちろんのこと、プロモーションでもショート動画共有アプリ「TikTok(抖音)」を利用するなど、時代の波をうまく掴んでいる。

IPOで調達した資金の20%をテクノロジー強化に投入すると明言している海底撈は、5つの最新技術を導入して、飲食店が抱える3つの問題を改善した。食品安全、サービスの質、運営効率だ。

1億元を投入した「スマートレストラン」

テクノロジーを結集した海底撈初の「スマートレストラン」は北京に出店した。配膳ロボット、具材をピックアップするロボットアーム、様々なレシピを再現するスープ調合機など、5つの技術がウリだ。

1)大スクリーンシアターを併設した待合スペース

まるでシアターのような待合スペースに幅13メートルの巨大スクリーンを設置。映画などが楽しめる。

スクリーンのQRコードをスキャンするだけで対戦型ゲームも楽しめる。店内で順番を待つ他のゲストとの対戦も可能で、将来的には全世界のプレイヤーと対戦できるようになるという。

80人を収容できる待合スペースには、ネイルサロンやマッサージチェアも設けられている。

2)完全無人化を実現したパントリー

ガラス張りのパントリーではロボットたちが忙しく働いている。0~4℃に温度管理され、具材の搬入やピックアップまでの工程が徹底的に無人化されている。

バックヤードには、RFID食材管理システムが用いられている。各具材に無線IDチップが付けられ、賞味期限などを自動管理。期限を過ぎた食材は自動的に破棄される仕組みだ。ロボットアームがピックアップした具材をベルトコンベアに置き、配膳ロボットがテーブルまで運ぶ。バックヤードの工程を無人化させることで食品の安全性が向上した。


3)ダイニングスペースを覆う360度3Dプロジェクションマッピング

ダイニングスペースでは360度サラウンド3Dプロジェクションマッピングが楽しめる。5つの大型ドームスクリーンに、星空、雪山、一面の桃の花など6つのテーマに基づく映像を投影する。五感で楽しめる食事体験だ。制作チームには国営テレビ局・中央電視台(CCTV)のスタッフも参加しているという。

投影する映像はオーダーメイド制作も受け付ける。プロポーズ場面の撮影などを想定している。

個室ではゲストの好みに応じて照明を調整したり、タッチ操作可能なスクリーンを使った会議も開催できる。ゲストが持ち込んだパソコンの画面もスクリーンに投影できる。

4)「スマートシェフ」がマンパワーを37%削減

IKMS(Insight Knowledge Management Systems)を導入した「スマートシェフ」が、無人バックヤードのオペレーションを全面的に管理する。受注してからテーブルにサーブするまでの全過程を自動化し、マンパワーを37%削減した。

5)無限にカスタマイズ可能な火鍋スープ

ゲストは火鍋スープの辛さ、コク、塩辛さなどを細かく指定でき、個々の好みに合わせた味付けで火鍋を楽しめる。味はタブレットで簡単にカスタマイズできる。さらに、指定したレシピは保存でき、次回以降も同じ味を楽しめるほか、家族や友人にシェアすることも可能だ。

同店は400人を収容可能。バックヤードは完全に無人化しているのに対して、ホールは店舗スタッフが担当する。

配膳ロボット

飲食店は仮の姿、海底撈の実像はテック企業だ

今年9月に香港上場を果たした際、海底撈の首席戦略官(CSO)周兆呈氏は「年内にパナソニックと共同開発したスマートレストランを開業する」と宣言した。

海底撈は飲食企業でありながら、その実像はたゆまぬ技術革新に努めるテック主導型企業である。

2010年、デリバリー事業を開始した海底撈は、2011年には料理のオーダーにタブレットを導入。2015年には飲食とITの融合を目指したスマートストアを開店。北京、広州、上海などに出店した。続く2016年には最初のスマートレストランを開業。ただし、この業態は機能面で真の効率化を果たせず、運営規模の拡大には至らなかった。

あくまで最大の財産は「人」である

創業者の張勇氏がテクノロジーに求めるものは、人件費の削減にとどまらず、食品安全と飲食業そのものの改革にある。テクノロジーの導入は旧態依然とした産業構造を破壊するためではなく、効率向上のために行うものだとしている。また、最新技術は厨房におけるヒューマンエラーを最大限に抑制すると考えている。

一方で、テクノロジーが単純に人材に取って替わると考えているわけではない。周兆呈CSOは「人材こそ最も貴重な価値である」と述べ、ロボットでは代替できない分野で人材を有効活用するという。具体的には豊富なユーザーエクスペリエンスを提供する業務だ。

近年、「スマートレストラン」を謳うのは海底撈だけではない。注文やサービスは無人化、会計は顔認証……などと技術は進歩しても、ゲストに「ぜひまた来たい」と思わせるような体験を提供できなければ意味がない。技術はあくまで、運営上の問題を解決する存在であるべきだ。
(翻訳・愛玉)

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