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中国の通信機器大手ファーウェイは自動運転技術の開発を行うため、フォルクスワーゲングループと合弁会社の設立を計画していることが、複数の関係者の話で明らかになった。
関係者によると、協業方法の一つとして持ち上がっているのが、フォルクスワーゲンが資金を提供して合弁企業の株主となり、ファーウェイは主にチップやソフトウエアなどの知的財産を含む技術を提供するというもの。ファーウェイ側は多くのハイレベル技術者を送り込むとも見られ、スマートモビリティ製品部門のトップを務めていた蘇箐氏が合弁会社に移籍するとの情報もある。
これらの情報についてファーウェイは「事実ではない」と回答。フォルクスワーゲンからの公式回答は得られていない。
振り返ってみると、提携のための布石はあった。ファーウェイはこれまでにフォルクスワーゲン傘下のアウディと提携を結び、ファーウェイの自動運転システム「ADS」をアウディに提供することで合意している。今回の合弁会社設立はアウディブランドをベースに、提携範囲を大きく広げることになる。
既存の大手自動車メーカーの中でも、フォルクスワーゲンはEV化とスマート化へのシフトを模索するパイオニアだ。すでにEV専用プラットフォーム「MEB」を開発し、「ID.3」「ID.4」など複数モデルのEVを販売しているほか、2000人規模のソフトウエア部門「Cariad(前身はCar.Software)」を組織してスマート化を推し進めてきた。
中国市場では、自動車メーカー各社がローカライズに注力している。米ゼネラル・モーターズは少し前に、中国の自動運転スタートアップ「Momenta」に3億ドル(約330億円)を出資した。
フォルクスワーゲンも例外ではない。すでにドローン世界最大手「DJI(大疆創新)」傘下のスマートドライビング部門「大疆車載(DJI Automotive)」と協業を進めている。Cariadはフォルクスワーゲンのソフトウエア部門としてグループ全体を支える目的があるが、「この先フォルクスワーゲン中国法人が保有するCariadの株式はわずか1%になるかもしれない」と同社幹部に近い人物は明かしている。
ファーウェイとの提携が実現すれば、フォルクスワーゲンは中国におけるスマート製品のスキルをいっそう高めることができる。ファーウェイは2019年にスマートカーソリューション・ビジネスユニット(BU)を立ち上げ、自動車向けICT部品のサプライヤーとして、メーカーの自動車製造を支援する姿勢を表明した。
今年4月には自動車向けソリューション「HI」を発表。「ファーウェイ・インサイド(Huawei Inside)」の頭文字を取ったこのソリューションは、現在のところ中国自動車大手「北京汽車(BAW)」「長安汽車(Changan Automobile)」「広州汽車(GAC)」と提携が進んでいる。このほか車載コンピューティングプラットフォーム「MDC(Mobile Data Center)」やミリ波レーダー、自動運転システムADSなどを提供し、サプライヤーとしての事業を展開してきた。
ファーウェイは「スマートセレクション(華為智選)」ブランドも始動させている。提携第1号となったのは中国の新興自動車メーカー「金康賽力斯(SERES)」で、ファーウェイとコラボしたSUV「セレス・ファーウェイSF5」はわずか1週間で数千台を受注した。
ファーウェイと金康はすでに緊密な提携関係を築いている。セレス・ファーウェイSF5を納車した後、すでに次モデルの開発に取りかかっており年内にリリースが予定されているほか、第三弾モデルも企画されているという。ファーウェイは金康との提携において、研究開発に関わる膨大なリソースを投入している。「重慶市にある金康社の研究施設では、4フロアのうち1フロアをファーウェイの出向社員が使用している」とファーウェイ関係者は語る。
ファーウェイが威信をかけて進めているスマートセレクションや、フォルクスワーゲンとの提携はいずれも、スマートカー事業における成果であり、これを足がかりにさらなる飛躍を遂げることだろう。
(翻訳・畠中裕子)
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