中国の国営ファンドが重視する「1+1+X」方式

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中国の国営ファンドが重視する「1+1+X」方式

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中国国家戦略によるデータヘルス計画が推進される中、健康医療情報の応用が進み、同分野への投資が積極的に行われるようになっている。

中電健康産業ファンドは、健康・医療関連ビッグデータの国家プロジェクトを請け負う中電データが設立したファンドで、これまでに医聯(Medlinker)、森億智能(SYNYI・AI)、雲知声(Unisound)など、20社以上の医療IT、医療ビッグデータ関連企業に出資してきた。

36Krは、中電データの共同創始者で、中電健康産業ファンドのパートナーでもある宋雨氏から、同社の投資ロジックについて話を聞くことにした。

中電健康産業ファンドの宋雨氏

Q:中電データ、中電健康産業ファンド設立の背景について教えてください。

宋:中電データは国家衛生健康委員会の指導の下、2014年に設立された。設立の目的は医療ビッグデータ産業の発展のためだ。産業の分布と資本を結びつけるために、中電データは2017年6月に中電健康産業ファンドを設立した。当初の出資金は30億元(約490億円)だった。

Q:中電健康産業ファンドの投資先はAI応用、移動式医療、医薬品流通、医療ビッグデータなど様々な分野に渡りますが、どのような戦略があるのでしょうか?

宋:健康医療情報の向上に資する4つの事業領域を重視している。1)医療IT 2)AIとデータ技術 3)生命科学 4)フィンテックだ。

Q:新しいテクノロジーか、新しいモデルかはどのように判断するのでしょう? 具体的な基準や投資戦略はありますか?

宋:「1+1+X」方式を採用している。まず最初の「1」は医者、患者、医療機関、政府、製薬会社、保険会社、医療機器メーカー、政府系の医療機構という7つの分野の内、少なくとも1つの分野でしっかりとした成果を上げているということ。例えば、医聯はドクタープラットフォームの先駆者であり、我々の投資対象となり得る。しかし、それだけでは足りない。だから、我々は「+1」も重視する。

「+1」は、データベース化とビジネスモデルの転換だ。医聯の例で言えば、同社の事業を発展させていけば、製薬会社、保険、患者などの分野でも応用できる。一般的に我々は「1」の状況で投資した後、「+1」を推進するための手助けをすることになる。

最後の「+X」は、先ほどの7つの分野がつながるエコシステムだ。医聯が製薬会社とつながると、最初は薬の販売だけだった事業が、データ化を進めることで、CSO(医薬品販売業務受託機関)の設立や、学術面での大きな進歩につながる。ひいては、医薬品の流通面にも変化を生み出せるだろう。

Q:投資ラウンドごとに、どのような条件を定めているのでしょうか?

宋:投資ラウンドごとの厳格な区別は設けていない。市場が成熟しているか否かだ。成熟していない市場では、ビジネスチャンスも大きい。我々は企業に投資するだけでなく、新しい会社を設立したりもしている。例えば、医薬品開発業務受託機関(CRO)で世界最大手の薬明康徳新薬開発(ウーシー・アップテック)と共同で設立した合資会社などだ。一方、すでに成熟している市場ならば、もちろんその分野でのトップランナーが投資ターゲットとなる。

Q:一般的なベンチャー・キャピタルやプライベート・エクイティと比べ、中電にはどのような違い、強みがあるのでしょうか?

宋:すべての投資の産業チェーンには違いがある。主に次の5つだ。
1)プロジェクトの情報収集:我々はプロジェクトを探し回ったりはしない。必要なデータは揃っており、パートナーシップやビジネスモデルの転換、アップグレードが必要な案件を探すだけだ。
2)プロジェクトの判断:創業者の経歴、専門家としてのスキルを確認するとともに、技術革新とイノベーションモデルを客観的に見る。
3)評価:投資に見合うリターンが得られるかどうかを評価する。
4)投資後のサポート:政策や市場状況など各種データの提供、さらなる資源の投下等だ。
5)投資引き上げ時期の柔軟化:原則として我々はパートナーと長期的な関係を築きたいと考えているが、期限内に上場を果たせなければ撤退しなければならない。

Q:産業基金として、中電はエコシステムの形成を前提にしていますか、それとも投資利益率を重視していますか?

宋:企業評価を高めることと金銭的なリターンがあることは、産業の発達と補完関係にある。また、事業と資金との相互作用がなければ、評価を得るのは時間がかかるし、すぐに問題にもぶつかるだろう。事業と資金の融合は我々の核心的な競争力であり、エコシステムを整えることが一番だ。そうすれば、金銭的リターンは自ずとついてくる。

Q:医療分野への投資は結果が見えるまでに時間がかかり、それだけリスクも高いと言われています。そう思われますか? また、投資リスクについてはどうお考えですか?

宋:実際にそんなに早く結果が出るものはないと思う。Eコマースの発展スピードは早いが、同時に多くの弊害も生んでいる。もちろん、私は医療分野の発展には忍耐が必要であることも理解している。なぜなら、この業界は比較的閉鎖的で、管理が厳しいからだ。さらに人命にも関わっている。ただ、それだけトライする価値がある分野でもある。総合保健分野全体の市場規模は、中国のGDPの3分の1を超えている。

投資リスクとしては、我々はそれほど気にしていない。我々はベンチャー・キャピタルやプライベート・エクイティよりも産業を理解しており、各プロジェクトに最適な資源やチームを提供できる。また、データに基づき、ビジネスモデルの方向性を調整することもできる。

Q:第二期の出資募集の予定はいつですか?

宋:来年6月にクローズする計画だ。今回の目標額は20億元から30億元だ。

Q:「資金調達の冬」とも言われる中、この分野でのスタートアップにどのようなアドバイスをしますか?

宋:先ほども述べたが、この業界は比較的閉鎖的で管理が厳しい。やはり、業界に精通したチームとの共同作業が必要だろう。
(翻訳・飯塚竜二)

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