LinkedInに続き、米Tableauも中国撤退表明 アリババクラウドが事業買収か

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LinkedInに続き、米Tableauも中国撤退表明 アリババクラウドが事業買収か

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ビジネス特化型SNS「LinkedIn」に続き、ビジネスインテリジェンス大手の米「Tableau(タブロー)」も中国市場からの撤退を発表した。

Tableauは11月17日に中国での直接的な事業経営を終了し、来年の1月末日をもって中国本土における既存のパートナーシップを解消するという。Tableauの顧客が11月17日に受け取ったメールで明らかになった。

Tableauの中国事業は今後、親会社の顧客管理ソフト最大手セールスフォース・ドットコム(Salesforce)とアリババとの提携事業に組み込まれる。既存の顧客は来年2月1日以降、シンガポールの顧客担当チームおよび提携組織を通じてサービスを継続できる。今後は親会社の中国事業パートナーであるアリババが事業チャネルとなり、アフターサービスなどはシンガポールのチームが担当するということだ。WeChatアカウント「Tableau学社」によると、中国エリアのTableau社員は全て解雇されるといい、この先アリババがTableauの中国事業を買収するのか、それとも単に提携パートナーという形を取るのか、いまだ不透明だという。

多くの中国ユーザーにとってビジネスインテリジェンス(BI)を知るきっかけとなったのが、見栄えのするTableauのチャートだ。中国のBI市場が台頭し始めたのは2000年以降のことで、多くの企業がTableauから大きな影響を受けてきた。

2010年から破竹の勢いで成長を遂げてきたTableauだが、2013年の上場後しばらくは株価が安定しない状態が続いた。大手企業がこぞってBI事業に乗り出したことが大きく影響しており、なかでもマイクロソフトの「Power BI」は強力なライバルとなった。

最終的には、セールスフォースが2019年に157億ドル(約1兆8000億円)でTableauを買収、50%近い買収プレミアムが乗った。本買収は当時セールスフォースがAI・BI分野を補強するための核心戦略と見なされ、株価の押し上げ効果や戦略的意義を考えるとプレミアム以上の価値があると評された。

買収後のTableauは安定成長を続けている。セールスフォースの2022会計年度第2四半期(2021年5~7月)決算によると、同社が買収した事業であるTableauおよび「MuleSoft」の成長率は前年同期比31%と同社事業の中でトップとなっており、年間売上高に換算すると37億ドル(約4200億円)に達する見込みだ。

(出典:セールスフォース)

アリババクラウドとの提携でシナジー効果を生み出せるか

中国市場でのTableauの財務状況や業績は決して悪くない。Tableau中国エリア創業メンバーの1人が記したところによると、2014年に中国支社を開設してからの数年は驚異的な成長を遂げ、16年の業績は13年の40倍に達したという。

ではなぜセールスフォースはTableauの中国撤退を決めたのだろうか。

事業規模が主な理由とも考えられる。セールスフォースは顧客管理(CRM)サービスの最大手として、この10年ずっと急成長を保ってきた。売上高は2014会計年度の41億ドル(約4700億円)から2022会計年度の予想263億5000万ドル(約3兆円)へと大きく増加し、年平均成長率は26%に達している。同社の主な売上高は欧米市場が中心で、急成長中のアジア太平洋市場は全体の10分の1にも満たない。

(セールスフォースのエリアごとの2020年売上高、出典:富途牛牛)

セールスフォースはずっと中国のビジネス環境になじめずにいたが、主力事業が年々増加を続けていたためあまり注意を向けることはなく、これまで中国事業はアリババクラウドなどのパートナーが販売を請け負っていた。2010年以降に急拡大を遂げた中国のCRM市場も今ではレッドオーシャンとなったが、セールスフォースには狙いを定めた戦略もない。

市場調査会社IDCが発表した2020年下半期のBI市場報告によると、中国のBIソフトウエア市場は2020年に5億8000万ドル(約660億円)となり、前年から17.1%増加した。現在では「帆軟(Fanruan)」「永洪(Yonghong Tech)」など国内の中堅BI企業も現れており、現地企業のニーズにかなったプリセールスやアフターサービスを提供するうえで大きな強みを発揮している。帆軟は2015年に売上高が1億元(約18億円)を突破、2020年には8億4000万元(約150億円)に達している。

企業やデータのクラウド化が次第に進むなか、BI市場もこの動向に追随するとみられる。この分野で無視できないのがクラウド事業者だ。国内のIaaS(Infrastructure as a Service)ベンダーは大混戦を極めており、PaaS(Platform as a Service)へと向かうのが流れとなっている。BIはPaaSの重要な部分を占めており、激しい競争に巻き込まれることは避けられない。

アリババクラウド(阿里雲)はクラウド事業者の中でもトップクラスであり、ガートナーが発表するマジック・クアドラントの分析・BIプラットフォーム分野に選出された中国唯一の事業者だ。アリババクラウドがTableauの中国事業を引き継ぐとすれば、間違いなく強者連合となり、BI製品の補強とさらなる市場開拓につながるはずだ。同時に競合他社は予測不能な局面に入ると言える。
(翻訳・畠中裕子)

中国事業縮小のLinkedIn、コアのSNS機能を切り捨て活路探るも前途多難

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