インド、アフリカ、中東、東南アジア…中国から見た越境EC市場の魅力と課題

36Kr Japan | 中国No.1スタートアップメディア日本版

中国最大のタートアップメディア、36Krの日本版です。先端企業の技術開発、業務提携、ファイナンス状況など中国の「今」を現地から届けるとともに、日本人向けの解説などのオリジナル記事を発信します。36Kr日本版を見れば、中国が分かります。

特集注目記事

インド、アフリカ、中東、東南アジア……中国から見た越境EC市場の魅力と課題

続きを読む

2018年上半期、中国から海外に向けた越境ECの取引額は3兆4700億元(約57兆円)に達し、そのうちB2C取引は前年同期比21.2%増の1兆2000億元(約19兆円)となった。多くの投資機関や起業家は、越境ECの市場を数兆元規模と見込んでおり、越境ECプラットフォームに期待している。

国内ECの「ボーナス期」はすでに終わっている。そのため、ニューリテール戦略を推し進める天猫(Tmall)や京東(JD.com)などの大手ECはオフライン(実店舗)改革に乗り出している。しかし、海外に目を向ければ状況はまったく異なる。モバイルインターネットとECの普及率が高まる新興国には、新興ECプラットフォームにとって多くのチャンスがあるはずだ。

こうした中、海外における淘宝(タオバオ)や京東の座を手に入れようと、先陣を切って海外市場を開拓する事業者が増えている。

各地域のEC市場の現状を整理するとともに、それぞれの市場の特徴をまとめてみる。

インド – 伸び盛りの巨大市場だが、課題も多い

インド関連のITメディア「竺道(ZDreview.com)」などによる研究報告書では、2017年のインドのインターネットユーザーは約4億6200万人で、中国に次ぐ数だ。巨大な「人口ボーナス」もある。インドのEC市場には大きな可能性が秘められているため、欧米や日本の企業、投資機関もインドに積極的にアプローチしている。

2017年の中国の1人当たりGDPは9,680ドル(約105万円)だが、インドはわずか2,036ドル(約22万円)。そこで、ローカルECのビジネスモデルはローエンド市場向けとなっている。また、オンライン決済の普及率は低く、COD(着払い)の受け取り拒否率も高い。業界筋によると、その拒否率は20〜40%に上るという。こうした点を考慮すると、インドのECビジネスモデルはまだ貧弱で、利益を上げることが困難だと思われる。

インドの主なECアプリ(トップ10)は上図の通り。首位の「Club Factory」は今年初めに1億ドルを調達。他にも「Paytm」「Amazon」「Flipkart」などがあり、市場争いは激しい。各社ともシェアを伸ばすべく次々と資金を投じており、スタートアップにとっては厳しい環境だ。

東南アジア – 取り組みやすいが、すでに競争熾烈

中国では、東南アジア市場は好印象を持たれている。と言うのも、東南アジアには東アジアの文化的影響を受けている地域もあり、ビジネスがしやすい環境だからだ。また、中国から東南アジアへの物流コストが比較的低いという利点もある。

とは言え、同市場ではすでに「Lazada」「Tokopedia」「Shopee」「OLX」「Bukalapak」「Tiki」「京東全球售(global.jd.com)」など大手EC各社がしのぎを削っており、市場争いは一段と苛烈になっている。

また、ローカリゼーションの観点からすると、東南アジアは各国で市場環境や言語が異なっているので、新規進出のECにとってはハードルが高い。例えば、先行しているShopeeは、東南アジアの7市場(シンガポール、マレーシア、フィリピン、台湾、インドネシア、タイ、ベトナム)をすでにカバーしており、今年上半期のGMV(流通総額)は41億ドル(約4650億円)に達している。

中東・北アフリカ – 顧客単価が高いが、政治リスクも

この地域の最大の魅力は、顧客単価が非常に高く、ECモデルも優れていることだ。COD拒否率は20〜40%あるものの、150ドルを超える顧客単価がその弱点をカバーできる。

しかし、市場規模の観点からみると、この地域の総人口は約6億人と巨大であるものの、一部の国の極度に不安定な政情がビジネスに影響を与える可能性がある。

現在注目されている市場は主にサウジアラビアとアラブ首長国連邦であり、両国の総人口は5000万人未満。東南アジアやインドなどの大市場とは大きな差があり、ある程度ビジネスが軌道に乗った後で近隣諸国に市場をうまく拡大できるかどうかが鍵となるだろう。

この地域の代表的なECとしては、アマゾンに買収された「Souq」、「eBay」との戦略的提携を結んでいる「Noon」がある。他にも「Jollychic」「Fordeal」「SheIn」「Funmart」などが存在しているが、中国ECにとっては比較的開拓しやすい地域である。

サブサハラ・アフリカ – EC黎明期にあり、インフラが脆弱

2017年のアフリカのEC市場規模は165億ドル(約1兆9000億円)で、2022年には290億ドル(約3兆3000億円)まで拡大する見通しだ。サハラ以南のアフリカでは、インターネットインフラが脆弱で、4Gがまだ普及していないにも関わらず、通信料金がそれほど安くないことも懸念される。

アフリカのEC業界では、ユニコーン企業「Jumia」が誕生している。2012年に設立された同社は、ドイツのインキュベーター「ロケット・インターネット(Rocket Internet)」の支援を受け、現在はアフリカ12カ国でサービスを展開中。その他のECとしては「Konga」、「Kilimall」などがある。全体的に見て、プラットフォーム間の争いは激しくないが、それぞれの規模も大きくはない。また、アフリカのECプラットフォームにとっては中国のサプライチェーンが不可欠であり、一部のプラットフォームは中国と関わりを強めている状況だ。

目下、アフリカ諸国の経済、決済、物流などが依然としてEC産業発展のボトルネックとなっている。また、アフリカ市場は国や地域によって、経済発展や文化、インフラなどの面で大きな開きがある点にも留意しなければならない。EC企業は一般的に、東アフリカのケニア、西アフリカのナイジェリア、南アフリカを足がかりに周辺国・地域を開拓している。

ローカリゼーションが成功の鍵

現在の越境ECのビジネスモデルは、B2Cプラットフォームと自社B2Cに大別できる。自社B2Cはサービスの品質管理や顧客体験提供の面で強みがあり、B2Cプラットフォームは取り扱い商品の豊富さといった面で強みがある。

新興ECはどうか。EC業界でアリババや京東といった大手ECが勢力を振るう中、「拼多多(Pinduoduo)」に代表される共同購入タイプのECや、「雲集微店(Yunji Weidian)」に代表されるS2B2C(供給者→事業者→消費者)のソーシャルコマースを、海外でも根付かせることは可能なのだろうか。

業界的には、海外ではこうした優れたECエコシステムは形成できない、という見方が強い。中国のソーシャルコマースは、アリババや京東といった大手ECが中心となって形成されたエコシステムに内包されており、決済やその他の面で環境が整備されている。中国以外では、今後「WhatsApp Pay」が広く普及するなどしなければ、新モデルを根付かせることは難しいだろうというわけだ。

しかし、チャンスがまったくないわけではない。ローカリゼーションがうまくいけば、状況が変わる可能性はある。

Shopeeの越境事業担当者は以前、36Krの取材に対して「東南アジアは東アジアの文化的影響を最も受けやすいエリアで、Facebookのコミュニティを中心とした地場コミュニティの影響力が強い」と明かしていた。

また、インドEC最大手Club Factoryの創業者である楼雲氏は、マイクロビジネスの潜在力の高さを評価している。規模は大きくないが、専業主婦の比率が高いことに着目しているのだ。

海外のソーシャルコマースは黎明期にあり、地域ごとにさまざまな企業があの手この手で市場開拓にチャレンジしている状況だ。継続的なチャレンジと検証を通じて、現地の状況や消費者のニーズを深く理解し、現地事情に合致した運営を実現できるかどうかが成功の鍵となるだろう。(翻訳・飯塚竜二)

関連キーワード

メールアドレスを登録して中国最新情報入手