無人配送車の安全走行を支えるV2X技術、公道での運用拡大で成長に期待

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自動運転に不可欠なコネクテッド技術V2X(Vehicle to everything)を開発する「蘇州艾氪英諾機器人科技(Suzhou AiKeYingNuo、以下:艾氪英諾)」がエンジェルラウンドで1000万元(1億8000万円)規模の資金を調達した。出資したのは「蘇州高新創業投資(SND Ventures Group)」「匯毅資本(Huiyi Capital)」「電子科技大学校友会(Alumni Association of UESTC)」。

2019年創業の艾氪英諾はマルチソースの路側データ融合をメインに行うスタートアップで、LiDARやカメラ、ミリ波レーダー、エッジコンピューティングを活用して道路状況を認識するセンサーシステムの構築に注力している。自動運転車両に路側センシングデータを提供することで、車両単体では難しい道路状況の詳細な把握を可能にした。

同社は交差点にLiDAR、ミリ波レーダー、カメラなどのセンサー機器を設置し、RSU(路側機)を通じてデータを送信することで、国内大手の無人配送車両に路側センシングデータを提供している。これにより大型車による視界不良や歩行者の飛び出し、信号機認識などの問題を解決して、高い安全性を実現している。

V2X技術というと、閉鎖・半閉鎖の比較的安全な環境で運用される無人配送車よりも、ロボタクシーのように都市部の複雑な道路環境で活用されるという印象が強い。低速の無人配送車にも路側センシングデータが必要と言えるのはなぜか。

同社の張磊CEOはその理由として、無人配送車の活用シーンにおける変化とコスト面の二つを挙げている。

無人配送車の活用シーンはこれまでの閉鎖・半閉鎖的環境から一般道路へと広がりつつある。今年5月には無人配送車を運営する「京東(JD.com)」「美団(Meituan)」「新石器(Neolix)」の3社が、北京市のモデル区内で公道を走行する許可を取得した。公道を走行する場合、信号情報の認識や事故・渋滞の防止、交差点左折(日本での右折に相当)時の安全確保などさまざまな課題に直面する。

V2X導入はコスト面でも優れている。現在運用されている無人配送車の多くはスキャンライン数16本のLiDARを搭載しており、検知範囲は30メートルほど。スキャンライン数32本のLiDARを採用すればより詳細なセンシングデータを取得できるが、それに比例してコストも上昇する。

もし無人配送車の活用が集中している場面にV2X技術を導入すれば、データアクセス料として道路側のコストの一部を徴収することで、通行する全ての無人配送車に路側データを送信できる。高額な車両コストに比べ、V2Xの導入は費用対効果の高いソリューションと言える。

現時点で無人配送車の運用規模はそれほど大きいわけではない。しかし張CEOは、無人配送車の運営企業は今後も公道の走行許可の申請を進め、無人配送車への投資規模を拡大し続けると指摘する。

アリババや京東、美団など独自の物流体系を持つ企業や、新石器などの自動運転スタートアップはいずれも無人配送分野への参入を進めている。アリババの無人配送車「小蛮驢(XiaoManLu)」はすでに350台が稼働しており、今後3年間で1万台に増やすという。京東は今年のダブルイレブンにスマート宅配車を400台近く投入し、2~3年のうちに数千台の運用を目指している。美団も3年間で万単位の無人配送車を投入する計画だ。このため張CEOは無人配送車の市場規模を楽観視しており、今後3年間で10万台規模に達するとみている。

艾氪英諾のV2X技術は高速道路を利用した幹線物流や都市道路にも応用されている。2020年に山東省の高速道路に設置したマルチビームLiDAR採用の不正通行監視システムは、全天候下で99.5%以上の精度で不正通行車両を撮影でき、通行料金の回収に役立っている。高速道路を運営する「山東高速(Shandong Hi-Speed)」によると、2021年上半期だけで累計1713万9200元(約3億円)を追加徴収できたという。2021年には峡西省の西咸新区でLiDARを活用した交差点ソリューションを導入し、交差点の正確な交通データを無人バスに提供して、意思決定の精度向上に貢献している。
(翻訳・畠中裕子)

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