EV製造へ買収加速する鴻海。「競争優位性ない」外部評覆せるか

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電子機器受託製造大手「フォックスコン(富士康科技集団)」の親会社「鴻海科技集団(Foxconn Technology Group、ホンハイ)」が米EVメーカー、ローズタウン・モーターズからオハイオ州の完成車工場を買い取ることで合意した。2億3000万ドル(約260億円)で土地、工場、社員および設備の一部を買い取る。同工場は米ゼネラル・モーターズ(GM)が閉鎖した工場をローズタウンが2019年に取得したものだ。

鴻海は創業者である郭台銘(テリー・ゴウ)氏が先頭に立って、この1年以内にEV関連の買収、出資、提携など十数件のアクションを起こしており、その範囲も台湾から中国本土、インドネシア、中東、米国に至るまで幅広い。出資している分野も完成車から電池、スマートコックピットまでさまざまだ。

鴻海の黄徳才CFOによると、来年の資本的支出は200億台湾ドル(約800億円)以内を見込んでおり、主にEV、次に半導体に充てる予定だという。

鴻海は傘下のEV製造「Foxconn EV Technology Inc」に1億2500万ドル(約140億円)、「鴻揚半導体」に31億7000万台湾ドル(約127億円)の増資を行うことも発表。EVと半導体への力の入れ具合を明らかにした。

自動車製造という郭氏の夢は今年、ようやく現実のものとなった。鴻海は10月に開催した「Hon Hai Tech Day(HHTD21)」で、自社開発したEV3車種を発表した。セダンの「Model E」、SUVの「Model C」、電動バスの「Model T」の3タイプだ。イベント当日が郭氏の誕生日ということもあり、自らModel Eを運転して会場入りした郭氏は「最高の誕生日プレゼントになった」と語っている。

鴻海が発表したEVセダン「Model E」(写真:鴻海)

鴻海グループの劉揚偉董事長によると、電動バスは2022年に台湾の運輸企業に納車予定だという。Model Cは23年の発売を予定している。

EV製造の加速を余儀なくされる鴻海

鴻海がEV分野で複数のアクションを起こしている理由を自動車業界のアナリストたちはこう分析する。「スマホ市場では出荷台数が連続して落ち込んでおり、アップルからの注文も他のサプライヤーに流出し続けているため、鴻海は新しい事業に成長分野を見出す必要がある」

鴻海グループは11月12日、第3四半期の決算報告を発表した。純利益は370億台湾ドル(約1480億円)で、売上高は1兆4100億台湾ドル(約5兆6400億円)だった。劉董事長は電話会議の中で「第4四半期の売上高は部品不足などの影響により前年比で減少する見込みだ。部品不足は2022年下半期まで続くだろう」との見通しを明らかにしている。

劉董事長は、2025年までに同社が開発したEV向けのプラットフォーム「MIH」を搭載したEVを製造し、世界で10%のシェアを獲得したいとしている。また、26年までにはEV関連事業の年間売上高が1兆台湾ドル(約4兆円)になるとの見通しを示している。

劉董事長は昨年、鴻海がEV分野のAndroidを目指すと語っている。同社はその実現に向け、モジュール化したMIHをリリース。EV業界にオープンプラットフォームを提供し、全く新しいEVに関するサプライチェーンの構築を目指す。MIHを開発するための「MIHアライアンス」には、リチウムイオン電池世界大手「寧徳時代(CATL)」や「比亜迪電子(​​BYD Electronic)」、半導体設計の英Armなどがすでに加入している。

「アライアンスを構築しても、合弁で自動車を製造しても、鴻海には競争を勝ち抜くための強みがない」と自動車業界のあるアナリストは話す。鴻海がEV業界での動きを加速させた背景には業界内のプレッシャーがある。

中国のEV最大手「比亜迪(BYD)」も9月にEV向けプラットフォーム「eプラットフォーム3.0」をリリースしている。小型車から大型車までをカバーしているほか、広温度範囲ヒートポンプシステム、制御装置、初の電気駆動による昇圧急速充電技術、冷媒による駆動用バッテリーの温度管理技術など新しいシステムや技術を盛り込んでいる。これにより、EVの新機能アップデート速度が従来の2カ月から2週間へと短縮された。

従来型の自動車企業と比べ、ハードウエアの製造、サプライチェーンの管理に強みを持つ鴻海だが、ソフトウエア技術の面では突出したものがない。自動車業界のあるアナリストは、鴻海は新エネルギーの分野では強みがないため、サプライチェーンの買収や出資、合弁の方式で工場や人材、設備、技術を獲得する戦略を取っているとの認識を示した。

作者:WeChat公式アカウント「全天候科技(WeChat ID:iawtmt)」
(翻訳:山口幸子)

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