日本拠点で技術優位築く、中国SiCパワー半導体「利普思」が約18億円調達

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日本拠点で技術優位築く、中国SiCパワー半導体「利普思」が約18億円調達

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高性能SiC(シリコンカーバイド)パワーモジュールを製造する「利普思半導体(Leapers Semiconductor)」がシリーズAで約1億元(約18億円)を調達した。出資を主導したのは「徳聯資本(Delian Capital)」で、「沃衍資本(Richland Capital)」「飛図創投(Flyfot Ventures)」も出資に参加した。調達した資金は無錫市と日本にある開発設備への投資などに充てる。

利普思は2019年に設立され、高性能のSiCとIGBT(絶縁ゲート型バイポーラートランジスタ)のパワーモジュールの開発、製造、販売を行う。革新的なパッケージング材料・技術を活かし、新エネルギー車、水素自動車(HV)、光発電などの制御に用いる小型・軽量で高効率なパワーモジュールのソリューションを提供。すでに26件の特許を出願している。

パワーデバイス(電力用半導体)は電力変換のためのコアコンポーネントで、新エネルギー車や鉄道、工業用制御システム、光発電、風力発電などに幅広く用いられる。大手調査会社IHS Markitによると、今年の中国のパワーデバイス市場は159億ドル(約1兆8000億円)に達し、2024年には世界市場が500億ドル(約5兆6700億円)を超える見込みだ。

中国のパワーデバイス市場は世界全体の3分の1を占める規模だが、ハイエンド分野では国産率が極端に低く、ミドルレンジ〜ハイエンドのMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)、IGBT、SiCコンポーネントの90%以上が輸入品に依存している。

理由の一つは、新エネルギー車、風力発電、光発電などの分野で用いられるハイエンド製品は、パワーモジュールの電気設計、放熱性能、信頼性、製造技術などで高い水準が求められ、インフィニオン・テクノロジーズや三菱電機などの世界的大手が早々に技術や優位性を確立していることだ。もう一つは、設計上の問題だ。大出力チップは多くのチップを並列でつなげて大出力化させ、これを一つのモジュールの中に集積させなければならない。特に車載用の場合、国内メーカーの実力では世界水準に遠く及ばない。

利普思のコア製品はSiCとIGBTの両方で展開しており、商用HVや光発電に用いるSiCデバイス、EV用充電スタンドや工業用周波数変換器、商用車に用いるIGBTデバイスはすでに量産化している。SiCは第3世代パワーデバイス材料として性能効率性、信頼性、小型・軽量化などに優れており、主にハイエンド市場でIGBTの代替製品となっている一方、ローエンド市場では両者が共存している状態だ。

同社の共同創業者でCOOの丁烜明氏によると、同社製第3世代パワーデバイスのSiCモジュール技術は国際的に有名なブランドと直接競争できるほどのレベルに達している。とくに同社が採用する銀焼結技術、同社の特許であるチップ表面の直接水冷式接続技術、電気的特性、放熱性能、出力密度はいずれも先発優位となっている。

▲利普思のSiCパワーモジュール製品

利普思が一連の技術的優位を築いた背景には、開発力を備えた人材がある。日本にR&Dセンターを設け、先進的なパッケージングやテスト能力の完備に向け青写真ができあがあっているといい、チップ設計、パッケージング材料・設計、製造技術、モジュールの応用などに関わる数十人の中国人および日本人専門家が在籍している。

創業者でCEOの梁小広氏はこれまでに三菱電機、米半導体大手オン・セミコンダクター、独自動車部品大手ZFフリードリヒスハーフェンなどの大手企業でIGBTおよびSiCパワーデバイス開発に16年以上携わってきた。日本のR&Dセンターの創業メンバーは半導体業界に平均20年以上携わってきた三洋電機、三菱電機、東芝、日立出身者だ。

同社のSiC製品は今年下半期に量産を開始し、来年には車載向けSiCモジュールの量産を開始する。中でも次世代SiC制御装置プラットフォームは、定格電流が同等の他社製モジュールよりも30%以上小型化しており、出力は異なる定格電流に合わせて150kWから400kWまで対応できる。現在の主な顧客は水素燃料バッテリーシステム、EV(商用車・乗用車)、光発電などを手がける企業だという。
(翻訳・愛玉)

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