ソフトバンクG出資のドローン「XAG」、上海科創板に上場へ。農業用でDJIと競合

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ソフトバンクG出資のドローン「XAG」、上海科創板に上場へ。農業用でDJIと競合

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中国農業用ドローン大手「極飛科技(XAG)」の新規株式公開(IPO)申請が11月22日、上海証券取引所のハイテク企業向け市場「科創板(スターマーケット)」で受理された。

極飛科技が農業用ドローンを手掛けてから7年経つが、同事業はいまだ先行投資の段階にある。目論見書によると2017年には通年で689万元(約1億2300万円)の赤字を計上し、20年には損失額が8556万元(約15億2300万円)に膨らんでいる。

それでも資金調達は至って順調だ。今年3月にはシリーズC++で「高瓴創投(GL Ventures)」から3億元(約53億円)以上を調達。これ以前にも5回の資金調達を行い、シリーズC+では12億元(約213億円)を調達している。出資したのは「百度資本(Baidu Capital)」、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2、「創新工場(Sinovation Ventures)」など名だたる投資機構だ。

今回の上場で同社は15億900万元(約270億円)を調達する見込み。資金はデジタル農業のスマート製造拠点プロジェクトや広州研究開発センターの建設、マーケティングやサービスシステムの構築に充てられる。

DJIに真っ向勝負を挑む

民用ドローンでは世界最大手「DJI(大疆創新)」がシェアの大部分を占めているが、極飛科技は農業分野でDJIと対等に渡り合える数少ないドローン企業だ。

農業とは無縁の技術者だった彭斌氏は2007年に極飛科技の前身となる「XAIRCRAFT」を立ち上げた。DJIが消費者向けドローン市場で破竹の勢いを見せていた当時、彭氏は中国国内で農業用ドローンがほぼ注目されていないことに気付いた。極飛科技は2014年、すでに利益を上げていた航空撮影と物流事業を取りやめ、農業用ドローンの研究開発に専念することを決定。翌年4月に同社初となる半自動で作業を行う農業用ドローン「P20」を発売している。

DJIもすぐに農業用ドローンの可能性に気付き、2016年に農業用ドローン「MG-1」を発売。そこから2社の競争が始まり、価格もどんどん下がっていった。

2社ともにきめ細かい管理で生産性を高める「精密農業」に照準を合わせ、トータルソリューションを提供しているが、両社のアプローチは異なっている。DJIのビジネスモデルは一般消費者向け製品の延長線上にある。農薬の散布効果を分析する測定器や、GNSS(衛星測位システム)モバイルステーション、ドローン本体に取り付ける散播システムなどはどれもドローン関連製品であり、飛行場面を想定している。また作業に際して地上から操縦する必要がある。

極飛科技は土地の管理全体に重きを置いている。ドローン以外にも農業用無人車、自動操縦装置、スマートカメラ、農業用気象観測装置、土壌モニタリング装置などをリリース。製品ラインナップはすでに種まきから作物のモニタリングまで各プロセスに及んでいる。DJIとは異なり、極飛科技は全自動化した農業用ソリューションの提供を目指している。エリアを定めルートを設定すれば、ユーザーはスイッチ1つで操作が可能という具合で、これをソリューションとして販売もできる。

将来性に賭けたビジネス

DJIの2020年の売上高は約240億元(約4270億円)で、純利益は64億元(約1140億円)だった。極飛科技の目論見書によると、同社の20年の売上高は5億3000万元(約94億円)だったが、技術開発への投資を続けているため補填されていない赤字額は3年半で2億2400万元(約40億円)にのぼる。

これに関しては極飛科技も、現時点では開発への投資比率が高く、新製品もまだ市場でプロモーション段階にあり、規模の拡大によって利益を上げるところまで来ていないと説明。過去3年間で開発に費やした資金は2億1000万元(約37億円)に達した。2021年上半期だけでも8130万元(約14億4700万円)超を開発に投入しており、売上高研究開発費比率は17.35%に上っている。これはテクノロジー企業の中では高い水準だ。

農業用ドローンは将来性のある市場だ。市場の5年後、10年後を見据えて極飛科技もDJIも多額の投資を行っている。

国家統計局が2017年に発表した「第3回農業センサス」のデータによると、農村における農業従事者のうち、36~54歳が2億5000万人いる一方、35歳以下は約6000万人にすぎない。農村の高齢化や空洞化は今後の農作業がより機械頼みになっていくことを意味する。極飛科技が2019年に発表したデータでは1950年代生まれのユーザーの増加が明らかになっている。

極飛科技は何としてでもこの苦しい時期を乗り越える必要がある。同社も「今後一定期間は利益を上げたり還元することができないかもしれない」と認めている。もし順調に上場できれば、開発や販売により多くの資金を投じることができるだろう。上場できなかったとしても、多くの資本を引き入れることができるかもしれない。農業用ドローンというすぐに目立った結果が出ない業界においては、長い目で見守ってくれる出資者を見つけることは難しい。(翻訳・山口幸子)

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