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中国最大の電気自動車(EV)メーカーBYD(比亜迪汽車)がIGBT4.0技術を発表した。また、半導体材料SiC(シリコンカーバイド)を導入した新たなEVを来年にも発売するという。
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)はパワー半導体素子の一種で、EVの核心技術とされている。その設計は難しくコストも高いため、「EV技術のエベレスト」とも称される。中国市場はこれまで海外大手メーカーの独壇場で、独インフィニオン・テクノロジーズや三菱電機がシェアの90%を占めていた。
BYDは2005年からIGBTの自社開発に取り組んできた。2009年9月には中国電器工業協会電力電子分会のお墨付きを得ている。このほど発表されたIGBT4.0技術は、低損失かつ高機能な温度調整という点で、さらなる進化を果たした。
一方で、SiCへの大規模な投資について、BYD第6事業部・ソーラーエネルギー事業部の陳剛総経理は、「IGBTは長期にわたり需要インフレが続くと見ているが、EVの性能向上に伴い、パワー半導体の性能も現行のIGBTでは追いつかなくなってくる」と説明し、現在開発中のSiC MOSFETを搭載したEVを来年にも発売する目標を掲げた。2023年までには、全製品をSiCに移行する考えも示している。
中信建投証券(CHINA SECURITIES)の調べでは、2017年の中国IGBT市場は約121億元(約1970億円)に達し、世界需要の50%を占めるに至った。また、電子部品流通世界三大大手の一角、フューチャーエレクトロニクスによると、今年になってIGBTモジュールの所要納期は従来の8~12週間から52週間にまで延びている。さらに、2018年からの2022年までの4年間、世界のEV市場は年平均30%成長する見込みであるのに対し、車載用IGBT生産の伸びは15.7%とされており、供給がまったく追いつかない状況だ。
そこでBYDは1億元超(約16億円)を投じてIGBTの生産体制拡大に努めている。今年末には寧波市の工場でIGBTウェハーの月間生産量が5万枚に達する見込みだ。将来的には生産技術を対外的に開放し、他企業での生産も促進する考えだという。
生産能力向上への努力と同時に、同社は世界的強豪とも戦わねばならない。
IGBTの世界市場では、前出のインフィニオン・テクノロジーズや三菱電機を含む数百社が激しくパイを奪い合い合っている。中国企業が同じ土俵で戦うなら、気温や路面状況などさまざまな使用条件に耐えられるように性能を高めながら、さらに使用寿命も伸ばさなければならない。また、価格もクライアントが受け入られる水準に設定しなければならない。同時に、開発資金の回収も考慮しなければならない。
資金の問題は軽視できない。BYDは販売数の増加に反して純損失が続いている。同社の2018年第3四半期の業績報告では、過去3四半期、上場親会社の株主に帰属する当期純損失は1億6500万元(約27億円)で、2015年以来最悪となった。また、売上総利益率は16.43%に留まった。
同社が2023年までに目指すSiCパワー半導体の全面導入は、仮に実現するにしても、さらなるコスト増を招くことになる。
(翻訳・愛玉)
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