リアルタイムで異言語間交流 イヤホン型翻訳機「Timekettle」、40言語に対応

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AIを用いたスマート翻訳機を開発する「Timekettle(時空壺)」が、シリーズAで「国家中小企業発展基金(China SME Development Fund)」から数千万元(数億円)を調達したことがわかった。

Timekettleの最新製品であるイヤホン型翻訳機「WT2 Edge」を装着すると、同時通訳機能により異なる言語を話す人同士でも自然に途切れることなく対話ができるという。

2016年に設立されたTimekettleは、主にスマートデバイスとAI技術をかけ合わせた翻訳機を開発している。AIを用いたスマート翻訳機はすでに数多く存在し、スマートフォンに搭載するアプリのほか、音声AI業界大手「iFLYTEK(科大訊飛)」が次々と翻訳機の新製品を発表している。中でもイヤホン型の翻訳機は、各メーカーがより優れた使用体験を追求して試行錯誤を重ねている。

iFLYTEKは2017年にTWS(完全ワイヤレス)イヤホン型AI翻訳機「莫比斯(Mobius)」を発表し、その後イヤホン型同時通訳機メーカー「Sweetalk」に出資した。中国のIT大手バイドゥ(百度)の「小度(Xiaodu)」、米グーグルの「Pixel Buds」、米Waverly Labsの「Ambassador」なども比較的知られたイヤホン型翻訳製品だ。

「異なる言語の話者間で完全に自然でスムーズな対話体験を求めるなら、現状ではTimekettleのWT2 Edgeが最先端だ」。Timekettleを創業した田力氏はそう述べた。

同社のWT2 Edgeは話者双方の発言をリアルタイムで翻訳する。一方の発言が終わるのを待ち、それから翻訳し、次にもう一方が発言するという順序の制限を取っ払った。話しながら聞く、議論の最中に割って入る、適切なタイミングで発言を補足するなど、自然な対話ではよくあるアクションがとれるため、対話が高度でスムーズになった。

イヤホン型スマート翻訳機は機器の設計、雑音低減のソリューション、通信伝送ソリューションに加え、音声認識、翻訳性能などさまざまな要素を兼ね備えている必要がある。消費者向け電子製品としては複雑性が高い部類に入る。Timekettleは主に機器本体、雑音低減ソリューション、通信ソリューション、AIエンジンのマッチング機能で構成された、対話体験のフロントエンドに関するソリューションを手がける。バックエンドに当たる音声認識や翻訳などの処理能力は、主に各国のサードパーティー企業が提供するAIエンジンと提携。優れたマッチングを通じ、同分野最先端のAIインフラを支柱として高精度の翻訳を確実なものにする。

バックエンドで行われるAIエンジンのマッチングにも多くの開発業務が伴う。 それぞれのAIエンジンに異なるロジックが存在するため、開発者はそれぞれのAIエンジンの構成を理解し、個別に開発とバグ修正を行い、マッチングが完了してからソフトウェア側での翻訳につなぐ必要があるのだ。さらに、ユーザーの現在地に応じて最適なサーバーを割り当てる必要があり、その過程でユーザーの位置特定やサーバーとの大量のコマンドのやりとりが生じる。

WT2 Edgeは現在、40の言語と93種類のアクセントに対応した双方向翻訳が可能だ。2人の対話では同時翻訳が可能なほか、最大6人の会話で二言語双方向翻訳に対応する。複数の人物が入り乱れて発言する場合、より高度な雑音低減技術が求められるため、多人数対話の翻訳は、現段階では話者が1人ずつ順番に発言する方式のみに対応する。今後、エッジコンピューティングが発達してローカルでの処理能力が徐々に高まれば、会議の参加人数を大幅に増やせるようになる。

Timekettle製品の販売は約9割が海外で、米アマゾンではイヤホン型翻訳機カテゴリーでランキング1位となっている。販売規模の拡大に伴ってより多くのユーザーからのフィードバックを得るようになり、一般的な旅行やビジネス用途にとどまらない、より細分化された利用シーンが見えてきている。

米国で比較的多いTimekettle製品の利用例は、英語圏以外からの移民患者の診察など医療サービスでの活用だ。今後はシーン別に製品開発を進め、さまざまな業界の顧客と提携する計画だという。イヤホンの同時翻訳機能を使い、子供の英会話トレーニングに付き添う保護者も多いことから、英語教育アプリ「流利説(Liulishuo)」とも戦略提携した。

創業者の田力氏は「我々が最終的に目指しているのは、スムーズで完全にナチュラルな異言語間交流だ。イヤホンは現段階での媒介役の一つに過ぎない」と述べた。つまり、ハードウェア、ソフトウェアを含めた組織システム全体で体験をアップデート、あるいは再構築し続けていくということだ。

今回、Timekettleに出資した国家中小企業発展基金を管理する「東方富海投資基金(Oriental Fortune Capital)」のパートナー黄国強氏は、「グローバル化が進む現在、通訳サービス市場は100億ドル(約1兆1600億円)規模に達している。これまでの翻訳機は海外旅行などの限られたシーンで利用されてきたが、Timekettleの製品はより利用頻度の高い需要に全面的に対応できる。翻訳機の出荷数はコロナ禍で急減しているが、Timekettleは逆に出荷数を伸ばしている。将来的には国や言語を超え、コミュニケーションのバリアフリー化を実現するインフラとなる期待も大いに持てる」と評価している。
(翻訳・愛玉)

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