AIで営業マンの会話スキルを向上、SaaSで提供 中国「循環智能」が44億円を調達

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人工知能(AI)を活用した企業向けサービスを提供する「循環智能(Recurrent AI)」がこのほど、3800万ドル(約44億円)の資金調達に成功した。「博裕投資(Boyu Capital)」とセコイア・キャピタル・チャイナが出資を主導し、既存株主の「金沙江創投(GSR Ventures)」「靖亜資本(Eminence Ventures)」「真格基金(Zhen Fund)」「万物資本(Zoo Capital)」などが出資に加わった。

この30年でデータベース、ERP(統合基幹業務システム)、CRM(顧客関係管理)、HCM(人的資本管理)など企業向けソフトウエアが普及し、人事や財務、マーケティングなど多くの業務において情報化やデジタル化が進んできたが、企業が抱えるデータはすでに専任スタッフの手に負えないほどの量に膨れ上がっている。AI技術を導入することで「人が情報を探す」方式から「必要な情報をプッシュ配信する」方式へと転換し、スタッフの的確な判断をサポートすることができる。また自然言語処理やディープラーニング技術などが飛躍的な発展を遂げてきたことにより、顧客獲得におけるAI活用の機会が開けてきた。

2016年に設立された循環智能はこの分野に特化して、AIを活用したセールスコミュニケーションのデジタル化を推し進めている。

循環智能は、オンライン・オフラインを問わず多数のスタッフを通じて顧客にアプローチしている企業に対し、コミュニケーションプロセスを透明化することで、最前線スタッフの効率向上や事業成長を実現できるよう支援している。銀行や保険、不動産、自動車などに従事する企業100社ほどが同社のサービスを利用しており、中国工商銀行(ICBC)、中国人民財産保険(PICC)、上海汽車(SAIC Motor)、中国東方航空(China Eastern Airlines)など業界大手が多数含まれている。ソリューションはSaaS形式で提供され、客単価は30~500万元(約550~9100万円)と幅広い。

同社はさまざまな業種で営業成績向上の実践事例や販売分析モデル、優れたコミュニケーション素材などを蓄積してきた。現在1日に億単位の会話を処理し、業種ごとの業務プロセスに対応したAIデータモデルを累計で1万件以上作成している。

企業に提供するソリューションはオムニチャネルのコミュニケーションデータ収集から録音・文字起こし、コンテンツマイニング、自然言語処理を活用したセマンティックモデリング、会話分析、コミュニケーションアシストまでをトータルにカバーしている。

循環智能は異なる業種のシナリオに対し、AI・ソフトウエア・ハードウエア・コンテンツを統合したソリューションを提供するというビジネスモデルを採用。ソフトウエアとサービスを組み合わせた従来のモデルに比べ、顧客企業の実際の業務シナリオやニーズに十分合致させることができ、事業成長に貢献できる。例えば「コンテンツ」の分野では会話マイニングエンジンを独自開発した。これは絶えず生成される膨大な会話の中から、実際に使用されている業務知識やコミュニケーションスキルを見つけ出し、さまざまな製品に対応した実用的な会話ナレッジベースの構築と更新を行うというもの。さらに金融、自動車、不動産などのオフライン業務に対し、コンプライアンス要件を満たしたエンドツーエンドのデータ収集・分析ソリューションを提供することで、契約に関わるトラブルを減らし、消費者の権益保護や顧客ニーズ分析を行えるようサポートする。

同社の中心的な技術チームは主に清華大学や米カーネギー・メロン大学などの出身者で、AIやディープラーニングの分野で確かな実力を備えている。主要事業チームのメンバーも過去にGoogleやFacebook(現Meta)、マイクロソフト、IBM、シスコなど世界的な大企業に在籍した経歴を持つほか、カスタマーサクセスと事業管理チームのメンバー70%以上が金融、不動産、自動車などの業界経験者だ。
(翻訳・畠中裕子)

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