EVから電力網に給電、双方向充電システムの実用化進む。低温に強い工夫も

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EVから電力網に給電、双方向充電システムの実用化進む。低温に強い工夫も

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電気自動車(EV)をエネルギー供給のインフラとして活用する「V2G(Vehicle to Grid)」の研究と実用化が進んでいる。中国でV2Gシステムの開発と普及に注力する「北京鏈宇科技(LINK-U TECH)」は、2021年に清華大学欧陽明高教授の研究チームから生まれた企業だ。同社はバッテリーの双方向アクティブ制御アルゴリズムと双方向パワーエレクトロニクス設備を中心に、全天候型の双方向充放電データを大量に蓄積してきた。低温環境におけるバッテリーの加温やマイクログリッドシステム、V2Gなどのシーンに応じて、アルゴリズム・部品・設備・プラットフォームを組み合わせたフルスタックソリューションを提供している。

V2GはEVを「移動エネルギーの貯蔵ユニット」とみなし、双方向充電スタンドを通じてEVに蓄えた電力を電力網に供給することでエネルギー需給の調整を支えるというもの。EVを移動手段としてだけではなく、電力供給システムに接続して電力需要のピークシフト、周波数制御、電力取引、停電時の救援など多方面にわたる補助的サービスに活用するという考え方だ。

中国では2019年に国家能源(エネルギー)局、国家発展改革委員会、科学技術部、工業情報化部が策定した行動計画の中で、充電設備と電力網の相互運用に関する研究を進め、エネルギー貯蔵関連のインフラを整備して、新エネルギー自動車バッテリーへの応用基盤を構築することが明示されている。2021年12月31日には国家標準化管理委員会が、EV充電におけるプロトコルの国家基準の改訂を発表した。これにより政府がV2G技術の普及に向けて政策面でも強力にバックアップしていることがいっそう明らかになった。

V2Gのアクセスポイントとなるのは、EVへの充電に加えEVからの給電も可能な双方向充電システムだ。鏈宇科技では30kW、60kW、150kWなどさまざまな出力レベルの双方向充電設備を自社開発した。

創業者の秦宇迪CEOによると、同社の双方向充電システムは動的応答性に優れ、コストが低いという強みがあり、フルパワー充電からフルパワー給電への切り替えに要する時間はわずか数ミリ秒。最終的な製品コストも、市販されている単一方向の充電ステーションに比べてたった20%程度しか高くならないという。

同社は負荷調整のニーズに素早く対応し、周波数や電圧の変動を抑制するV2Gスマート調整プラットフォームも構築した。中核となるのは電力市場と車両の状況を結び合わせ、プラットフォーム運営者とEVユーザーの利益を確保することだ。

鏈宇科技のV2Gスマート調整プラットフォーム

このほか鏈宇科技はパルス加温式双方向充電システム、モーター制御と加温機能を統合したスマートコントローラーも開発した。パルス加温式双方向充電システムは主に全天候型の充電ステーションに活用される。公営駐車場や高速道路のガソリンスタンド、サービスエリアなど公共の充電エリアに設置され、冬の低温環境でもEVの高速充電や航続距離の向上を可能にする。

加温スマートコントローラーはEV本体の三電(バッテリー、モーター、電気制御)システムに搭載される。清華大学欧陽明高教授のチームが開発した新型の電気回路構成を採用し、車両の熱管理と組み合わせることで、低温環境下にあるバッテリーの温度を1分間に最高8度上昇させることが可能。

鏈宇科技のパルス加温式双方向充電システムはすでに実用化が始まっている。同社は業界で初となる全天候型充電システムの開発に成功し、実車テストも完了した。同システムはハイパワーの急速充電、低温時のパルス充電、V2Gの三大機能を集約したもので、バッテリー温度を5分でマイナス20度から10度に上昇させる。すでに華北地域の電力ピークシフトをサポートするために活用されている。秦CEOは、この先EVの電力取引や低温環境向けサービスのマーケットが鏈宇科技の主な収益源になると語った。

同社は2021年5月にエンジェルラウンドで「真格基金(Zhen Fund)」から1000万元(約1億8000万円)規模の資金を調達している。
(翻訳・畠中裕子)

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