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人気動画投稿アプリTikTokがグローバル市場で展開中のEC事業について、2021年のGMV(流通総額)が最高で約60億元(約1100億円)に上ることが複数の情報筋の話で明らかになった。地域別の比率では7割以上がインドネシア、残りの3割弱が英国となっている。2022年のGMV目標は21年のほぼ倍となる約120億元(約2200億円)を掲げているという。
これらの情報についてTikTokの運営元バイトダンス(字節跳動)に問い合わせたが、原稿執筆時点で回答は得られていない。
一方、TikTok中国版・抖音(Douyin)の国内EC事業では、サービスを開始した2020年にGMV約5000億元(約9兆1500億円)を記録した。21年はさらに増加して1兆元(約18兆3000億円)とも言われている。
同じ初年度の業績でも、海外市場のGMVは国内GMVのわずか1%に過ぎない。しかもその大部分をインドネシア市場が占めている。英国を筆頭にした欧米市場は成長の見込みがあり、バイトダンスが重視している市場にも関わらず目立った業績につながらなかった。
TikTokアプリは2021年4月にインドネシアと英国で試験的にEC機能「TikTok Shop」やライブコマース機能を追加して運用を始めた。事情に詳しい人物は、GMVの7割以上はインドネシアが占めており、英国の1日のGMVは中国の中規模ライブコマース程度でしかないという事業責任者の言葉を伝えている。組織内部ではインドネシアはある程度成功しているとの見方で、さらなる投資を予定しているという。
インドネシアでの目覚ましい成果は、現地のEC市場が成熟し、十分な規模に達していることによるところが大きい。研究機関Momentum Worksのデータによると、インドネシアのEC売上高は2020年に322億ドル(約3兆7200億円)に達し、中国、韓国、英国に続く世界第4位、東南アジア地区で最大のEC市場となっている。しかもEC売上高は同年の小売業販売額全体のわずか20%を占めるに過ぎない。米アプリ調査会社SensorTowerによると、インドネシアでのTikTokダウンロード数は約2億回で、東南アジア全体の4割以上を占めるという。またインドネシアはモバイル決済や物流、インターネットなどEC関連のインフラが整っていることも特徴だ。
中国のEC事業者も早い時期から東南アジア市場に進出してきた。アリババ傘下の「Lazada」とテンセントが支援する「Shopee」が東南アジア二大ECプラットフォームとなって市場を形成してきたこともあり、インドネシアでもオンラインショッピングの習慣が徐々に浸透していったのだ。
一方英国では、これまで進出してきた中国のEC事業者はなく、ライブコマースという方式が地元ユーザーに浸透するにはまだ時間がかかると思われる。物流面でも、英国ではアマゾンなどの大手ECプラットフォームが当日配送や翌日配送を実施しているが、TikTokが利用する物流サービスだと商品到着までに1週間以上かかるうえ、破損や紛失も時折発生するという。
TikTokのEC事業は今後5年以内に主要な市場への参入を計画している。東南アジアの市場規模が限られるだけに、目標達成のためには欧米市場での成功が欠かせない。今年3月以降、TikTokはインドネシアと英国を中心として、さらに東南アジアや西欧諸国でもEC事業を展開するという。
物流に関しては、バイトダンスがインドネシア宅配最大手「J&T Express」と提携を協議しているとのうわさも流れたが、バイトダンス側はこれを否定している。とはいえ、東南アジア市場でShopeeやLazadaに戦いを挑むにしても、欧米市場でアマゾンと競合するにしても、既存の物流能力ではライバルとの長期戦を戦い抜くことはできない。総合的な実力のある物流企業との協業が不可欠なのは間違いないだろう。
(翻訳・畠中裕子)
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