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オンラインのフィットネスサービス「Keep」が2月25日、香港証券取引所にIPO(新規株式公開)を申請した。スポンサーはゴールドマン・サックスとCICC(中国国際金融)。中国大手コンサル灼識諮詢(China Insights Consultancy)のレポートによると、Keepは2021年の月間アクティブユーザー数やユーザーのトレーニング回数から計算して中国および世界で最大のオンラインフィットネスプラットフォームだ。
Keepは2014年に設立され、これまでに9回の資金調達を実施してきた。出資者はソフトバンク・ビジョン・ファンド、高瓴資本(Hillhouse Capital)、紀源資本(GGV Capital)、テンセントなどだ。20年12月に実施したシリーズFでは過去最高額となる3億5500万ドル(約410億円)を調達した。業界内でも最高額を記録した案件で、当時の報道ではKeepの評価額は20億ドル(約2300億円)に達した。
目論見書によると、Keepの持ち株比率は創業者でCEOの王寧氏が18.61%、紀源資本が16.14%、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが10.39%となっている。
コロナ禍で在宅勤務や家で過ごす時間が増えたことで、Keepは追い風を受けた。21年第1〜第3四半期の売上高は前年同期比41.3%増の12億元(約220億円)。20年の売上高は11億元(約200億円)で、19年の6億6000万元(約120億円)から66.9%伸びている。
Keepの主なユーザーは若者、とくに一〜二級都市在住者のフィットネス愛好者だ。目論見書によると21年の月間アクティブユーザーは3440万人で、そのうち74.1%が30歳以下。一級都市・新一級都市・二級都市在住のユーザーが全体の52.2%を占める。
Keepが最初に目指した上場先は香港市場ではなく、21年5月には米国市場に上場して5億ドル(約580億円)の調達を目指すと報じられた。その後、米国への上場は断念したという。
今回の上場の可否も不透明だ。Keepは依然として赤字状態にある。同社の調整後純損失は19年は3億6600万元(約67億円)、20年は1億600万元(約19億円)、21年第1〜第3四半期は6億9600万元(約127億円)だった。
これに対し、Keepは「より多くのユーザーを獲得し、入会後の積極利用や定着をうながす戦略として、顧客獲得やブランドPRに関する支出を増やしている」と説明する。
やや通俗的な言い方をすれば、資金力を使ってユーザーの活性化を図るということだ。インターネット業界では成功法則とされる手法であり、実際Keepにとっても効果があったようだ。月額会員は20年は平均190万人だったが、21年には330万人と73.7%増えている。とはいえ、これは急激に膨らむ損失を代償としており、21年第1〜第3四半期の売上高が前年同期比41.3%だったことと比較しても突出した成果とはいえない。
Keepの収益源は主に三つで、売り上げへの貢献度順に、プライベートブランド商品(フィットネス機器やウェア、食品など)、会員費と有料コンテンツ、広告とその他のサービスだ。目論見書によると、三つの事業の20年の売上高全体に占める割合はそれぞれ57.5%、30.5%、12%だった。
各事業についてはこの1年、比較的良好だ。21年第1〜第3四半期のプライベートブランド商品事業の売上高は前年同期比33.6%、会員費と有料オンラインコンテンツ事業は52.5%伸びている。
しかし、こうした収益力の成長も売上高総利益率を代償としたものだ。
目論見書によると、21年第1〜第3四半期はプロモーション費用が大幅に増えたことで、プライベートブランド商品の売上高総利益率は20年第1〜第3四半期の38.6%から29.3%に低下。同時期の会員費と有料オンラインコンテンツの売上高総利益率は、期初の66.3%から58.8%に低下している。
売上高総利益率がこのまま維持できるかは不透明だ。Keepの2021年第1〜第3四半期の会員浸透率は9.5%で停滞期に近づきつつあるとみられ、米国でオンラインフィットネスへの入会率が21年に10.7%だったとの灼識諮詢の調査結果ともほぼ肩を並べている。
コロナ禍でフィットネス利用の場は屋外から室内に移り、Keepにも多くの会員が入会した。Keepは売上高総利益率を犠牲にしてさらに浸透率を高めようとしているが、コロナ禍が収束傾向に向かえば室内でできることは必須条件ではなくなり、ユーザーの急増にも歯止めがかかる可能性がある。
(翻訳・山下にか)
※アイキャッチはKeepアプリより
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