ホットなスマートロック業界、陰の立役者は「曼申(Mansion)」

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中国では今、スマートロック市場の競争が激化している。伝統的な施錠具ブランド、家電メーカー、ネット企業、セキュリティメーカー、電子通信大手、スマートインテリアブランドなどが次々と参入して、市場シェア獲得に躍起となっている。

この熾烈な競争の背後にいるのが「曼申(Mansion)」だ。曼申は14年もの業歴を持ちながら、自社ブランドの構築よりも「360」や「レノボ(聯想集団)」、「網易厳選(NetEase Yanxuan)」などに研究開発や製造のノウハウ、サービスを提供する道を選んだ。そして、2018年に3月に「達晨創投(Fortune Venture Capital)」からシリーズ Pre-Aで数千万元(数億円)を調達した。

曼申の前身は2004年に「湘火炬汽車集団」が投資した「湘火炬安防公司」。ここから「曼申」ブランドが産声を上げた。設立目的は自動車のドアロック製造だったが、リサーチの結果、中国では玄関ドアのスマートロックに大きな商機があると同社は判断した。

曼申CEOの張宝強氏は「家があれば玄関があり、玄関があれば鍵が必要だ。しかも当時の中国では不動産業が急速に発展していた」と語る。

ドアロックは「ロックパネル」、「錠本体」、「シリンダー」という三つの部分から成り立っている。中でもシリンダーは難易度が高い精密部品で、当時国内で優れたメーカーはごく少数だった。そこで曼申はシリンダーに照準を定めて研究開発し、2005年に「超B級(編注:国家基準で最も開錠が難しいとされるのがB級。超B級はそのB級を超えるという意味)」と謳った、非常に安全性が高いシリンダーを発売した。そして生産ラインを立ち上げ、「防犯ドア」メーカーに供給。同時に海外販売にも乗り出した。

2008年、曼申は当時徐々に広がり始めたIoTをチャンスととらえ、スマートインテリア研究開発センターを設立した。

しかし当時は技術やコストなどの問題があり、スマートインテリア産業はすぐには拡大しなかった。曼申が投じた1億元(約16億円)にものぼる試みは商業的には失敗したが、その後の発展に重要な意味を持つことになる。

2011年、張氏は自ら設立した「慧晶智能(HUI・JING INTELLIGENT)」に曼申ブランドを移転。ハードウェアのスマート化の流れの中で、曼申は2013年にドアののぞき穴とドアロックを連動させたスマート防犯ドアを発売。会社の予想を上回る年間数千万元(数億円)を売り上げた。これを機に、スマートインテリアでは製品を一つに絞って勝負するしかないと考え、他の製品を取りやめてスマートドアロックに専念することにした。

しかし、曼申はまたも戦略を転換することになる。そのきっかけとなったのが「ofo」である。

2016年、シェア自転車が広まり、業界大手ofoが自転車のスマートロックシステムのパートナーに曼申を選んだ。シェア自転車市場は爆発的に拡大し、ofoが曼申に一ヶ月に発注する数量も数万件から数十万件になり、ついには百万件を超えるようになった。

「当時、我々はシェア自転車は得難いチャンスだと判断した。生産能力や品質管理などをレベルアップでき、急速にサプライチェーンなどの経営資源も開拓できると考えた」と張氏は語る。

そこで曼申は一時的に自転車のスマートロック事業に重点を置くことにした。ところが、シェア自転車ブームは沈静化。2017年、張氏は再びスマートドアロックに力を入れようとしたが、すでに他社が参入しており、戦う場所が限られていることに気づく。

このまま自社ブランドにこだわるのは得策ではないと判断。むしろ長年にわたって蓄積してきたスマートロックの技術や100万単位の生産ノウハウを強みに、パートナー企業と協業する方向に舵を切った。

このようにして、曼申は競争の表舞台から姿を消した。

2018年、曼申は「中国スマートロック産業プラットフォーム(CSLP)」を設立、広東省中山市に生産拠点を設けた。第一期の面積は3.5万平米にも及ぶ。

設立からわずか一年だが、CSLPはすでに多くのクライアントと協業している。オリジナルのスマートロックブランドを持つ360、レノボ、網易厳選や、「中国移動(チャイナモバイル)」や「中国電信(チャイナテレコム)」などIoTのサービスプロバイダ、不動産業大手の「万科(vanke)」、「碧桂園(Country Garden)」など、協業相手が業界の垣根を超えているのが特徴だ。「自如(ziroom)」、「TATA木門(TATA)」などの同業者やイスラエル、オランダ、日本のマンションデベロッパーなど海外の顧客もいる。

2018年10月、360は699元(約1万1千円)の「M1スマートドアロック」を発売した。価格を1000元以内に抑えたことで業界を震撼させたが、この製品の研究開発、製造を手掛けたのが曼申である。

張氏によると、曼申の中山工場は18年8月から操業を始め、第4四半期には一ヶ月当たりの生産能力が10万セットを突破し、2019年の年間生産量は200万セットを突破する見込みだという。

張氏は、2019年はスマートロック市場の業界再編の一年になると考えている。スマートロックのブランドやメーカーは現在の3000超から100前後にまで激減するというのだ。今後3年から5年の間に業界の勢力図が決まり、残った数社がメインブランドになると張氏はみる。
(翻訳:山口幸子)

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