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AIを用いてタンパク質設計を行うプラットフォーム「分子之心(MoleculeMind)」がエンジェルラウンドで数千万ドル(数十億円)を調達した。出資を主導したのはセコイア・キャピタル・チャイナで、IT大手バイドゥ(百度)傘下の百度風投(Baidu Ventures)なども出資に参加した。調達した資金は組織拡大やAIプラットフォームのさらなる改良、研究成果の製品化に充てられる。
分子之心は米シカゴの豊田工業大学シカゴ校(TTIC)教授、北京大学生物医学パイオニアイノベーションセンター(BIOPIC)客員教授を務め、長年にわたり「タンパク質折りたたみ」の研究に従事してきた許錦波氏が設立した。同氏が2016年に開発に成功したタンパク質構造予測法「RaptorX-Contact」は、AIの深層学習でタンパク質構造予測の精度を大幅に向上させられることを初めて証明したものだ。この手法を米Alphabet傘下の英DeepMindが応用し、20年に画期的なタンパク質構造予測プログラム「AlphaFold2」が開発された。
同社は許教授の研究成果をベースに、AIを用いたタンパク質構造予測やタンパク質設計を研究・開発する。AIを活用した高分子構造最適化・設計プラットフォーム「MoleculeOS」を独自開発し、データ駆動型の深層学習法でタンパク質の識別・生成を支援して、実験室での研究成果を大規模に産業へ応用させている。同プラットフォームはペプチド、抗体、酵素、小タンパク質の研究・設計に利用できるほか、高分子医薬品の開発を予測可能かつプログラム可能なものにし、新薬開発の全過程を効率化する。さらに化学、材料、工業、農業などの分野でもタンパク質の最適化や設計に応用できる。
「分子之心のプラットフォームはハイスループット(高情報量)の湿式・乾式一体型計算エンジンを搭載し、タンパク質の構造や特性の予測、ポリペプチドやタンパク質最適化を実行する能力を有し、将来的には新薬開発やタンパク質間相互作用予測などでも価値を発揮すると考えている」。許教授によると、近い将来、同社のプラットフォームでは自然界に存在しないタンパク質や新たな抗体を設計できるようになるという。
分子之心はこのAIプラットフォームを基礎として、特殊エピトープ(抗原決定基)モノクローナル抗体医薬品、小タンパク質医薬品、ダブルエピトープ抗体医薬品の研究を実施しており、国立の生命科学研究所や医学研究所と提携して研究成果の実用化を進めている。
AIを用いた高分子最適化・設計プラットフォームは、バイオ医薬品の開発以外にバイオマス燃料の生産やエネルギー・環境問題の解決などを含む合成生物学や産業用酵素の開発などに活用されている。
タンパク質研究ではAIはまだ補助的な役割にとどまるが、学術界や産業界が共に尽力することで将来的にはイノベーションの重要な推進力となる可能性がある。深層学習がタンパク質構造予測の進歩に貢献することは明らかで、大部分のタンパク質の立体構造を正確に予測できるようになるというのが学術界と産業界の共通認識だ。
タンパク質は自然界がもたらした最も偉大な道具であると許教授は考える。タンパク質医薬品やその関連製品は疾病の治療や社会的生産力の発展に想像を超える可能性をもたらす。分子之心はAIの力を借りて同分野をさらに追究し、中国の生物計算学を世界一流のものにし、研究成果の産業応用を推進していきたいとしている。
(翻訳・山下にか)
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