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TikTokを運営するバイトダンス(字節跳動)が、TikTok中国版「抖音(Douyin)」を通じて密かにデジタルファッション業界に参入する。新ブランド「沸寂(pheagee)」を打ち出し、全額出資子会社「沸寂科技(FEIJIKEJI)」が業務を担当するという。同社の代表はバイトダンスのVR事業「PICO」の責任者である任利峰氏が務める。36Kr傘下メディア「Tech星球」が報じた。
沸寂は全く新しいデジタルファッションのコミュニティで、テクノロジーとヒトを取り込み、ファッション業界の新たな市場を作り出すものだ。関係者によると、沸寂はバーチャルファッションやバーチャルヒューマンを手がけ、抖音傘下のEC事業「抖音電商(Douyin Dianshang)」やPICOと連携して継続的にデジタルファッションを生み出すプラットフォームになるという。
Tech星球がバイトダンスに確認したところ、沸寂はファッションデザイナーがオンラインで創作活動をするためのプラットフォームであり、現在は手探りの段階にあるとの回答だった。
マーケットを取り巻く状況からは、デジタルファッションは今後大きく発展することが見込まれ、バイトダンスの参入は単なる思い付きではない。
世界展開するファッションECプラットフォーム「Lyst」と、デジタルファッションの専門家集団「The Fabricant」が2021年3月に共同で公表した「The Digital Fashion Report」によると、世界のデジタルファッション利用者は約35億人、購買力を持つ人全体の55%を占めるという。中国市場はいずれ1000億元(約2兆円)に拡大するとの分析もあり、このような新興市場をバイトダンスが見逃すはずはない。
バイトダンスのデジタルファッション事業はまだ模索中とはいえ、基本となる産業チェーンのイメージはすでに出来上がっているようだ。プロダクト供給源となる沸寂のほかに、関連する技術や応用シナリオでも動きがある。
デジタルファッションには、メタバースと深い関係を持つVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)といった先端技術「XR(クロスリアリティ)」が欠かせない。昨年バイトダンスは巨費を投じてPICOを買収しており、デジタルファッションを技術面で支える存在を確保した。
また、PICOの買収後、バイトダンスはXRの研究に力を入れており、セキュリティカメラ大手の「ハイクビジョン(海康威視)」などAI関連企業から技術スタッフを集めた。こうした技術を結集すれば、現実の人間がARなどを通じてより現実に近い方法でデジタルファッションを身に着けられるようになるだろう。
注目すべきは、バイトダンスのデジタルファッション事業は沸寂科技が担当し、同社の代表である任利峰氏はPICOの責任者でもあるということだ。デジタルファッション事業とPICOには何らかの関係があることは間違いないとみられている。
バーチャルヒューマンやバーチャルアイドルも、デジタルファッションには欠かせない。バーチャルヒューマンが特定のファッションをはやらせるのは難しいことではなく、デジタルファッション界のトップインフルエンサー(KOL)になれる。バイトダンスはこの数年でバーチャルヒューマン「李未可」やバーチャル女性アイドルグループ「A-SOUL」に投資するなど着々と準備を進めている。
消費の面では、バイトダンスはデジタルファッションとECとの連携に力を入れており、抖音電商はバーチャルファッション関連チームを準備している。ECはデジタルファッション消費の重要な窓口だ。ARを使えばかなりリアルな試着を体験でき、ユーザーはオンライン上でバーチャルのコーディネートを確認できるので効率よく買い物ができる。
デジタルファッションの最終的な応用シーンはもちろんバーチャルな世界だ。技術が成長してインターネットがメタバースへと展開すれば、ユーザー一人ひとりがバーチャルな世界で特定のキャラクターを演じることになる。こうしたキャラクターはバーチャルファッションの消費と密接に関わっており、まぎれもなく巨大な消費シーンとなる。
デジタルファッションはバイトダンスのECやバーチャルヒューマンなどの事業と親和性が強く、バイトダンスのエコシステムを補完して、さらに大きな消費環境を生み出す。
デジタルファッションがどのようなかたちになるのか、数億のユーザーにどう消費させるのか。バイトダンスはまだ模索中で、今後の展望も不透明だ。
バイトダンスはショート動画プラットフォームを突破口に一気に躍進すると、中国のインターネット企業の上位グループに割って入った。デジタルファッション事業では次の時代へ向かう切符を手にすることはできるのだろうか。
(翻訳・36Kr編集部)
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