中国最大のショートムービープラットフォーム「抖音(Douyin)」が展開するEC事業、日本に越境ECチーム設立の背景

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新しい生活様式下のステイホームでライブコマースが爆発的な成長を遂げ、ショート動画とECを融合するビジネスモデルが中国で台風の目になっている。中国最大のショートムービープラットフォーム「抖音(Douyin)」は、2020年にEC事業「抖音電商(Douyin EC)」を正式に開始した。DAU(日間アクティブユーザー)6億<※1>ユーザーを抱える抖音(Douyin)のECビジネスは、中国EC業界に変革をもたらす存在として注目を集めている。

その抖音電商(Douyin EC)がこのほど、越境ECビジネスの強化に向け日本に専門チームを設立した。「抖音電商全球購(Douyin EC Global)」の責任者Todd Lin氏と、日本事業の責任者である黄益氏に、抖音電商(Douyin EC)の強みや日本ブランドと組むことで期待できるシナジーを聞いた。

動画の視聴履歴から興味持ちそうな商品をお勧め

ーー抖音(Douyin)はどのようなプラットフォームでしょうか。

Lin:抖音(Douyin)は、1分弱の動画の投稿・配信アプリで、DAUが6億人に達し、人々の生活になくてはならない国民的なプラットフォームになっています。特にZ世代(1990年代半ば以降に生まれた世代)には影響力が大きいです。

そして、ショート動画の視聴だけではなく、たくさんのユーザーが抖音(Douyin)で最新の情報を検索しています。抖音(Douyin)の検索利用MAU(月間アクティブユーザー)は5.5億<※2>を超えおり、人々の重要な情報源になっています。

ーーショート動画プラットフォームの企業がECを手掛けるメリットは何でしょうか。

Lin:抖音(Douyin)は高度なレコメンドシステムでユーザーの視聴履歴を分析し、好みに合わせたコンテンツを配信することに強みがあり、ユーザーにとってはアプリを開くだけで見たいものが見れる点が、粘着性の高さにつながっています。

このレコメンド技術をECに応用し、ショートムービーの視聴傾向からユーザーの潜在ニーズを分析しブランドや商品をお勧めできます。検索して商品を探す従来型ECよりもブランドのメッセージも伝わりやすくなります。

また、商品をお勧めしてくれるクリエイターを数多く抱えているのも強みです。抖音(Douyin)でコンテンツを配信していた人気クリエイターの多くが、抖音電商(Douyin EC)と提携しました。2021全年、Eコマースでマネタイズしたインフルエンサーは260万名を超えました。2021年8月、Eコマースに参画したインフルエンサーの収入が前年比3.3倍となりました。

消費者多様化でSNSとECもクロス活用の時代

ーーIT産業の中ではECの歴史は比較的長く、中国でもアリババやJD.comが圧倒的な基盤を築いています。一方で、地方の中高年消費者に特化した拼多多(Pingduoduo)が急成長しているように、まだ開拓すべき市場が残っているとも見られています。抖音電商(Douyin EC)はどんな特徴を持っていますか?

Lin:中国人消費者のニーズは多様化しており、ブランド側も複数のプラットフォームやSNSを活用し、消費者にアプローチする時代に入っています。

抖音電商(Douyin EC)は単なるECプラットフォームでなく、SNSコンテンツマーケティングを展開するプラットフォームでもあります。店舗アカウントから動画を配信したりライブ配信を行い、消費者とのコミュニケーションを深めることができます。抖音(Douyin)はブランドのターゲット消費者にマッチするユーザーにコンテンツをプッシュし、認知向上を支援します。インフルエンサーとの連携や“刺さる”コンテンツの配信によって、バズを生み出し短期間でトレンドをつくることも可能です。

従来のECプラットフォームは検索して欲しいものを探しますが、抖音電商(Douyin EC)は商品に興味を持ちそうなユーザーを探してお勧めします。つまり、「人が商品を探す」従来型ECに対し、抖音電商(Douyin EC)は「商品が人を探す」のです。私たちはこの「興味EC」と呼ぶスキームによって、ブランドの新規顧客獲得を支援します。

ーーショート動画をフックにECに誘導することで、ユーザーの好みがより正確に把握できそうですね。

Lin:ブランディングと販売を異なるチャンネルで展開している場合、広告リソース投下の効果について定量評価が難しい場合が多いですし、広告を見た消費者が、ECプラットフォームで改めて検索する際に離脱が発生してしまいます。

抖音電商(Douyin EC)はソーシャルメディアとECを一つのエコシステムで完結させることで、コンテンツマーケティングのデータとEC運営のデータをクロスさせ、各施策の相乗効果を図ることができます。

また、ブランドのアカウントのフォロワーに対して、絶えずコンテンツやライブコマースを配信することができるため、顧客維持コストの引き下げと、購入頻度の向上を両立できます。

日本のコンテンツと親和性が高いショートムービー

ーー抖音電商全球購(Douyin EC Global)にとって日本は海外初の拠点ですが、なぜ日本なのでしょうか。

黄:日本のブランドと商品は中国消費者に人気が高く、中国向け越境ECにおいては最も大きなマーケットシェアを持つ原産国となります。また、商品(モノ)だけではなく、日本のカルチャーやコンテンツに対するニーズと共感が非常に高く、ショート動画とライブ配信を入り口にする抖音電商(Douyin EC)との親和性が高いと考えられています。

そのため、弊社はまず日本から海外チームを立ち上げました。日本を皮切りに、ほかの国と地域にも現地チーム開設を計画しています。

抖音電商全球購(Douyin EC Global)の責任者であるTodd Lin氏&日本チームの写真

ーー抖音(Douyin)は中国では皆知っているサービス名ですが、日本ではサービスを提供していないため、あまり知られていません。

黄:中国本土では、抖音(Douyin)は成長を実現する重要なチャンネルだと評価され、多くのブランドが積極的に参画しています。これから日本の企業にも積極的にアプローチし、活用していただきたいと思います。日本のお客様には、抖音電商(Douyin EC)がECプラットフォームにとどまらない、コンテンツマーケティング、インフルエンサーマーケティング、ライブコマースなど最新のマーケティング手法の実践の場だということをお伝えしたいです。

「抖音電商(Douyin EC)」の公式アカウントによるライブ配信の様子

ライブコマースを例にあげれば、集客や告知、そしてライブコマースの企画、実施後のデータ分析といった有意義なデータとノウハウを蓄積できます。

日本のテレビ局がショートムービーを意識した短尺ドラマや縦長ドラマの制作に取り組むなど、ショートムービーは中国にとどまらない世界的なトレンドです。

お客様が抖音電商(Douyin EC)で蓄積したノウハウは、グローバルのマーケティング施策に活用していただけるはずです。

※1参考:https://jp.reuters.com/article/china-bytedance-idJPKBN2661HU

※2参考:https://www.axion.zone/bytedance-douyin-search/

(36Kr Japan編集部)

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