メタバースにリアルなオフィス街を再現。中国スタートアップが描くVRオフィスの未来形

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インターネット上の3D仮想空間「メタバース」に設けられる「メタバースオフィス」の可能性が一段と広がりそうだ。中国上海市に本社を置くIT企業「花動伝媒(Huadong Media)」がこのほど、今年2月に公開した中国初の仮想現実(VR)オフィスプラットフォーム「ARK1.0」を「ARK2.0」にバージョンアップした。同社はARK2.0を、人材採用から会議までオフィスの日常業務のほとんどを実行できるオールインワン型の「MaaS(メタバース・アズ・ア・サービス)」として提供する。

花動伝媒の姜民求・創業者兼最高経営責任者(CEO)は「ARK1.0の公開後、市場の反応を確認し、2.0へのバージョンアップを急いだ」とした上で、「ARK2.0は効率的な仕事、コミュニケーション、クリエーション、ライフスタイルの未来を表現している」と説明した。ARK2.0は、より能動的な活動とオープンで効果的な共同作業を可能にし、リモートワークの課題「リアルな社会と隔絶されている感覚」を低減するという。

VRオフィス「花動タウン」で同僚と交流する

ARKを運用している企業は今年4月時点で700社以上。すでに約1万人がARKを利用して働いている。また、花動伝媒は中国通信大手3社の中国電信(チャイナテレコム)、中国移動通信(チャイナモバイル)、中国聯合網絡通信(チャイナユニコム)とメタバースプロジェクトで提携し、行政機関や教育機関、企業などのデジタルトランスフォーメーションを後押ししている。ARKを利用して開催されたイベントは、韓国の政府系ファンド「韓国投資公社(KIC)」による「中国創業大会」のほか、投資会社の役員会、メタバース関連の講演会、グローバル企業の就職説明会、非代替性トークン(NFT)アートのイベントと多岐にわたる。すでにARKを授業に活用している農村部の学校もある。

花動伝媒は、今回のバージョンアップ以降のARKの開発計画も明らかにしている。22年7〜9月期にはメタバースオフィス同士を相互接続したオフィス街を構築し、10〜12月期にはオフィス街の中で運用できる経済システムを始動する。23年1〜3月期にはメタバース上で使える「創作キット」とSNSサービスを一般ユーザー向けに公開。4〜6月期にはブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用する次世代インターネット「Web3(3.0)」とつなげ、代替性トークン(FT)およびNFTに対応する計画だという。この計画が実現すれば、多様な体験を通じてメタバースの本質に近づけるだろう。

計画を実現するには、花動伝媒がARKをブラッシュアップしていくだけではなく、中国内外のメタバース関連企業との連携も必要になってくる。同社は将来的に、VRおよびAR(拡張現実)関連のデバイスやソフトウエア、コンテンツなどを組み合わせ、ARKを「よりリアルな体験に近づいたバーチャルライフ」に向けて進化させていく方針だという。

メタバースで注目、中国のVRオフィスを訪問してみた。リアル再現はなお課題

(翻訳・田村広子)

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