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世界展開を目指す中国スマートフォンメーカー各社は、インドでのシェア争奪戦を繰り広げてきた。
小米科技(シャオミ)をはじめとする中国スマホメーカーは2017年、インド市場制覇への道を歩み出した。当時、インドは従来型携帯電話からスマホへの移行期にあった。インドは人口10億人をはるかに超える巨大市場だ。中国スマホメーカーに過去最大のチャンスが訪れていた。
シャオミは2015年、他社に先駆けて「インド優先」の海外市場戦略を打ち出した。17年10〜12月期には、インドでの出荷台数が韓国サムスン電子を超えて1位となった。米調査会社IDCによると、18年4〜6月期以降のインドスマホ市場シェア上位5社には、シャオミ、vivo(ビボ)、OPPO(オッポ)、realme(リアルミー)の中国スマホメーカー4社がランクインしている。
新型コロナウイルスの流行が始まった2020年、インドスマホ市場の成長に急ブレーキがかかった。IDCによると、同年4〜6月期の出荷台数は前年同期の半分に落ち込み、通年でも1.8%減の1億5000万台となった。出荷台数が前年比で減少したのは初めてだった。
2021年、インドスマホ市場はV字回復を遂げる。市場調査会社Canalysによると、22年1〜3月期のシェア上位5社の構図は以前と変わらず、中国スマホメーカー4社がランクインした。シャオミは1位の座を守り続けている。
中国スマホメーカーがインド市場を席巻していることに変わりはない。しかし、新型コロナの流行や部品不足がビジネスに影を落としている。それだけではない。中国企業にとって、インドでのビジネス環境は厳しさを増し続けている。2020年6月以降、多数のIT企業がインド市場から撤退した。中国スマホメーカーは、いつまでインド市場で支配的な地位を守り続けられるのだろうか。
インド税務当局は2021年12月21日正午、OPPOのインド事務所に家宅捜索に入った。同社の従業員は税務調査に協力するため、3〜4日間にわたって事務所にとどまるよう求められた。彼らの通信ツールも監視の対象となった。シャオミにも同日、税務調査が入った。インド財務省はその後、同社が脱税したとして、追徴課税65億3000万ルピー(約110億円)を課した。
シャオミに対する調査は2022年に入ってからも続いた。インド政府の金融犯罪対策機関である執行局(ED)は4月末、シャオミの中国法人がロイヤルティーの支払い名目でシャオミを含む外国法人に送金していたことが判明したとして、インド法人の銀行口座にある資金555億ルピー(約940億円)を差し押えると発表したが、その後シャオミの提訴により処分保留とした。インド法人は現在、ロイヤルティーの支払いを除き、外国法人への送金が可能となっている。
振り返れば、シャオミ、OPPO、vivoの3社がインド市場に進出した2014年は、インドのモディ首相が就任した年だった。モディ首相はインドを世界の工場とすべく、国内製造業の振興策「メイク・イン・インディア」を掲げた。
中国スマホメーカー各社は同政策に応え、地元雇用を創出するため、2015年から相次いで現地工場を建設し始めた。シャオミは現在、現地工場7カ所を構えている。
インドは2015年、同政策の推進に向け、スマホの輸入関税を2倍に上げた。17年7月には新たな税制「物品サービス税(GST)」が導入され、1万ルピー(約1万7000円)のスマホに12%のGSTが課せられることになった。さらに、20年には税率が18%に引き上げられている。スマホメーカーの利益圧縮につながるのは明白で、シャオミはじめ中国メーカー各社は小売価格の引き上げを発表した。インドのスマホ市場では中・低価格帯のスマホが大半を占めており、消費者は価格に対して非常に敏感なのだが…。
インドの地元スマホメーカーもチャンスをうかがっている。米グーグルとインド大手財閥リライアンス・インダストリーズ(RIL)傘下の通信会社「Jio Platforms(ジオ・プラットフォームズ)」は2020年7月、低価格帯の新型スマホ「Jio」を開発することで提携した。Jioはインドスマホ市場の再編のきっかけとなり、中国メーカーの脅威となる可能性もある。しかし、ブルームバーグによると、新型コロナ流行によるサプライチェーンの断絶と部品価格の上昇が影響し、現在のところ計画は順調に進んでいないとみられる。
インド中国資本スマホ企業協会(CMA)の楊述成・事務局長は「業界再編は一晩で起こるものではない。ゆっくりと進んでいくだろう」とした上で、「インドの企業が国外の企業に学んで(技術を自分のものにしたとき)、中国スマホメーカーがインド市場での地位を失う可能性もある」と危機感を露わにした。
(翻訳・田村広子)
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