アリババが「申通(STO Express)」に出資、物流業界はアリババ、京東、順豊の3強時代へ

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3月11日、宅配大手「申通快逓股份有限公司(STO Express)」が新たな関連会社を設立し、アリババが戦略的投資家として新会社に出資することが明らかになった。アリババは46億6500万元(約775億円)で新会社の株式49%を取得する計画。新会社は申通快逓の株式総数の29.9%を保有する予定であり、今回の出資によって、アリババは間接的に申通快逓の株式約14.651%を保有することになる。

これにより、アリババは中国の大手宅配企業のうち「韻達(YundaExpress)」を除く「百世滙通(BestExpress)」、「圓通(YTO Express)」、「中通(ZTO Express)」、申通に出資したことになる。

アリババは「四通」と蘇寧物流に出資
注1:雲峰基金とアリババが百世の株式29%を保有、菜鳥とアリババが圓通の株式17.63%を保有。
注2:アリババは蘇寧雲商に283億元(約4700億円)を出資、そのうち95億元(約1580億円)は天天快逓への出資。

アリババは早くから宅配企業と手を結んできた。2013年5月に物流プラットフォーム企業「菜鳥網絡科技有限公司(Cainiao Network Technology)」(以下、菜鳥)を設立、大手宅配企業と共に物流ネットワークを構築した。2018年末の時点で、菜鳥の市場価値は1325億元(約2兆2000億円)と見込まれている。

これ以前にECサイト「京東(JD.com)」が宅配業への参入を表明し、宅配最大手の「順豊(SF Express)」、京東、菜鳥による物流業界の三極化が予想されていたが、今回アリババが申通に出資したことで、その傾向がいっそう顕著になった。

高い客単価で攻める順豊、京東とは異なり、アリババはEC事業由来の膨大な物流ニーズで順豊と京東以外の宅配大手を取り込み、その物流資源を統合するという「人海戦術」で勝負する。

このような「薄利多売」のビジネスは、圧倒的な取扱件数があって成り立つものだ。申通の2018年の年間業務量は51億件に上り、これに百世、圓通、中通を加えると、2018年の取扱件数は業界の52.6%を占める263億件余りになる。

公開データを元に36Krが作成

アリババは取扱件数が膨大なパートナーを見つけると、出資して提携関係を固め、物流チェーン全体に対する支配権を強めてきた。これまでに出資した宅配企業では筆頭株主か第2位株主になっているため、大きな発言権を持ち、長期にわたって提携を維持することができる。

申通の業績が回復したことも、アリババの出資を後押しする材料となった。申通の財務報告によると、2018年の売上高は前年比34.42%増の170億1400万元(約2826億円)で、株主に帰属する純利益は同37.46%増の20億4500万元(約400億円)だった。

多くの宅配企業に出資を続けることで、アリババは物流業界トップの一角を占めるようになった。しかし物流業界の市場競争は、資金やリソースを絶えず投入する必要がある長期戦だ。

現在、アリババ系の取扱件数は業界最多だ。しかも自社設備で運営する京東や順豊と異なり、アリババは出資して株式を保有するやり方で宅配企業と提携しているため、設備投資の負担を減らしながらも効率のよい運営を実現することができる。

とはいえ、物流業界で最大の競争力である「配送スピード」では、アリババは劣勢だ。菜鳥は大々的に物流倉庫の建設を進めて配送効率の向上を図っているが、化粧品や電気製品などの小型荷物がようやく京東と順豊のスピードに並ぶ程度だ。スピード配送や同一市内即日配送に至っては、大きく後れを取っている。

収益性の高いハイエンド市場は順豊が陣取っており、取扱件数ではシェアが最も低いものの、売上高では他社を抑えてトップに立つ。そして後発の京東もこの市場に目をつけている。長らくコストパフォーマンスで勝負してきたアリババ系が上位市場に進出するには、大きな改革が求められる。

物流業界のシステムは膨大で複雑なため、全ての配送や物流ネットワークの構築を1、2社でまかなうことはできない。となると、この先しばらくは今の3強時代が維持されるだろう。(翻訳・畠中裕子)

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