「人人車(Renrenche)」はなぜこうなってしまったのか?

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資金難に陥っている中古車販売の「人人車(Renrenche)」は全国数十都市でリストラを進めているが、最近、突然「パートナー制」へ変更すると公表した。希望する社員は4万元(約66万円)を出資して「パートナー」にグレードアップするか、即時退社するかを選択できるようになった。パートナーは人人車との雇用関係が無くなり、人人車から購入した見込み顧客情報で個人事業者として経営を行うのだ。

人人車はパートナー制に期待を寄せているようだ。3月1日、創業者の李健発氏が出した社内メールによれば、本部はパートナーになった人数がすでに1000人を突破したことを受けて、大きなケーキで飾った祝賀式を行ったという。

人人車はパートナー制によって、この嵐の中から脱け出すことができるのだろうか。どうやらそれは難しそうだ。

加盟店に相当するパートナー

2018年末に業務の規模縮小が明らかになって以来、人人車はリストラやパートナー制の導入などあらゆる手を尽くして墜落の速度を緩めようとしている。しかし少なくとも現在の所、パートナー制への移行は「「藁をもつかむ」といった様相を呈している。

まず「パートナー」は、ただの体面を保つための呼称でしかなく、利益配分や権限に対して決定権を持たず、真の意味でのパートナーではない。そのため、人人車はパートナーの業務に対して監督管理を行うのは難しい。

実際、パートナー制は一般的にはディーラー加盟制度に相当する。ディーラーはその企業のブランドを使用したり、提供するサービスを購入したりできる。これでは、人人車はパートナー制の導入によって目下の難関を潜り抜けたとしても、市場に長く留まることは難しいだろう。

疑問の残るモデル

2009年、中国の新車販売台数が1000万台を突破した。1台当たりの平均買い替えサイクルを5-6年とすると、2014、2015年からは中古車が市場に大量に放出されるだろう予測される。新車、中古車の販売台数の割合が1:3の米国市場とは対照的に、中国市場での比率は約3:1だ。中古車市場は、巨大な潜在力を秘めており、しかもその潜在力が爆発寸前にあることは疑いの余地がない。

振り返ってみると、当時の業界は楽観的過ぎたきらいがある。2014年4月、前「マイクロソフトアジア工程院(微软亚洲工程院)」副院長であった李健氏が辞職して創業した人人車は、かつて中古車業界におけるスタートアップ企業のスターであった。「当時中古車業界は魅力的だった。目立ったブランドが1つも無く、中古車取引プラットフォームと言える会社もなく、大資本も投入されておらず、市場も分散していた。これらは全て将来成長が見込まれる素晴らしい要素だった。この分野でC2C事業を展開する素晴らしい機会だった。」と李健氏は述べた。

今振り返ってみるとC2Cモデルは人人車の最初の戦略的ミスだったのかもしれない。C2Cモデルの問題点は、買い手も売り手も管理できず、中古車見学の効率は低く、人件費が高かい点だ。販売担当者は取引の末端として、買い手と売り手両者が直接接触すると「飛単(販売担当者が自社の取引を他社にすり替える私的行為)」が発生しやすく、管理の難度が高い。C2Cと言っているが、実際には双方が個人消費者であるとは限らないのだ。

実際、人人車や、中古車eコマースプラットフォーム「瓜子(Guazi)」のユーザーの中で、長期にわたってリピート率が最も高い、最も忠実なユーザーの多くは自動車ディーラーだ。また、同様にC2Cモデルを採用している「瓜子二手車(Guazi)」も2017年に業務をオンラインからオフラインに移行し、中古車販売の実店舗をオープンした。人人車も同時期に瓜子のモデルと類似する「10日売却保証」業務を開始し、中古車を売り手から引き取り、売り場に集めて販売するのだ。

売り場モデルにおける最大のメリットは取引チェーンをしっかりと自らの手に握りることができ、そこから金融、後続市場へつなげやすいことだ。世界最大の中古車チェーンCarmaxの米国株式市場における株価総額は100億ドル(約1兆1129億7500万円)を超えている。しかしアセットライトモデルからCarmaxのようなアセットヘビーモデルへの移行は、プラットフォームに極めて高いコストと在庫リスクを負わせることになる。価格設定のミス、市場価格の上下によって生じる損失は全てプラットフォームの負担になるのだ。インターネット取引チームはアセットヘビー経営の経験が不足しており、いったん問題が生じるとと資金繰りが容易に悪化してしまう。資金が潤沢ではない人人車にとって、それは後の資金繰りがひっ迫してしまう原因の一つかもしれない。

競争の激化

求人情報や中古品の販売サイト「赶集网(Ganjiwang)」が、中古車販売に参入したのは人人車の境遇を変える最大の変数となるかもしれない。

同時に、中古車B2Bとして起業した「優信(Uxin)」も2C市場に参入してきた。瓜子や人人車の「ディーラー不要」と違うのは、優信のモデルはディーラー向けのサービスを提供する点である。、優信はオンラインのユーザーをディーラーの店舗に紹介し、ディーラーの販売サポートをすると同時にディーラーに金融サービスを提供するのだ。優信と瓜子はいずれも金融サービスをたいへん重視している。金融サービスは初期の投入が低く、かなりの収入が見込める。そのため、しっかりとしたリスク管理を行えば、キャッシュフローを改善する手段となる。人人車は2017年になってようやく自社の金融サービスを始めた。これは人人車が通ったもう一つの回り道かもしれない。

ライドシェア大手「滴滴(Didi chuxing)」との提携

2016年下半期重大な資金難が生じた人人車に、ライドシェア大手の「滴滴(Didi chuxing)」が救いの手を差し伸べた。2017年9月、滴滴は人人車へ2億ドル(約222億5950万円)の戦略的投資を行うことを発表した。しかし人人車と滴滴の融合は思うようにスムーズに行っていないようだ。2018年初め、李健氏は「滴滴は将来3年間で人人車から少なくとも100万台の中古車と新車を調達する」と宣言していたが、この計画は現在になっても実行されていない。

とにかく、人人車の資金がひっ迫しているということは秘密ではなくなっている。リストラによる人件費の削減ができても、自己努力による損益バランスの実現は難しく、融資の必要性は目の前まで迫っている。

人人車はパートナー制への移行後、ただの販売広告プラットホームに成り下がっていくかもしれない。たとえ滴滴の支援の下で生き残ったとしても瓜子や優信と同じ舞台で競争する局面に戻ることはもう難しいのかもしれない。
(翻訳・桃紅柳緑)

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