ソフトバンクG出資の宅トレアプリ「Keep」、海外市場撤退。中国市場に集中

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

ソフトバンクG出資の宅トレアプリ「Keep」、海外市場撤退。中国市場に集中

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資する中国最大のオンラインフィットネスアプリ「Keep」が正式に海外市場から撤退した。

Keepの海外ユーザーが最近Keepから受け取ったメールには、同社が運営する2つのアプリ「Keep Trainer」「Keep Yoga」が6月30日付けでサービスを終了し、8月30日まで返金やサブスクリプション解約に応じると記載されていたという。

Keepからの通知内容

Keepのこの決定には多くの海外ユーザーが残念な気持ちをにじませた。Keepのアプリ内だけでなくインスタグラムなどのSNSでも「なぜなくなってしまうの?」「Keepにたくさん助けられたのに」などのコメントが寄せられている。

ユーザーからのコメント

コロナ禍がオンラインフィットネスの盛り上がりを後押ししたことは否めない。米ビジネス系ニュースサイトBusiness Insiderの調査レポートでは「米国ではフィットネス系アプリの利用率がこれまでになく高まった」と指摘している。

企業価値が半年で2倍に、ソフトバンクから巨額資金を調達したフィットネスアプリ「Keep」

Keepは海外事業を一定期間継続したものの、事業全体で赤字が続く現状からより成熟度の高い中国事業に集中し、収益化が困難な非中核事業を切り捨てるのは自然な選択と言える。

食い込めなかった海外市場

米アップルのティム・クックCEOは2017年にKeepの本社を視察に訪れている。当時、Keepは設立わずか2年だったがすでにApp Storeで優秀アプリのリスト入りを果たしており、創業者の王寧氏はこのときクック氏に対し「今年(17年)中には英語版をローンチする予定だ」と述べ、クック氏も自分がKeepインターナショナル版の最初のユーザーになりたいと応じている。

実際、Keepは18年初めに海外市場に進出し、2つのアプリ「Keep Trainer」「Keep Yoga」をリリース。1年足らずで180カ国以上に配信された。同年12月、Keepインターナショナル版は多くの地域で「Google Play ベスト オブ 2018」の自己改善部門(自己改善を促してくれたアプリ)に選出されている。

しかし、インターナショナル版をリリースしてからの快進撃は長くは続かなかった。Keepの海外でのパフォーマンスは「評価は高いが売れ行きは悪かった」のが実際のところだ。米モバイルアプリ調査会社Sensor Towerのデータでは、20年12月時点でKeep Trainerのダウンロード総数はわずか4万回に留まっている。

36Krの調査では、Keep Trainerは不具合修正を除くと19年4月からほとんどバージョンアップや更新が行われておらず、Twitterの公式アカウントも19年3月以来更新が止まったままだ。

世界的に見るとオンラインフィットネスは競争の激しい分野だ。米国市場を例に取ると、Keepが進出する前から「Peloton」「Nike Training Club」「Fitbit」など似た機能を多く持つアプリが存在していた。

中国製アプリの海外進出成功例としては、インターナショナル版としてTikTokをリリースした抖音(Douyin)が挙げられるが、Keepと抖音が異なるのは、TikTokが海外でショートムービーという新ジャンルを開拓し、海外大手企業が次々と後追いしたのに対し、フィットネスという既存の分野に参入したKeepは、何らかの絶対的な競争力を備えていなければ市場の一角を占めるのは極めて困難だということだ。

Keepは中国市場と同様、海外市場でもマーケティング戦略として無料サービスで市場獲得を狙った。「新規登録したユーザーにはギフトとしてアプリ内コインがプレゼントされ、そのコインを使ってパーソナルトレーニングプランが利用できる。その後もトレーニングを続ける、ログインするなどのアクションごとに新たにコインがもらえるので、実質的には完全無料で利用できる」。海外留学中のKeepユーザーはこのように話した。

無料と引き換えに事業の拡大を図るにも限界がある。選択肢が多く、サブスクリプションモデルに慣れている海外ユーザーがより重要視するのはコンテンツそのものの魅力だ。

Keepが海外進出した当初は現地向けに新たに制作された録画レッスンが配信されていたが、こうしたコンテンツの質を保つには継続的に多くの資金を投入する必要があり、近年赤字が続くKeepには継続が難しかったようだ。

ソフトバンクG出資の在宅フィットネス「Keep」が上場申請、急成長も赤字足かせ

さらに、オンラインフィットネスそのものが明確な収益モデルを確立できていないという難点がある。Keepがこれまでベンチマークとしてきた業界大手Pelotonが発表した決算報告でも、収益化の難しさが明らかに見て取れる。

Pelotonは「フィットネス界のアップル」と称され、これまでにTiger GlobalやGGV Capitalなど複数の投資機関から何度も出資を受けており、ピーク時の20年末には時価総額が500億ドル(約6兆8000億円)を超えた。しかし今年7月初めの時価総額は36億4000万ドル(約5000億円)にまで下落し、ピーク時から90%以上も目減りしている。

Pelotonの22年第3四半期(22年1〜3月)の売上高は9億6400万ドル(約1300億円)で、その61.6%をフィットネス用品販売、38.4%を定額利用料が占め、当期純損失は7億5700万ドル(約1000億円)だった。比較的長い期間サブスクリプション事業を続けてきたPelotonもいまだに赤字が続いていることを鑑みると、Keepを取り巻く状況はより困難なものに違いない。
(翻訳・山下にか)

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録