ECのために生まれた「洋葱視頻(onion video)」 ただのMCNではない

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ECのために生まれた「洋葱視頻(onion video)」 ただのMCNではない

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今年、ショートビデオ MCN(マルチチャンネルネットワーク 人気動画配信者等のマネジメントなどを行う企業)の話題は減少しているが、ショートビデオ MCNが直面している問題は少なくない。データ統計によれば、 2017 年、ショートビデオ MCN の数は 1700 社であり、 2016 年と比較して300%以上増加している。2018 年末にはおよそ 2200 社の MCNが存在し、2019 年には 4700 社に達すると予想されている。しかし業界内では、水面下にいる中小業者を合わせると、少なくとも4、5万社の競争相手が存在すると見られている。

ショートビデオ MCNが増える一方で、業界全体は成長力に乏しく、マネタイズするのは難しくなっている。

モバイルネットワークのビックデータ解析などを行っているQuestMobile のデータによれば、直近3年間、中国の通信最大手「中国移動通信」のモバイルネットワークのMAU(月間アクティブユーザー)の増加率は減速を続け、ほぼ停滞している。ターニングポイントに差し掛かったMCNは焦りと共に改革を始めている。

改革の中心を一言でまとめると、コンテンツのプレシジョンマーケティングによる多様なマネタイズの実現だ。ここでは「洋葱視頻(onion video)」を例にして、EC化したMCNがライフサイクルを踏まえ、どのように対策を練ったかにポイントを置いて述べる。

2016年4月に創業した洋葱視頻は、「素晴らしい生活」というテーマで続々と「弁公室小野(Ms. Yeah)」、「七舅脳爺(Nao Yeah)」、「代古拉K」等数千万人のファンを擁する特定分野のネットタレントを生み出した。100人以上のネットタレントIPと契約し、ネット上のファン総数3億人を擁している。業務内容はIPインキュベーション、ECサイトのメディア化、版権取引、知識の有料情報サービス、統合マーケティングなどであるが、早期に海外進出を図ったMCNとして、同社はコンテンツ輸出、越境EC、ブランド輸出などの業務も展開している。なかでも「弁公室小野」は、FB大中華地区におけるファン数ランキング第1位のアカウントとして公式に認定されている。

EC業界のトップ企業と言える洋葱視頻の幸運はスタートアップチームのDNAに大きく関係している。洋葱視頻の共同創業者である聶陽徳氏は、2012年「淘品牌(Tao Brand)」のEC業者として起業した。ゼロからスタートして、サプライチェーン、商品制作、販売など全てのプロセスを経験した後、聶氏は「ECのルールが変わった」と意識したという。

聶氏によると、洋葱視頻はこれまでの運営経験のなかで構造化したデータを蓄積してきた。データモニタリングシステムによる課題の選択、ファンメンテナンス、コンテンツ戦略の調整および商業化の方向等の問題解決を始めており、ビジネスとの融合の成功率に対する人的要素の影響を技術を通じて低減させ、タレントIPとビジネスとの融合成功率を高めているという。

その効果は顕著だった。2017年、ネットタレントからECへとのリンクにおいて、10%だった成功率が2018 年には 70%に伸びている。これによって、同社の 2018年における GMV(総売上高) は 3億元(約49億円)を達成した。 2017 年と比べて3倍増加している。聶氏は、同社は安定的な利益率を維持しており、常に黒字状態にあるとしている。

MCN とECによく見られ、反省すべき点について、聶陽徳氏は次のように考えている。

1、「トラフィック」について
ほとんどのネットビジネスは人とトラフィックの上に成り立っている。ショートビデオMCNは特にそうだ。「オンライントラフィックの飽和」、「高価なトラフィック料金」の問題に対して、意外なことに聶陽徳氏は楽観的だ。「トラフィック料金が高くなるのは必然だ。もし誰もが簡単に安価なトラフィックが得られるなら、コンテンツ企業は必然的に価値がなくなる。もし今もコンテンツ制作でトラフィックを獲得できている会社があれば、その商業価値は逆に大きくなる」と語っている。

2、「転換率」について
多くのネットタレントは多くのファンを擁しているが、ECへの転換はうまく行っていない。なぜだろうか。この転換プロセスには、読者からファンへ、ファンから消費者へと変わる2度の転換が必要だ。このプロセスにおいて試されるのはインフルエンサーを活用したコンテンツの有無、そして人と品物、場所のマッチングだ。

3、「 MCNの天井をいかに突破するか」
2019 年、洋葱視頻は「ネットワークテクノロジー企業」を目指して技術面に力を入れている。技術の後押しによってコンテンツ産業は情報化、データ化することが可能となる。将来、洋葱視頻はこのシステムを活かして、多くのIP(知的財産)を創出し、優れたコンテンツを制作し、ファンのイメージと商品をよりマッチングさせて、より正確にターゲティングして広告を打つことができる。これは洋葱視頻がMCN業者としての更なるブレークスルーとなる。

もし洋葱視頻がこのブレークスルーに成功したら、次はどうなるのか。EC、ネットタレント、セルフメディアを融合させた、最近米国でIPOを行った「如涵控股(Ruhnn Holdings)」のケースが連想されるだろう。如涵控股は「張大奕(Bigeve)」、「大金(delicious)」、「管阿姨」等を含む100人以上のネットタレントマトリクスをインキュベートし、「ネットタレント+ECサブブランド」のビジネスモデルによって「トラフィック+商品実現化」の混戦において、2018年度は20億元(約330億円)を超えるGMV(総売上高)業績を上げたが、経営は未だ赤字のままだ。
(翻訳・桃紅柳緑)

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