コンサル内定蹴ってWeb3起業、「平等な組織」目指す中国のZ世代

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「Web3の学習グループを00後(2000年以降生まれ)向けに立ち上げます。Web3に関する情報やリソースを互いにシェアし、毎週日曜日の夜にツイッターのSpaces(スペース)で討論します。興味がある人は連絡ください」。大学3年生のMichelさんがソーシャルプラットフォームに書き込むと、参加リクエストが彼の元に殺到した。彼の立ち上げたグループチャットのメンバーはわずか数日間で数人から200人以上となった。

このグループチャットは非常ににぎわっているという。技術的な知識や業界の動向、注目度の高いプロジェクト、起業アイディアなど各種の情報が飛び交っており、少し目を離すと未読メッセージが100件以上に上るほどだ。

Michelさんは「モバイルインターネットで最も恩恵を受けたのは70、80年代生まれの世代だ。我々の世代が事業やお金を稼ぐ新しいチャンスを探すにはWeb3だ」と話す。

若者は今、そろってWeb3に熱い視線を注いでいる。これは限られた範囲の現象ではなく、ますます大きなトレンドとなってきている。

最近、プロフィール画像が漫画風だったり、SNSアカウント名の末尾が「.eth」だったり、プロフィールやタイムラインによく「DAO」「NFT」などの単語を登場させたりする人物は間違いなく95後(1995年以降生まれ)か00後だろう。

大部分は20歳を過ぎたばかりの若者だが、その多くはすでに名実ともにWeb3のベテランだ。暗号通貨やNFT(非代替性トークン)への長年にわたる投資経験を持つだけでなく、DeFi(分散型金融)やゲームと金融を組み合わせたGameFiなどのプロジェクトにも精通しており、今ではWeb3の旗振り役になろうとしている。Web3の技術、ビジネス、コミュニティなど各所で頭角を現し、この新たなインターネット革命を盛り上げている。

大手に就職せずWeb3で起業する新卒の若者たち

「テクノロジー企業でプログラマーになることがもてはやされていた時代は終わった」。カナダのブリティッシュコロンビア大学のコンピューターサイエンス専攻を卒業したばかりのKevinさんは話す。「本当にすごい人たちはWeb3で起業している」。

今年の卒業シーズン、彼と周囲の友人は大手インターネット企業に就職するのではなく、起業することを選んだ。彼らの選んだプロジェクトは大部分がWeb3の分野に集中している。

「NFTを選んだ人もいればGame-FiやWeb3のソーシャルプラットフォームを選んだ人もいる。自分の知る限りでは従来のインターネット関連で起業しようとする人はほとんどいない」とKevinさんは話した。「Web3は今資金が豊富だし、Web3の投資家は若い起業家を好むんだ」。

大学を卒業して1年の龐舜心さんはメタバースプロジェクトのシードラウンドで数百万元(数千万~数億円)を調達したばかりだ。昨年の卒業後、トロントの大手コンサルタント企業からのオファーを断り、先輩である鄭暁明さんと一緒にメタバースとWeb3に特化した「Matterverse」という会社を設立している。

彼らは95後の若者から成るメタバース技術の組織を立ち上げ、メタバースエディターを開発した。このプロダクトはリリース後間もなく、優れたレンダリング技術とスムーズなバーチャル体験が買われ、高級ブランドや不動産企業にサービスを提供するようになっている。

彼らは最近になってDAO(分散型自律組織)としてプロジェクトコミュニティの共創や管理に向けた取り組みも始めている。さらに業務の傍ら、龐さんはチャット・コミュニティアプリDiscord(ディスコード)やツイッター上でWeb3コミュニティを拡大するため交流イベントを頻繁に企画し、業界の動向や注目されているプロジェクトを若者たちと討論している。

龐さんの率いるチームのプロジェクトと、カナダで拡大中のWeb3コミュニティ

「技術面を取っても運営モデルを取っても、Web3は現在のインターネットと全く異なるシステムだ。大手テクノロジー企業で働いたことのない若者の方がかえって純粋なWeb3の認知システムを構築できる」とWeb3分野の投資家であるDanny氏は話す。

「例えばDAOでプロジェクトを稼働させる時、彼らは組織とは誰もが平等な立場で運営するものと考える。従来の企業のように管理者の一声で全てが決まるような状況は起こらない」。

「これは一つの観念が転換する過程で、若者はこのプロセスで重要な役割を果たす」と同氏は補った。

Web3の一員となることは今、若者にとって単なる日常会話のネタになるだけではなく、ソーシャルコミュニティの入場券とさえなる。多くの学生の目には、小遣いでデジタル通貨に投資したり、NFTを保有したり、GameFiをプレイしたりすることがクールに映るのだ。

移民向けにフィンテックサービスを提供する米「Stilt」が最近発表したデータによると、仮想通貨の購入者の90%以上は18~40歳で、Z世代(18~24歳)とミレニアル世代(25~40歳)の暗号資産取引に関する興味と購買力は突出しているという。そのうち、取材に応じたZ世代の80%以上が、今後Web3に関係する仕事に就くことを考えていると答えた。

暗号資産取引者の年齢分布(図表:Stilt )

Web3時代のビル・ゲイツを目指して

若者が次々とWeb3に手を出しているのはただの面白半分ではない。実際に今業界で大きな影響力を持つWeb3関連のプロジェクトの多くは彼らの手によるものだ。

その中でも彼らが同世代のリーダーとあがめている人物がいる。暗号資産の1つである「イーサリアム」を開発したヴィタリック・ブテリン氏だ。

ブテリン氏は17歳の時に初めてビットコインとブロックチェーンに接した。その後ビットコインに関する雑誌「Bitcoin Magazine」を創刊。19歳でウォータールー大学のコンピューターサイエンス学部に合格するものの、わずか8カ月で自主退学する。そしてイーサリアム白書「A Next-Generation Smart Contract and Decentralized Applicaton Platform(次世代のスマートコントラクトと非中央集権型アプリケーションプラットフォーム)」を発表した。

その後、彼はイーサリアム普及のために世界各地を回った。現在28歳の同氏は、ビットコイン開発者のサトシ・ナカモト氏に次いで、ブロックチェーン分野で最も影響力を持つ重要な技術的リーダーであるとされている。

ヴィタリック・ブテリン氏(写真:the block)

「ビル・ゲイツは19歳で退学してマイクロソフトを、ザッカーバーグも19歳で退学してフェイスブック(現メタ)を設立した。ブテリンも19歳で退学してイーサリアムを開発している。技術が進歩するときには必ず時代をリードする若者たちが現れる」とDanny氏は話す。

暗号資産に特化した米投資ファンド「パラダイム(Paradigm)」は近ごろ、Transmissions 11と名乗る研究員が新たに加わったと発表した。注目すべきは、この研究員がまだ高校生だということだ。

Transmissions 11は暗号資産の分野で最近注目を集めている人物だ。初期のブテリン氏と同様、個人のブログでブロックチェーンやDeFiに関する独自の見解を発表しており、現時点では暗号資産エコシステムの取引費用を低減させることを重点に研究を進めている。

同氏の個人情報はベールに包まれており、現在15歳前後でシリコンバレーにある高校に通っていることだけが知られている。14歳の時にイーサリアム白書を読んだ後開発者となり、各種DeFiの開発に関わってきた。

「ゲイツやザッカーバーグの登場を受けて多くの若者が起業したように、今後、ブテリン氏やTransmissions 11のような存在はますます増えるだろう。モバイルインターネット時代に比べるとWeb3時代で起業するのはもっと若い世代かもしれない」とDanny氏は話した。

すでに成熟しているWeb2.0と比べるとWeb3はまだまっさらな白紙だ。ほぼ全員が同じスタートラインに立っていると言えるだろう。

(翻訳・山口幸子)

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