中国、「仮想発電所(VPP)」に新商機 分散リソースを束ねて脱炭素のけん引役に

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中国、「仮想発電所(VPP)」に新商機 分散リソースを束ねて脱炭素のけん引役に

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中国政府の脱炭素政策「ダブルカーボン(双碳)目標」推進に伴い、中国国内では風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギー発電設備が急増している。中国国家エネルギー局の統計によると、今年1月から5月の再生可能エネルギーの発電量は全国の発電量の3分の1に相当する1兆1000億キロワット時に達した。

風力・太陽光発電は火力発電に比べて二酸化炭素排出量が少ないため、ダブルカーボン目標を達成するうえでの重要な手段となる。しかし一方で、再生可能エネルギーは不確実性や変動が大きいというデメリットもある。

例えば、設備容量5ギガワットの風力発電システムの場合、風速が毎秒1メートル変化するだけで発電設備容量は約500メガワット変動する。これは国民300万人分の電力消費量に匹敵する量だ。こうした問題を解決するため、新しい電力システムをより柔軟で調整可能なリソースで補強する必要がある。

現在のところエネルギー貯蔵や揚水発電、火力発電ユニットによる調整に加えて、仮想発電所(バーチャルパワープラント、VPP)が重要なソリューションとなっている。立地が限られ建設サイクルが長い揚水発電や、高コストで経済性に乏しいエネルギー貯蔵に対して、仮想発電所はよりシンプルかつ資産保有を抑えたアセットライト方式で展開する。これは電力需要側の柔軟なエネルギーリソースをデジタル技術で結び合わせ、分散した異なる種類のエネルギーリソースを適切に配分・制御することで、あたかも1つの発電所のように運用するというものだ。

仮想発電所の運営や関連技術を手がける「兆瓦雲(VPPtech)」がこのほど、プレシリーズAで数千万元(数億~十数億円)を調達した。セコイア・キャピタル・チャイナのシードファンドと招商局創投(China Merchants Venture)が共同で出資した。

兆瓦雲創業者の劉沅昆氏は清華大学の博士研究員また中国電力科学研究院の博士で、長きにわたり国有送電会社の国家電網(State Grid)に勤務した経歴を持つ。主な研究分野は電力分野におけるAI技術の活用だ。

劉氏は、2022年に中国の仮想発電所の市場規模が100億元(約2000億円)規模になり、ダブルカーボン目標の実現に向けて2030年までに同市場が年間約1000億元(約2兆円)規模に達すると予測している。仮想発電所はまた、新エネルギーを主体とした新しい電力システムを構築するうえでも重要な役割を担っている。

兆瓦雲の強みは2つある。1つは電力業界に深く関わってきたことで、電力システムの運用方法やルール、中国の電力市場に通じていること。中国で最初期に仮想発電所の運営を始めたのも同社だ。

もう1つの強みはデータ科学やアルゴリズムにある。兆瓦雲が運営する仮想発電所では、利用者側の負荷特性の抽出、取引・給電プラン策定、収益によるフィードバック、プラン改善というサイクルで、データ駆動型のアルゴリズムを繰り返し最適化している。これにより仮想発電所の制御精度や調整能力などの指標を、徐々に実際の発電所の機能に近づけることができている。

また仮想発電所向けの技術サービスも提供している。仮想発電所の構築には3層構造の給電制御アーキテクチャーが必要になる。

具体的には電力網への給電をサポートする最上層、さまざまなエネルギーリソースを集約・最適化する中層部、分散した異なる種類のエネルギーリソースをモデル化する基層部で構成される。現在、仮想発電所業界には太陽光発電モジュールやエネルギー貯蔵を手がけてきた企業や国家電網の子会社などさまざまな背景を持つ企業が参入している。これら企業のアプローチが似通っているのに対して、兆瓦雲は電力システムの視点から調整可能なリソースを全面的に最適化し、ハードウエア・ソフトウエアサービスの展開や、仮想発電所の3層制御構造の構築、電力市場参入のためのフルサービスを提供して、設計から建設、運営までユーザーが最大限の収益を得られるよう万全にサポートしている。

現在、兆瓦雲の事業は爆発的に伸びているという。すでに華北地域、西北地域、河北省、山西省、山東省など5つの省や地域の電力網と提携して補助的なサービスを提供しており、管轄下の制御可能な負荷容量は約100万キロワットに達する。
(翻訳・畠中裕子)

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