中国で急成長のEV用充電設備、数兆円市場で進むバブルの拡大

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中国で急成長のEV用充電設備、数兆円市場で進むバブルの拡大

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ここ数年の電気自動車(EV)市場の急拡大に伴い、付随する充電設備産業も市場規模が数千億元(約数兆円)に膨らむと期待され、政策による支援も受けてきた。これほどの将来性がある業界なら、業界内のリーディングカンパニーは膨大な収益を上げていると考えるのが普通だろう。

しかし、充電設備を手がける中国大手2社「万馬股份(Wanma)」と「特鋭徳(TGOOD)」の決算報告書を読み解くと、現実はいくらか異なることが分かる。実際、ここ数年の充電設備産業は全体的に振るわず、大手企業が長年の赤字にあえいでいるだけでなく、早期参入組の多くが姿を消す事態となっている。

魅力的なバブル

東莞証券のレポートでは、バッテリーを巡る技術や材料が革新的なブレークスルーを果たせていない現状で、充電インフラの建設を加速することが新エネルギー車の航続距離問題に対する最適解だと指摘。充電設備の市場規模は2022年から2025年にかけて、1241億元(2兆5500億円)、1347億元(約2兆7700億円)、1482億元(約3兆円)、2045億元(約4兆2000億円)に拡大すると予測している。

しかし、それは魅力的ながらも触れるとすぐにはじけてしまう美しいバブルなのかもしれない。データによると、特鋭徳の子会社で充電設備をメインに手がける「特来電(TELD)」は、2021年に5132万元(約10億5500万円)の損失を計上、大手の万馬股份の損失額は実に1億3000万元(約27億円)に上った。特来電の損失が比較的小さかったのは、政府からの充電設備に対する補助金6656万元(約14億円)と、充電ステーション運営への奨励金1934万元(約4億円)によるところが大きい。

全体として充電設備産業は多年にわたる投資や運営を経てもなお、自立できるほど活性化できておらず、業界全体では赤字が一般的になっている。

これら企業の売上高が年々増加しているにもかかわらず利益が拡大しない理由は、市場シェアを獲得するため各社が価格競争に身を投じたからだ。業界の急拡大期に、充電設備メーカーは足元の利益を犠牲にしてでも他社を出し抜こうと勢力拡大に走った。それは特来電と万馬股份の経営データにも表れている。

特来電の充電量は2021年に前年比55.6%増加したが、充電業務の売上高は同51.9%増にとどまっている。同年、万馬股份でも充電量の増加に対して売上高の伸び率が小さいという現象がみられた。

充電設備の収益は電力1キロワット時あたりのサービス料なので、常識的に考えれば、充電事業の売上高と充電量が同じ伸び率になるはずだ。両社の充電事業の売上高が少ない最大の理由は、価格競争に陥ってサービス料が低下したことにある。業界大手がこの有様なら、中小企業を取り巻く環境がいかに厳しいか想像に難くない。

充電設備は技術的な障壁が低いため、競合が参入しやすいという側面もある。企業情報サイト天眼査によると、現時点で中国にある充電設備関連企業は17万6300社で、そのうち2019年に2万2800社が新たに設立され、2020年に2万7000社、2021年には5万4700社と、年を追うごとに増加の勢いが増している。

実のところ充電設備は従来のインフラ企業と同様、事業収入は大きいものの、アセットヘビー運営でリターンまでに時間のかかる大変な仕事だ。充電設備の運営会社は一般的に、設備を購入して充電ステーションを建設し、車の所有車から電気代やサービス料を徴収する。このような単純な収益モデルでは、サービス料や回転率、スケールメリットが決定的な要素となってくる。現在、充電設備産業では差別化したサービスを提供できていないため、価格競争を続けるよりほかはない。こうして業界の黒字化はますます遠のいている。

バッテリー交換VS充電モデル

テスラや小鵬汽車(Xpeng)、NIO(蔚来)など新興EVメーカーの参入も、業界に影響を及ぼしてきた。小鵬汽車の何小鵬董事長によると、同社が今年後半から展開する次世代の急速充電設備は充電スピードが現在の「急速充電」の4倍、従来の充電ステーションより12倍も速い。テスラやNIO、広汽埃安(GAC AION)など新エネルギー車メーカーも自社の急速充電設備を手がけている。

加えて、充電するのではなくフル充電されたバッテリーに交換する新しいビジネスモデルが、充電設備産業にとって大きな脅威となっている。

専用ステーションでは5分以内にバッテリー交換が終了し、充電するのに比べて大幅に時間が短縮されるため、充電設備企業にとっては大きなダメージだ。

東方証券のリポートによると、中国のバッテリー交換型自動車の保有台数は2025年に500万台に達し、バッテリー交換ステーションは2万2000カ所ほどになる見通しで、2021~2025年の年平均成長率は100%を超えると予測されている。小鵬汽車やNIOなどの新エネルギー車メーカーや、電池メーカーCATLなどはいずれもバッテリー交換ステーションの建設を急ピッチで進めている。

例えばNIOは、2022年末までにバッテリー交換ステーションが国内の主要高速道路をカバーすることを目標に掲げ、2025年までに世界に4000カ所以上の交換ステーションを建設するとともに、利用者の住宅の9割を「電区房」(電池交換ステーションからの距離が3km圏内の住宅あるいは勤務先)にすると明言している。

ただ長期的に見ると、充電設備には不利な要素が多いとはいえ、中国は世界最大の新エネルギー車市場であり、充電設備産業は依然として大きく成長する可能性を秘めている。現在は技術や市場、収益モデルの変革期にあり、持続可能な発展の道を探っているところなのだ。

作者:袁国宝(WeChat ID:yuanguobao1982)
(翻訳・畠中裕子)

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