ユニクロ、TikTok中国版「抖音」で初ライブコマース 業界最大手のアリババに脅威か

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日本を代表するアパレルブランドのユニクロ(UNIQLO)が9月6日、TikTokの中国版「抖音(Douyin)」で初となるライブコマースを行った。在庫処分のためにライブコマースを開催する多くのブランドとは異なり、今回ユニクロは新商品を多く紹介したほか、今後もさらにライブ配信を行うことを予告した。

抖音での公式アカウント

ユニクロは中国市場で絶えず新しい試みを行ってきた。2009年には海外ブランドとして初めてアリババ傘下のECモール「天猫(Tmall)」に出店。大多数のブランドはまだネット通販に対する理解が十分ではなかった時期だ。その後、テンセント(騰訊控股)が運営するSNSアプリ「WeChat(微信)」のミニプログラムが流行した際にもユニクロはいち早く出店している。

それに比べると、ユニクロが抖音に手を出したのはかなり遅かったと言える。多くの大手ブランドは2年前には抖音でライブコマースを開始している。しかしユニクロは抖音にアカウントを開設してからもすぐにライブコマースを行うのではなく、まず公式旗艦店を設置し、着こなし動画を発表するなどしていたが店内の商品は多くなかった。今年の「618セール」(6月18日前後に行われる中国ECサイトのスーパーセール)期間中、市場ではユニクロがライブコマースを行うのではないかという噂が流れたが、同社が正式にライブ配信ルームを設置したのはつい最近のことだ。

アリババ「淘宝直播(タオバオライブ)」でライブ配信の様子

ユニクロに近い消息筋によると、抖音でライブコマースを行うにあたってユニクロが一番懸念したのは同社とアリババとの結びつきが強すぎることだったという。また、抖音のライブコマースは混乱していた時期があり、サービス品質に高いレベルを要求するユニクロは参入を見送っていたようだ。

抖音でライブコマースを始めるという今回のユニクロの決断は、中国での業績不振と関係があるとみられる。

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2022年8月期第1四半期(2021年9月〜11月)は初めてグレーターチャイナ(中国大陸・香港・台湾)での売上高と利益が減少。海外市場全体の売上高が15%増加したなかで、これまでずっと海外事業の業績を支えてきた中国市場は振るわなかった。第3四半期(2022年3~5月)の決算報告の中でユニクロは、3月から5月の間に中国でこれまで最多となる169店舗を臨時休業したことに触れたが、その中で上海の店舗が90店を占めている。

抖音のEC事業にとって、ユニクロの参戦が服飾カテゴリにおける重要な一歩となることは疑いようがない。ユニクロの強大なブランド力を利用して、まだ抖音に出店していない大手ブランド各社の出店を促すことができるだろう。靴カテゴリでは、ユニクロ同様に中国での業績が思わしくないアディダスに目を付けた結果、今年上半期にアディダスが初めて抖音で行ったライブコマースでは期間中の売上高が1億7000万元(約34億円)を超えた。

業界トップのアパレルブランドで役員を務める人物によると、抖音のライブコマースが出現するまで、アパレルのオンラインでの主戦場はずっと天猫だったという。以前は服飾カテゴリのオンライン販売額のうち80%近くを天猫が占めていたこともある。

抖音が引き続きトップブランドを引き入れることは、EC業界では新人の抖音が大ベテランのアリババ系ECプラットフォームと今後より直接的に戦うことを意味する。

抖音はブランド支援にも力を入れている。手数料を抑えるだけでなく、昨年からトラフィック分配方式を変更。60%をブランドに、10%をトップインフルエンサーに(昨年は50%)、30%を特定カテゴリに特化したインフルエンサーに分配する。このほか、今年5月にはブランドがより多くの商品を提供できるように、ECライブコマースの予告と管理に関わる規則を改定。一度のライブで最大100種類の商品を販売できるようにした。

しかし、ユニクロのようなブランドが抖音に出店することを憂慮するブランド関係者もいる。ユニクロに近い価格設定のノーブランド商品が打撃を受けることを危惧しているのだ。同様の問題は以前、天猫でも発生しており、トラフィック分配の優先度が下がることで中小規模のブランドが相次いで撤退した。

抖音のEC事業はかつて天猫がたどったルートを通ろうとしているようだが、プラットフォームの運営とサービス能力には長期的な積み重ねが必要であり、抖音のEC事業にはまだ時間が必要だろう。
(翻訳・山口幸子)

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