革命者としての勢いを失った「シャオミ」

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中国の4大スマホメーカー「小米科技(シャオミ)」の創業者・雷軍氏は、同社の創立9周年の記念パーティーで、これまでに同社が成し遂げた最大の功績は中国から携帯電話のコピー製品を駆逐し、国産製品の進歩と発展を促したことだと語った。

しかし、シャオミは、市場のコピー製品を駆逐したというよりも、商品供給の空白期に乗じて「価格破壊者」となり、当時の携帯電話業界をかき回したと説明する方が正しいだろう。しかし、いずれにしろ、シャオミが「革命者」として国産携帯電話市場に登場し、周囲を震撼させたことは事実だ。

「国民的スマホ」となった製品シリーズ「紅米(Redmi)」を発売して3年。同シリーズは累計1億1000万台を販売したが、これは発売当時から現在に至っても驚異的な数字だ。低スペックのコピー製品や高価な海外ブランド製品、あるいはZTE(中興通訊)、ファーウェイ(華為技術)などの強豪メーカー製品が幅を利かせている中で、特に産業基盤を持たないシャオミは独自の道を切り開くことに成功したのだ。

しかし、この9年間で低価格帯製品のシェアは徐々に減じた。各メーカーが続々と高価格帯製品にシフトする中、これまで「コストパフォーマンス」を追求してきたシャオミは、成長のスピードが落ちている。かつてのの功績が今となっては「改革」の足枷となっているのだ。

「究極のコスパ」時代

また、前述のとおり、「シャオミがコピー製品を駆逐した」というのはオーバーな表現だ。

実のところ、同社が登場した当時には、劣悪なコピー製品はすでに没落しつつあった。2011年ごろ、深圳には至る所にこうした携帯電話製品の生産工場があった。しかし、国家当局の取り締まりと、品質に異を唱えるユーザーらにより、コピー製品の販売台数は前年から下落し始めていた。米市場調査会社IHS iSuppliによると、2010年6月の販売台数は前月比23%減と大幅に落ち込んだという。さらに、時代はスマートフォンへ移行。コピー製品は居場所を失ったが、当時は正規品メーカーでさえ方向性を模索している状態で、市場も非常に混乱していた。

その中で、シャオミは大胆な「高コスパ戦略」をとった。当時の相場価格が2000~3000元(約3万2000円~5万円)という中、1999元(約3万2000円)の製品を発表し、すぐに頭角を現した。かくして、「コストパフォーマンス」は同社の代名詞となる。

同社が販売した799元(約1万3000円)のスマートフォン「紅米」は、当時の100元台製品市場で、驚異的なスペックやUXを誇った。また、ECの潮流に乗ってオンライン販売に注力した結果、オフラインチャネルを構築するコストが省けたことも、同社が「究極のコストパフォーマンス」を実現する一因となった。

オンラインからオフラインへの回帰

シャオミがとった戦略はモバイルインターネット黎明期からすでに斜陽に向かっていたと言える。2015年以前は、オンライン販売が実店舗販売をしのぐ勢いを見せていた。ファーウェイ(華為技術)コンシューマー向け端末事業グループCEO(現在)の余承東(リチャード・ユー)氏も、2012年初めに「ファーウェイの幹部たちはシャオミの成功に懐疑的だ。オンラインのみであれだけの製品を売り上げるとはにわかに信じがたい」と述べている。

2015年以前、シャオミは自らの販売戦略が想像以上に早く頭打ちになることにまだ気づいていなかった。当時の従業員によると、実際は社内でも販売の伸び悩みに気づき始めていたが、当時のシャオミではかつての革命精神がなりを潜め、守りの態勢に入っていた。国内ではIT超大手のアリババグループが小売のオフライン戦略に着手していたが、シャオミは茹でガエルのように手をこまねき、多くのシグナルを見逃したという。2015年にECのボーナス期が終焉を迎え、同社はようやく重い腰を上げて他社の後追いを始めたが、その業績はあまり振るわなかった。

薄利の束縛

オフライン販売における絶好のチャンスを逃したこと以外に、シャオミを頂点に押し上げる原動力となった「コストパフォーマンス」が、同社の製品ラインナップの足かせとなっている。

スマートフォンの相場価格が年々上昇傾向にあるのは周知の事実だ。独市場調査機関GfKのデータによると、2017年以降、「1000元(約1万6000円)スマホ」の販売数は6カ月連続で下落しているという。

シャオミは「消費のグレードアップ」の時代においてまだ緩慢さを見せている。

初代「MIX」の販売価格を決める際、共同創始者の王川甚氏は9999元(約16万円)を提案したが、雷氏は最終的に2499元(約4万円)に決めたという。後に雷氏はマイクロブログ上で、「人を感動させる手ごろな値段」の商品を提供するためだったと書き残している。

MIXはシャオミの革命的な商品であり、2016年に低迷期に入った同社にとって「カンフル剤」のような位置づけだった。しかし、コストパフォーマンスを考えても、2代目および3代目MIXには目を見張るような先端技術は何も備わっていない。

シャオミはまだ歴史が浅い会社だが、同社が直面している競争の構図は「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」が頭角を現した時期ともはや同じではない。コストパフォーマンスに固執するシャオミはすでに当初の勢いを失っているが、今後、如何にして現状を打開していくのだろうか?
(翻訳・虎野)

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