「オヤジの酒」が一転 白酒新ブランド「江小白」「喬治巴頓」が若者に受けた理由

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「オヤジの酒」が一転 白酒新ブランド「江小白」「喬治巴頓」が若者に受けた理由

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中国ではビジネス接待の席に欠かせない「白酒」。コーリャンなどを原料とした蒸留酒だが、現在、白酒市場は7000億元(約11兆2000億円)規模に達しており、年平均成長率は8年連続で9.5%を維持している。消費者の年齢層は1970年代生まれが40%、1980~1990年代生まれが26%で、主な消費者は45歳前後だ。

白酒と聞いて若者を連想する者はいないだろう。「オヤジの酒」は、数十年後には絶滅の危機に瀕するかもしれない。

しかし、白酒を若者向けの商品に生まれ変わらせようと奮闘する人物がいる。2018年に発売を開始した白酒ブランド「喬治巴頓(George Patton)」の創業者・楊葉護氏だ。白酒業界で14年のキャリアを持ち、近年になって若者の間でブームを巻き起こした白酒ブランド「江小白(JIANGXIAOBAI)」の売上高を10億元(約160億円)にまで引き上げたマーケティングディレクターだ。

2017年、江小白を退社した楊氏は、28~40歳の新中間層をターゲットとした新ブランドの喬治巴頓を立ち上げ、昨年5月の発売からわずか1年で6000万元(約9億6000万円)を売り上げた。

1本300円の酒が300億円も売れた秘密

前述のとおり、白酒のイメージは「オヤジの酒」であり、ステータスや父権、威厳の象徴でもあった。商品のイメージ戦略としては、「歴史」「伝統」「匠」などと結びつけられるのが定石だ。消費シーンは主にビジネス接待を想定し、若者とはおよそ無縁の存在と位置付けられてきた。

そこへ一石を投じたのが、年間20億元(約320億円)の売り上げを達成した前出の江小白だ。パッケージデザインを一新し、コンパクトサイズに収めたリニューアル商品でコンテンツマーケティングを展開すると、たちまち若者の間で人気を博した。

楊氏は江小白のサクセスストーリーの秘密をこう振り返る。

■消耗品のブランド展開モデルを導入:従来の白酒と異なり、消耗品向けの販売戦略を取り入れた。商品の認知度を高め、消費者に印象付けるために、ソーシャルECを利用し、ノスタルジックなコピーをつけてプロモーションを展開した。

■オフラインの販路を重視:大々的な販売戦略はオンラインで展開するものの、販売はオフラインが9割を占め、取扱店舗は小売店や飲食店など200万店以上に及ぶ。仮に各取扱店で年間2ケース(50本)を売り上げれば、総販売本数は1億本だ。単価20元(約320円)の商品が1億本売れれば、年間売上高は20億元(約320億円)に達する。

新中間層の琴線に触れた「喬治巴頓」

白酒自体はこれまで若者に不向きとされてきたが、アルコールに対する需要がなくなることはない。また、中国を代表する酒として白酒に替わる存在は今後も現れないだろう。白酒の抱える問題は単純な世代の差ではなく、消費者によって白酒に対するイメージや飲酒習慣が全く異なるという点だろう。

事実、江小白は若者に受けた。若者の間でも、蒸留酒に対するニーズはあるのだ。

中国の新中間層(主に1980年代生まれ)は、ある程度の経済力を持ち、ブランドに対する意識も高い。同時に、従来の白酒ブランドが体現する価値観には賛同しない。また、品質とコストパフォーマンスを求める傾向もある。彼らにとっては老舗ブランドの「茅台(マオタイ)」や「五粮液(ごりょうえき)」はもちろんのこと、江小白でさえも興味の対象外だ。

これを受けて立ち上げられたブランドが喬治巴頓だ。喬治(ジョージ)は子供向けアニメ「ペッパピッグ」のキャラクター名で、素朴、楽しいといったイメージがある。巴頓(パットン)は第二次大戦時の英雄パットン将軍からとった。このネーミングは「シンプル」「ハッピー」「戦い続ける」といった新中間層のライフスタイルを反映している。また、彼らが生活や仕事で日々背負うプレッシャーに対し、ポジティブなエネルギーを与えたいとの願いも込められている。うれしい時、落ち込んだ時、励ましがほしい時など、さまざまなシーンにより添える存在を目指す。

チャネルに関しては江小白の成功モデルを踏襲し、オンラインとオフラインを融合させた戦略を進めている。デジタルマーケティングによって認知度を高め、オフラインで販売チャネルを開拓した結果、わずか7カ月で15万店との提携に至ったという。そのうち9割は飲食店だ。全国的チェーン店からローカル店、屋台、農園レストランまで、多様な業態を網羅している。今年6月からはコンビニエンスストアにも販路を求め、3~5年で取扱店を100万店に拡大する目標だ。

単価50元(約800円)以下の市場では質の面で大きな差はない。江小白はプロモーションが勝負の決め手となった。喬治巴頓はコストパフォーマンスやデザインを売りに口コミでの拡散を狙っている。

パッケージはタバコのようにコンパクトで、タバコと同じようにケース買いができる。1ケースで200元(約3200円)と、ギフトとしても使い勝手がよい。

製造は五粮液の製法を継承し、コーリャン、もち米、米、トウモロコシ、小麦を原料とする。伝統的な白酒はアルコール度数が53度前後だが、喬治巴頓は42度にまで調整した。辛みを軽減し、後味が甘い仕上がりとなった。

喬治巴頓のパッケージデザイン

かつてサントリーがウィスキーから始まり、ビール、ワイン、茶飲料、ソフトドリンク、さらにサプリまで商品ラインを拡大していったように、喬治巴頓も複数のブランドを運営していく計画だという。とくに、若者向けのアルコール度数の低い製品を開発していきたいという。(翻訳・愛玉)

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