日本文具メーカー、Z世代の支持受け中国でシェア拡大。ゼブラの限定品はプレミアムも

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中国の文具業界はここ2年、厳しい冷え込みに見舞われている。2022年3月、最盛期には書類ファイルで世界シェア6割以上を誇った老舗文具メーカー「南栅国際文具」が倒産した。業界トップの「晨光文具(M&G Stationery)」をはじめとする上場企業も、業績と株価の下落に頭を抱えている。

その一方で、日本の文具メーカーは以前と変わらぬ勢いを見せている。新型コロナウイルスの流行で実店舗が軒並み大打撃を受けていた22年7月、コクヨは中国初の旗艦店を上海に出店した。

高くても人気の日本文具

ここ数年、中国の都市部、とくに大都市の学校の周りでは日本製の文具を取り扱う店が増えている。ショッピングモールには、MUJIやLOFTなど日本の生活雑貨チェーンも続々と出店している。

中国製の文具と比べると、日本製は価格が高い。ゲルインクボールペンを例に挙げると、中国製は一般的なもので1〜3元(約19〜57円)、高級なものでも5元(約95円)で手に入る。一方、日本製は5元未満のものはほぼなく、パイロットのベーシックなゲルインクボールペンは約11元(約210円)と中国製の倍以上となっている。

価格の高さにもかかわらず、日本製の文具にほれ込む消費者は増え続けている。中国版インスタグラムと呼ばれるSNS「小紅書(RED)」には、「日本の文具」について約4万件の投稿が寄せられている。コクヨやゼブラ、ぺんてるに関するコメントはいずれも約3万件、パイロットに対するコメントは約12万件に上る。これら多くのコメントをまとめると、「使いやすさ」「ディテールへのこだわり」「念入りな設計」などが日本製文具の代名詞となっていることが分かる。

中でも限定品は人気で、通常は発売数日で完売してしまう。当たり前だが、限定品の価格は普通よりも高い。しかし、中国のZ世代を中心とする文具の主な購買層は、欲しい限定品があれば少々高くても競って購入する。

ゼブラからは22年、「名探偵コナン」のキャラクター付きゲルインクボールペンの第3弾が限定発売されたが、よほど運が良くなければ購入できなかった。18年に限定発売された5色セットは現在、フリマサイト「閑魚(Xianyu)」で278元(約5300円)の高値で取引されている。

日本の文具メーカーは、中国シェアを着実に伸ばしている。パイロットに関しては、11年には約1%だったシェアが、20年には約2%に増加した。

パイロットの中国シェア(「長江証券」のリポートより)

高品質化で市場挽回狙う中国メーカー

日本の文具産業の歩みが始まったのは早く、20世紀初頭にはすでに大手4社のパイロット、コクヨ、三菱鉛筆、ぺんてるが設立されている。日本の製造業は1960年代以降、高度・精密・最先端な技術で革新的な製品を次々と生み出し、世界を席巻した。文具業界では、世界初の水性ボールペンやゲルインクボールペンを日本のメーカーが開発している。

日本では「手帳文化」が発展したことも手伝って、文具メーカーがさまざまな場面での利用を想定した文具を開発していった。筆記具を開発する際も、「いかに売るか」だけを考えるのではなく、ユーザー目線で設計や耐久性を研究した。

一方、中国の文具産業の歩みが始まったのは1970年代と遅く、研究開発に対する投資不足なども原因となって、全体的な技術が低いレベルにとどまっている。中国の筆記具製造協会「中国製筆協会」によると、ボールペンに関してはペン先のボールの9割が輸入品で、インクの8割は日本や韓国などから、ボールを受ける受座を製造する機器の全てはスイスや日本などからの輸入に頼っている。

しかし、中国文具メーカーはここ数年、低い技術水準から脱却し、利益の薄い市場競争から抜け出そうとしている。業界大手の晨光文具と斉心集団 (Shenzhen Comix Group)は、研究開発への投資を強化しており、21年は研究開発費が売上高に占める割合が、それぞれ1.07%と1.24%に上った(コクヨは0.6%、パイロットは1.6%)。

業界各社は販売チャネルの多角化も進めている。例えば、晨光文具は文具など生活雑貨のセレクトショップ「晨光生活館」と「九木雑物社」をチェーン展開している。また、開封するまで中身が分からない「ブラインドボックス」を発売するほか、大英博物館やウサギのキャラクター「ミッフィー」、日本のアニメ「ワンピース」「名探偵コナン」といったIP(知的財産)とのコラボグッズも打ち出している。同社の決算報告書によると、筆記具事業の粗利益率は年を追うごとに増加し、21年には40.6%を突破した。

「九木雑物社」が取り扱うIPグッズ

中国製筆協会が発表した「中国文具業界の競争に関する状況分析」によると、中国本土の1人あたりの文具消費額は年間平均でわずか約105元(約2000円)だが、世界平均は約240元(約4600円)となっている。中国文具市場には今なお開拓の余地が十分に残っており、今後は高品質化・高級化の方向で大きく発展する可能性が広がっている。

作者:WeChat公式アカウント「炫氪(ID:greatvideoxuanke)」
(翻訳・田村広子)

*23年1月3日のレート(1元=約19円)で計算しています。

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