自動運転清掃車「Autowise.ai」、ドイツで試験運用開始

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

自動運転清掃車「Autowise.ai」、ドイツで試験運用開始

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

今年3月から、独のヴィルヘルムスハーフェン(Wilhelmshaven)港で自動運転清掃車が試験運用を始めた。同港は独最大の石油中継輸送港だ。

この重さ1.2トン、幅1.5メートルの清掃車は「上海仙途智能科技有限公司(Autowise.ai)」が研究開発し、独リサイクル大手「ALBA」グループと提携して試験運用しているものだ。自動での起動、道路の端の清掃、自動回避や決められた位置への自動駐車などの機能をもつ。

独ヴィルヘルムスハーフェン港で試験運用中の自動清掃車(出典:Autowose.ai)

Autowise.aiは2017年に設立。現在は主に自動運転清掃車のソフト・ハードウェアソリューションを開発している。創業者の一人で、企業発展副総裁の史庭佳氏は以前マッキンゼー・アンド・カンパニーの独支社で働いたことがあり、のちに米ゼネラルモーターズの中国戦略投資部ディレクターを務めた。同氏によると、この度のALBAとの提携では複雑なテスト過程を経てきたという。テストの指標は車両の清掃機能、ロバスト性、安全性、操作性、機動性、効率、エネルギー消費、騒音(80デシベル以下)等だ。なおかつデータ送信時の安全性とプライバシーの取り扱いは「EU一般データ保護規則(GDPR)」に適合していなければならない。

史氏はヴィルヘルムスハーフェン港における運用の難しさについて、港湾内では通常の道路以外にも、コンテナ集積場所や大型トラックの駐車スペースなどがある中、自動運転清掃車が全てのエリアに対して清掃を行わなければならないことだと説明した。つまり構造が異なる道路を走ることを余儀なくされるのだ。同時に、港湾内は路面の障害物も多く、コンテナが置かれる位置も不規則であり、清掃車が自力でルートを探索、設定したり、後退したりする能力を持つことが必要とされるという。

Autowise.aiは先日、「上海市自動運転推進グループ(上海市経済情報化委員会、交通委員会、公安局で構成)」から上海市初となる自動運転清掃車の試験運転許可証を交付された。これにより、上海市の嘉定区と臨港地区でもテストと試験運用が可能となった。

Autowise.aiによると、この許可証を取得するために、同社は重さ5トンを超え、長さ6メートル近い清掃車を使用し、上海市の自動運転車試験エリア内で11項目、41パターンの事例を含む1230回のテストを行った。この一連のテストでは、速度制限に対する感知と反応、衝突回避の自動緊急ブレーキなどの結果をもとに、車両が都市部の複雑な環境下で運行するための機能を持っているかを検討すると同時に、車両が清掃作業を行う際のパフォーマンス(道路の端部分の清掃効率や路面の清掃カバー率など)を調査した。

同社の清掃車は昨年半ばから、上海、北京、厦門、杭州、武漢、蘇州などの一、二級都市で実用化されており、すでに公園や道路など複数の場所での有料清掃サービスを受注しているという。現在のところ、同社のビジネスモデルはユーザーに清掃サービスを提供し、サービス料を得るというものだが、今後は車両やシステムの販売などを行う可能性もあるという。

2019年上海国際モーターショーで展示されたAutowise.aiの清掃車(写真:王芸瑾/36Kr)

自動運転業界では、乗用車とトラックに投資家から熱い視線が注がれているものの、環境保全関連作業車はそこまで魅力的ではないようだ。

史氏はなぜ清掃車の開発を選択したかについて、社会的利益の面からみて、自動運転清掃車が清掃業界の「需給のアンバランス」を解決できることを挙げた。清掃業は作業環境が過酷なことから、従事者が不足しており高齢化も深刻だ。しかし、都市化が進む中でそのニーズは増える一方でもある。経済的価値の面からも、人手による清掃作業には、作業員の怠慢や人件費上昇などの難題が存在する。しかし、自動運転清掃車ならば、技術の成熟にともなってコストは徐々に下がっていく。しかも自動運転であれば夜間に作業を行うことが可能であり、車両の利用率と清掃の作業効率は人間の2~3倍にもなる。

同時に、中国の自動車専用道路の清掃には大体2100億元~3000億元(約3兆2970億~4兆7100億円)の市場があると指摘。市場規模は都市化にともなって拡大し続けるという。

現在、Autowise.aiの清掃車は数種類あり、鉛蓄電池あるいはリチウム電池を使用している。一日の航続時間は最長で16時間、半開放型の工業団地内なら時速は大体5~8キロメートル、公道なら時速10キロメートル程度だという。

低速走行と夜間運転は、ともに清掃車の商業化が乗用車や貨物車より早期に実現する可能性があることを意味している。しかし、清掃車が解決しなければならない技術的な問題は多い。

例えば、都市の道路清掃作業において、90%を超えるゴミが道路端に集中している。このため、清掃車は長距離にわたって、低くなっている、うねっているなど道路の異なる形状に合わせ、かつ3~5センチ以内の精度を保ちながら道路の端を清掃しなければならない。

Autowise.aiはポジショニングモジュールに、車の速度や形状の情報、磁力計や慣性航法装置など複数の技術を融合させている。センサーに関しては、16レイヤーのLiDAR、可視光カメラ、ミリ波レーダー、超音波レーダー、バックソナーなど多くのセンサーを融合させたソリューションを選択。このソリューリョンに関するコストは20万元(約314万円)以内に抑えたという。

現在、同社は車両の製造は行っていないが、史氏は「将来的に完成車メーカーと提携して車両の生産を行う可能性もある」と明かした。

設立以来、同社は「紅点中国(Redpoint China Ventures)」からエンジェルラウンドで数千万元(数億円)の資金を調達。2018年11月にはプレシリーズAで「啓迪控股(TUS HOLDINGS)」、「上海城建集団(Shanghai Urban Construction)」傘下の基金から1億元(約15億7000万円)を超える資金を調達済みだ。

啓迪控股は清華大学内のサイエンスパーク「清華啓迪科技園(TusPark)」の運営元の一つであり、国内でも知名度の高い民間のリサイクル会社「啓迪桑徳集団(Tus-Sound)」の筆頭株主でもある。上海城建集団傘下の「隧道股份(STEC)」は上海の90%以上の高速、高架道路など都市交通の基礎設備を運営している。
(翻訳・山口幸子)

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録