評価額が高騰する東南アジアのテック企業 ライドシェアを筆頭にユニコーンが続々誕生

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評価額が高騰する東南アジアのテック企業 ライドシェアを筆頭にユニコーンが続々誕生

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インドネシアの首都ジャカルタの街は現在、緑色に染まっている。緑色は、同市内でしのぎを削るライドシェア2社のコーポレートカラーだ。

交通渋滞が慢性化している人口3000万都市、ジャカルタ。当然、ライドシェアサービスに対する需要は大きい。2013年に米大手Uberが東南アジア市場に進出したが、現在では地元企業が育ち、Uberを駆逐してしまった。その地元企業とは、シンガポールに本社を置く「Grab」と地元インドネシアで立ち上げられた「GO-JEK」だ。

Grabは当初、Uberと同様にオンライン配車事業からスタートした。ただし、東南アジアは主要な交通手段がバイクである地域が多い。インドネシアも例に漏れず、バイクの所有台数が9000万台に上っている。

これに目をつけたのがGO-JEKだ。バイクタクシーの配車で急速に成長した。現在は両社とも、アプリを起点としたさまざまな事業を展開している。アプリ一つで、配車以外に電子決済、オンラインショッピングなども利用できるが、これは中国の大手IT企業が成功させた事業モデルに着想を得たものだ。

6億3400万人の人口を抱える東南アジア市場は、中国のIT企業にとっても魅力的だ。人口は中国のおよそ半分だが、若年層の比率が高い。また、インフラの整備がこれからという段階であるため、モバイルインターネット業界には大きな伸びしろがある。同市場に積極的な投資を行っているのがアリババグループ(阿里巴巴)で、同社は東南アジアの三大ECプラットフォームに数えられる「Lazada(シンガポール)」を買収し、GMV(流通総額)ではLazadaを上回る「Tokopedia(インドネシア)」に投資している。

「東南アジアのユニコーンは、北京か東京のいずれかに後ろ盾を持っている」。中国のある大手IT企業で戦略的投資を手がける人物はこう述べた。彼らの評価額を押し上げているのは、中国のストラテジック・バイヤーか日本のソフトバンクグループだと説明している。

東南アジアのユニコーン事情

前出のGrabとGO-JEKは、東南アジアのスタートアップ企業の評価額で最高クラスをマークしている。Grabに投資しているUberのIPO目論見書によると、Grabは資金調達がシリーズGに進んだ時点で評価額100億ドル(約1兆800億円)に達している。最新のシリーズHでは140億ドル(約1兆5000億円)に達するとみられる。また、テック系ニュースメディア「The Information」の推算では、GO-JEKの評価額は95億ドル(約1兆300億円)だ。米・中・日の超大手IT企業から潤沢な資金が流れ込み、東南アジア系スタートアップの価値はうなぎ登りとなっている。

GrabとGO-JEK以外では、東南アジア最大のオンライン旅行代理店「Traveloka(インドネシア)」が、エクスペディアや京東集団(JD.com)から資金調達を行って評価額41億ドル(約4400億円)、前出のC2C取引サイトTokopediaは評価額73億ドル(約7900億円)、Lazadaは評価額31億5000万ドル(約3400億円)となっている。

Traveloka資金調達の流れ
Tokopedia資金調達の流れ

東南アジア市場に投入される資金は2016年ごろから増加の一途をたどっている。2017年には524億ドル(約5兆6600億円)が流入した。同時に、過去2~3年でモバイルインターネットが急速に普及してきている。資金とインフラの双方が揃いつつあるうえ、米中の大手企業による成功モデルを地元企業が取り入れるケースが目立っている。最も典型的な例はライドシェアとEコマースだ。

実際、東南アジアで評価額が上位10位にランクインしている企業のうち、2社はライドシェア、4社はEコマースを主要事業として手がけている。

東南アジア企業の評価額TOP10

東南アジア系スタートアップの最上位に君臨するGrabは2012年に設立され、ソフトバンクグループをはじめ、中国のライドシェア最大手「滴滴出行(Didi Chuxing)」、トヨタ自動車、マイクロソフト、オンライン旅行代理店世界最大手「Booking Holdings」、中国政府系の金融資産管理会社「中国信達資産管理(CHINA CINDA ASSET MANAGEMENT)」などから資金を調達している。

Grab資金調達の流れ

2010年に設立されたGrabの競合GO-JEKには、米投資ファンド大手コールバーグ・クラビス・ロバーツやグーグル、テンセント(騰訊)、京東集団などが出資している。

GO-JEK資金調達の流れ

こうした東南アジア系スタートアップの評価額の高騰は、かつて多くの中国系スタートアップが海外進出した際の状況によく似ており、また孫正義氏が提唱した「タイムマシン経営」に起因するものだ。アマゾン、フェイスブックといった先進国での成功例を自国に引き入れているため、あらかじめある程度の成功が見込めることから、急速に多額の資金を集められる。

単一アプリで多様なサービスを提供する「中国モデル」の模倣

評価額で東南アジアのトップ3につけているGrab、GO-JEK、「Sea Group(EC大手Shopeeの経営母体)」は、中国におけるBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)に喩えられる。いずれも単一のアプリで複数のサービスが利用できる「中国式事業モデル」を展開する。

配車アプリとしてスタートしたGO-JEKは現在、フードデリバリー、宅配便、クリーニング代行、美容関連サービス、電子決済など18種のサービスを提供している。同じく配車アプリからスタートしたGrabが外資系の強豪Uberに競り勝った理由は、当初は現金決済を受け入れ、徐々に電子決済に移行するなど、サービス内容で巧みな現地化を図った点にある。同社傘下には、銀行口座を持たないユーザー向けに電子ウォレットの導入を進めた子会社も持つ。双方とも、電子決済機能を中心に、あらゆるサービスにアクセスできるプラットフォームを構築しているのだ。

GrabおよびGO-JEKがアプリ内に展開するサービス群

東南アジア諸国では75~80%の人々が銀行口座を持たない。そのためGrab、GO-JEKの両社は傘下に多様な金融サービス企業を抱える。GO-JEKはオンライン決済サービス、オフライン決済サービス、農村部在住者や労働者向けの少額融資サービスによって電子マネー事業を行っている。Grabは各国の銀行や金融機関と提携し、6カ国で電子決済代行事業の営業許可を取得している。

なお、Grabはインドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピン、ベトナムなど各国の配車アプリ市場でトップシェアを獲得し、中でもインドネシアでは62%のシェアを握っているという。
(翻訳・愛玉)

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