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海外ではTikTokとして知られる中国の短編動画アプリ「抖音(Douyin)」が2022年末、生活サービス事業を立ち上げたと発表し、国内の一部の都市で団体購入サービスのプロジェクトを試験的にスタートした。
抖音は中国大手フードデリバリーサービス「餓了麼(Ele.me)」と22年8月に提携関係を結び、餓了麼はミニアプリとして抖音のアプリに機能を加え、抖音ユーザーにデリバリーサービスを提供している。報道によると、抖音は自社でも配送事業を立ち上げ、フードデリバリーサービスを展開していく計画だという。
抖音は以前にも自社でフードデリバリー事業「心動外売」を立ち上げたものの断念した経緯があり、数カ月前には同事業を試験的に再始動させている。最初に四川省成都市で試験営業を実施し、その後は上海と北京にも広げた。主に扱うのは串焼き・グリル類、スイーツ類、ザリガニ類(注:ザリガニ料理は中国で人気)などだ。試験営業中の都市にある出店業者が抖音に開設するアカウントのトップページには「団体購入で店舗受け取り」「自宅へデリバリー」の2つの選択項目が設けられている。
試験営業と同時にデリバリーの委託先も募集している。複数の関係者によると、抖音は9〜10月には配送業者の募集を始めていた。その後、「順豊同城(SF Intra-City)」「達達(DADA)」「閃送(FlashEx)」「UU跑腿」など複数の市内配送ブランドが抖音の生活サービス事業と提携したことを次々と発表している。
抖音が提携する配送業者の従業員によると、これから全国各地で段階的に抖音の配送サービスをスタートしていくと通知されているという。第1段階は省都からのスタートだが、抖音は徐々に全国へサービスを拡大していく計画だろう。
フードデリバリー事業、成功するか?
抖音が過去に挑戦したフードデリバリー事業の心動外売は2021年4月に開発がスタートし、7月には内部テストを実施。北京・上海・広州・成都などの都市で300の飲食業者が参加した。順豊同城や達達などの配送業者はこの時点で提携業者として参加している。しかし正式リリースには至らず、同年10月にはサービスを終了した。
中国では22年前半にコロナ禍が再燃した。抖音にアカウントを持つ飲食業者の中には、イートインが提供できなくなったために自らデリバリーを始めるケースもでてきた。同年後半になって抖音が改めて配送業者の募集を始めた理由も納得できる。
実際、店舗へ出向いて商品を受け取る必要のある団体購入事業よりもフードデリバリー事業のほうが市場が大きい。業界大手「美団(Meituan)」の例を見ても、21年の売上高はフードデリバリー事業が963億1100万元(約1兆8400億円)、インストア(来店)・ホテル・旅行事業が325億3000万元(約6200億円)で、前者は後者の約3倍だ。
抖音はこれまでの経験からもトラフィックを集めるビジネスに長けており、自社で極力資産を抱えないアセットライト型のビジネスモデルを好む。これは抖音がEコマース事業を手がけるようになっても自社で物流システムを持たない点からも見て取れる。
フードデリバリー事業は確かにより大きな利益を見込めるかもしれないが、抱える資産はより多くなる。二大大手の餓了麼と美団はいずれも多額の資金を投じて自社の配送システムを構築している。美団の決算書によると同社は21年、配達員の人件費にフードデリバリー事業の売上高の71%を占める682億元(約1兆3000億円)をかけている。
抖音の生活サービス事業の配送業務は現在のところ外部のブランドに任せている状態で、ある従業員が過去に明かしていたように、短期的には自社で配送チームを持つ計画はないようだ。しかし外部への委託は配送コストが余計にかかることを意味し、マネジメントも不安定になる。
長期的に見れば、外部プラットフォームとの提携にはコストや持続性などさまざまな問題がつきまとう。抖音がもしフードデリバリー業界で真剣にシェアを取りに行くなら、自社のフルフィルメントシステム構築を検討することが必須だ。
(翻訳・山下にか)
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