「ソーシャルグッドのためのテクノロジー」がテンセントに変革を迫る 

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「ソーシャルグッドのためのテクノロジー」がテンセントに変革を迫る 

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テンセント(騰訊)の新たなビジョン「ソーシャルグッドのためのテクノロジー(Tech for Social Good)」が、この巨大IT企業に変革を起こそうとしている。

テクノロジーによる社会貢献を促進するというこの理念は、2018年に「騰訊研究院(Tencent Research Institute)」で誕生していたものだ。最近テンセント共同創業者兼CEOの馬化騰氏が旗を振り、ようやく意識されるようになった。 

トップダウン経営

テンセント従業員の多くは、この新たな使命・ビジョンである「ソーシャルグッドのためのテクノロジー」を理解せず、日常業務を前に、どう実現して行けばよいかも分かっていなかった。

中国の企業では、これが普通である。例えば問題が発生すると、解決策と今後の防止策が企業のトップから下層部へ指示される。同じように使命やビジョンなどの企業価値もトップダウンで構築されていく。テンセントのソーシャルグッドのためのテクノロジーもこうして誕生した。

同じ体質はテンセント以外のIT企業にもみられる。

バイドゥの検索結果への信頼性が揺らいだ「魏則西事件」では、難病の男子大学生がネットで治療法を検索したが、その検索結果が詐欺広告だったことにより、正しい治療を受けられずに他界した。同社の李彦宏CEOはのちに、「バイドゥの功罪は全て私の責任だ」と語っている。

2016年にはアリババの決済サービス「支付宝(アリペイ)」が追加したSNS機能「生活圏」が物議を醸した。この「校園(キャンパス)日記事件」では、女性のSNS投稿写真に対し、男性がお金を支払うことが公序良俗を乱すとして批判を受け、トップが謝罪するに至った。

海外では逆方向に変革がもたらされる。下層部から上層部へボトムアップ方式なのだ。グーグルの「Don’t Be Evil(邪悪になるな)」は有名だが、これは下層部の従業員たちから生まれたものだった。軍事用AI技術を提供する極秘プロジェクト「Maven」や中国で検閲付き検索サービスを立ち上げる「ドラゴンフライ」計画に対し、多くのグーグル従業員が抗議行動に加わった。

ウーバー(Uber)の上層部によるセクハラ容認問題でも、従業員が会社に変革を迫った。

中国でボトムアップの企業変革を目にすることは殆ど無い。一つには文化の違いがあるだろう。また企業の道徳倫理が間違っていたとしても、世間からのバッシングに遭い、経営陣がそれに気づいてはじめて是正されるケースがほとんどだ。

ユーザーのため、人々のため

「ソーシャルグッドのためのテクノロジー」というビジョンを、どうやって実現していくのか。

テンセントの2019年第1四半期の慈善事業への寄付金は、前年同期比22.8%増の7億元(約110億円)だった。2007年には慈善事業向け寄付金プラットフォームを立ち上げ、これまでに2億3000人から537億元(約8300億円)の寄付を集めた。

しかし、これはテクノロジーと呼べるものではない。慈善事業をオンライン化しただけだ。

テンセント副総裁の劉勝義氏は、ドバイで開催されたAIサミット「the Ai Everything summit 」で同社の「顔認証技術」が誘拐された児童を探し出したことに触れた。これこそが「ソーシャルグッドのためのテクノロジー」だ。当時3歳だった児童の写真から、画像認証技術を応用して成長した少年の顔を探し出すことに成功したのだ。

一方、一部の国や地域では、プライバシー権利など倫理・法律上の問題が存在し、技術の発展と「ソーシャルグッド」に対し統一したスタンダードを適用することは難しい。

企業には社会的責任(CSR)が求められている。商業的利益だけのために人々に対する道徳心を失ってはならない。

ユーザーを惹きつけるアテンション・エコノミーだけでは成功しないと気付かされたテンセントはゲームの悪影響から未成年者を保護する措置を取り、WeChat(微信)では流言飛語を禁止したが、これでは十分と言えない。

すべての人々に配慮し、すべての人々にとって有益な商品でなければならない。人々のために「ソーシャルグッドのためのテクノロジー」が求められているのだ。
(翻訳:貴美華)

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