リチウム高騰受け、新たな量産技術「吸着法」の確立に挑む中国企業

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リチウム高騰受け、新たな量産技術「吸着法」の確立に挑む中国企業

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リチウム採取などに用いられる機能性高分子材料を開発する「藍深新材料科技(Lanshen New Material Technology)」がこのほど、プレIPOラウンドで約2億元(約39億円)を調達した。出資したのは五鉱元鼎股権投資基金や陝西省の投資ファンドなど。調達した資金は主に高分子樹脂材料の生産や開発、会社の流動性資金の補充に充てる。

藍深新材料科技は今年、深圳の新興企業向け市場・創業板(チャイネクスト)にIPOを申請する予定だ。過去にはSBチャイナ・ベンチャー・キャピタル(SBCVC)、深圳市創新投資集団(SCGC)、温氏投資(Wens Investment)、同創偉業(Cowin Capital)などから出資を受けてきた。

2008年に設立された同社は、分離機能性高分子材料の開発・生産・応用を専門に手掛けるハイテク企業だ。主力の分離機能性高分子材料は独自に開発した吸着技術と合わせて塩湖でのリチウム採掘、太陽光発電用の多結晶シリコン精製、医薬品精製、環境保護の4分野に生かされている。現在、樹脂製品では50以上の型式を展開し、吸着剤では1万3000立方メートルの生産力を有している。

新エネルギー車市場がまさに爆発的成長期に入り、駆動用バッテリーの重要な材料であるリチウム塩は需要が急上昇。価格も高騰しており、バッテリーグレードの炭酸リチウムの価格は2年前の10倍以上に当たる1トン50万元(約970万円)前後で推移している。需要側が急成長していること、各国が近年になって新エネルギーを重要視するようになったことで、塩湖でのリチウム採掘事業が発展のチャンスを迎えているのだ。

塩湖でリチウムを採取する方法は従来、塩湖から汲み上げたかん水を天日で蒸発させて濃縮し、結晶を生成するなどの工程を踏んできた(天日濃縮法)。しかしこの方法では生産サイクルが長くなり、リチウム流出率が高くなってしまう。非工業的な生産方法では量産化も難しい。そこで、藍深新材料科技は「リチウムを吸着して回収」する直接リチウム抽出法(DLE)を独自開発し、上述のような問題点を解消。塩湖でのリチウム生産業界に革新的な技術をもたらした。

現在の吸着法は、まずかん水を天日蒸発してから吸着剤を用いる方法と、汲み出したままのかん水に吸着剤を用いる方法の2つのアプローチがある。以前から行われてきた前者に対して、後者は新たに誕生し、国内外の業界がその将来性を認めている方法だ。これまでの方法と比較して、リチウム流出率が最も高い天日蒸発の工程を完全にスキップできるうえ、塩田も必要なくなる。生産期間はこれまでの2年から24時間にまで短縮され、リチウム回収率も2倍の80%以上になる。生産サイクルが短くなり、リチウムイオン濃度が低い塩湖や、リチウムに対するマグネシウム含有比率が高い塩湖でも導入が可能で、リチウム回収率も高く、資金も少なくて済み、環境にも優しいなどの利点がある。

藍深新材料科技は現在、中国の青海省やチベット自治区、アルゼンチン、チリ、ボリビアなど数十カ所の塩湖でリチウム採取関連技術の研究と産業化技術の開発に取り組んでおり、異なるタイプの塩湖で高い適応性を示している。

2021年には鉱業国営大手「中国五鉱集団(China Minmetals)」傘下の「五鉱塩湖」と共同で、汲み出したままのかん水を用いた世界初のリチウム採取の提携プロジェクトがスタートした。中国五鉱集団は汲み出したかん水からダイレクトにリチウムを採取する技術のポテンシャルや自社グループの生産性や運営能力を鑑みて、傘下のファンドを通じて今回のプレIPOラウンドで藍深新材料科技に出資を決めた。両社は今後、国内外の塩湖開発で一層提携関係を深めていく。

藍深新材料科技は22年には海外進出も果たした。「リチウム・トライアングル」の一角であるアルゼンチンで、現地企業から数千トン規模の塩湖リチウム生産プロジェクトを一括受注した。汲み出したかん水からダイレクトにリチウムを採取するプロジェクトとしては、アルゼンチン初となる。

塩湖でのリチウム採掘以外に、藍深新材料科技の製品は太陽光発電用の多結晶シリコン精製でも長年活用されている。多結晶シリコンの生産ラインには多額の資金がかかり、安全性への要求も高度になるため、川上の結晶シリコン精製に使われる樹脂の質にも厳しい条件が求められる。長年にわたり独自に開発とプロジェクト実践を重ねてきた藍深新材料科技の樹脂製品は比較的安全で品質にも優れ、多結晶シリコン精製分野ですでに70%の市場シェアを握っている。

同社の馮志軍会長によると、太陽光発電やリチウムイオン電池など新エネルギー関連の技術革新が世界各国で進み消費需要が伸びるにつれ、同社が20年にわたって苦心して続けてきた分離機能性材料の開発事業にもアクセルがかかってきたという。

(翻訳・山下にか)

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