産業用ネットワークの普及を担う「浪潮(Inspur)」 タオバオのようなプラットフォームを目指す

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産業用ネットワークの普及を担う「浪潮(Inspur)」 タオバオのようなプラットフォームを目指す

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市場規模数十兆円と言われる産業用インターネットの分野において、汎用型産業用インターネットプラットフォームは通常、複数の業界と分野を跨いでいる。IoTレイヤー、IaaSレイヤー、PaaSレイヤー、SaaSレイヤーをカバーしているため、投資額が大きく、一般的に見て参入しにくい分野である。

汎用型プラットフォームのセンタープレイヤーと言えば、工信部(中国の通信業界を主管している政府部門)が発表した産業用インターネット双方向テストプラットフォームである阿里雲(aliyun)、東方国信(BONC)、浪潮(Inspur)、海爾(Haier)、航天雲網(CASICloud)、用友(Yonyou Network)、徐工集団(XCMG Construction Machinery)、三一集団(Sany group)の8社が参考になる。

巨大な影響力と無限の潜在的な可能性があるように見える汎用型プラットフォームだが、実際には、多くの問題に直面している。36Krでは上記8社のうちの1社、浪潮の董事長兼CEOの袁誼生氏を取材し、以下の問題について聞いた。

浪潮の産業用インターネットプラットフォームとしての基礎的能力

浪潮はOT(Operational Technology)に基づく工業製造、IT情報化サービス、クラウドコンピューティングの3つの側面において、いずれも長年の蓄積があり、産業用インターネットプラットフォームを構築するための基礎的能力を備えている。

■ OT産業プロダクト面に関しては、浪潮は世界第3位のサーバーベンダーとして自社工場でサーバーとストレージデバイス等ハードウェアを生産している。浪潮のスマートプロダクト生産ラインはかつてITアドバイザリ企業Gartner社によって、推奨事例として選ばれたことがある。
■ ITサービスに関しては、浪潮傘下の上場会社である浪潮国際(Inspur International Ltd.)が主にERP等エンタープライズソフトウェアサービスに従事しており、企業のデジタル化に関して30年以上の実績がある。
■ クラウドサービスに関しては、浪潮クラウドの基幹事業であるパブリッククラウド、ガバメントクラウド等が中国国内に6か所のコアノードを擁し、ガバメントクラウドの半分以上の市場をおさえている。

浪潮の目標と課題

浪潮は包括的なサービス機能を具えた産業用インターネットプロバイダを目指している。そのために、次の3つの点が必要である。第1に、安定した高効率の基礎コンピューティングサービスが提供できること。第2に、産業用インターネットプラットフォームの構築と運営において、スケールメリットを発揮すること。第3に、PaaSレイヤーに基づき、デバイスインターネット、データガバナンス、アルゴリズムモデル、ID解析等の共通サービスを通して、エコパートナーの複雑な産業アプリケーションに対しても迅速な開発支援を実施できることである。

最終的に、浪潮が目指すのは、産業用アプリケーションを取り扱う「産業用のタオバオ(淘宝)」である。浪潮クラウド産業インターネットプラットフォームが完成すれば、様々な業界と場面の経験に基づいて産業用アプリケーションを開発した各社が、それを反復可能で修正可能なデジタル商品として売り出し、収益を上げる。一方で、購入した会社は、その産業アプリを自社の生産管理に導入し、最適なツールとソリューションを迅速かつ低コストで享受できる。

しかし、国内産業が、脆弱なインフラとノウハウを抱えたままで、高性能な産業用アプリケーションを開発し、モデルを制御して異なる顧客のニーズに応えていくのは、険しい道となるだろう。

浪潮の重点的戦略と汎用型プラットフォームのメリット

現段階では、浪潮は産業園区のモデルを通じて産業チェーンをカバーしていくことを重点戦略としている。

山東省滕州市にある滕州機床園区の例を挙げると、浪潮は、工作機械クラウドに参加している100社以上の中小工作機械企業にloT、デバイス管理、予測メンテナンス等のサービスを提供し、アフターサービスのコスト低減と設備効率化を支援している。工作機械クラウド技術に基づき、浪潮は「工作機械のタオバオ」と言われるサイト海淘網(iHerb)を立ち上げた。そのサイト上では、工作機械メーカーが部品やその他サービスを販売し、売上を増加させている。2018年12月、滕州工作機械クラウドは工信部から重点的プロジェクトに指定された。

浪潮は汎用型プラットフォームの魅力は主に2点あると考えている。第1に、汎用型プラットフォームを構築できるメーカーは各業界におけるトップ企業であり、豊富な顧客リソースを持っているため、プラットフォームに参加する提携パートナーの顧客の獲得を支援できる。第2に、汎用型プラットフォームの製品構造とメカニズムを通じて、提携パートナーはloT接続、マイクロサービス、ビッグデータフレームワーク、AIモジュールなどを含む自身のアプリケーションのイテレーションの支援を受けることができる。

浪潮クラウドインターネットが利用できる業界

浪潮クラウドインターネットの利用が最も進んでいるのは機械加工、エネルギー電力、化学工業の3大業界である。浪潮の業界選択の基準は以下の2点だ。

■ バイオメディカル、新エネルギー等将来政策の支持が得られる成長産業であること。
■ 電力、非鉄金属、化学工業等のような業界全体が利益を得られる状態にあり、支払い能力が良好な産業であること。

中国産業インターネットは2016~17年の芽生え、2018年の盛り上がりを経て2019年には真価を問われる時期に入っている。当初の大企業、デバイスのクラウド参加に始まり、現在では産業インターネット各社が、顧客に本当の価値をもたらす最適な実用化の方向を模索している。

(翻訳・桃紅柳緑)

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